企業から独立し、個人事業主やフリーランスとして軽貨物運送事業を営む際には「黒ナンバー」と呼ばれるナンバープレートを取得しなければいけません。
今回は、個人事業主やフリーランスとして軽貨物運送事業で独立を考えている方に向けて、軽貨物運送業への登録方法について詳しく解説していきます。
軽貨物運送業の登録と「黒ナンバー」
そもそも「黒ナンバー」とは、黒地に黄色の文字で書かれているナンバープレートのことであり、軽貨物運送事業を営む際にはこの黒ナンバーの登録をしなければいけません。
「軽貨物運送事業」は法律上で、以下のように定められています。
他人の需要に応じて自動車(3輪以上の軽自動車および2輪の自動車に限る)を使用して有償で貨物を運送する事業
黒ナンバーの登録をせずに軽貨物運送事業を営んでしまうと違法となります。
しかし、無償で運送する場合や自身の貨物を運送する際には違法にはなりません。
一般貨物自動車運送事業と黒ナンバーとの違い
一般的に運送業といえば、「一般貨物自動車運送」と呼ばれている、中型や大型のトラックを使用して荷物を運送することをイメージされる方も多くいらっしゃいます。しかし、一般貨物自動車運送で使われるナンバープレートは「緑ナンバー」であり、軽貨物運送で使用される「黒ナンバー」とは異なります。
緑ナンバーの一般貨物自動車運送と黒ナンバーの軽貨物運送の主な違いは「車両の排気量」と「対応できる事業」が挙げられます。
それでは、それぞれ詳しく解説していきます。
車両の排気量
排気量はその名の通り車を動かすのに必要な排気ガスの量であり、基本的に車のサイズが大きくなればなるほど車が発する排気ガスの量は増えます。
「黒ナンバー」は軽貨物運送事業をおこなう軽自動車に取り付けますが、「緑ナンバー」は普通自動車以上の廃棄量の車両に取り付けます。
街中で見かける大型トラックのほとんどは主に緑ナンバーをつけています。
対応できる事業
「黒ナンバー」は宅配、引越し、ルート配送・定期便のような軽貨物運送事業で使用されているナンバープレートですが、緑ナンバーでは「旅客自動車運送事業」と「貨物自動車運送」で使用されています。
「旅客自動車運送事業」とは、自動車を利用して人を運送することで報酬を得る事業であり、バスやタクシーなども緑ナンバーを使用しています。
「貨物自動車運送事業」とは、自動車を利用して貨物を運ぶことで報酬を得る事業です。一見、軽貨物と同じ事業内容ですが、車両から出る排気量の関係で緑ナンバーを使用しています。
貨物自動車運送事業で緑ナンバーを使用している主な車両は、トラック、宅配便、霊柩車、引越しなどが挙げられます。
黒ナンバー以外のナンバープレートとの違い
黒ナンバーや緑ナンバー以外にもいくつかのナンバープレートがあるので、それぞれ簡単に紹介していきます。
白ナンバー
ナンバープレートの中で一般的に使われている白字に緑色の文字で書かれているナンバーです。
主に「自家用普通自動車」として、プライベートで使用する車で使われているナンバーですが、なかには白ナンバーを自家用と事業用のどちらにも使用しているケースがあります。
黄色ナンバー
黄色地に黒色の文字で書かれているナンバープレートです。
黄色ナンバーは軽自動車を指すプレートであり、自家用車、軽商用車として使われています。
しかし、オリンピックを記念して軽自動車でも使用できる白ナンバーも存在しています。
青ナンバー
青地に白文字で書かれているナンバープレートです。
青ナンバーはあまり知らないという方もいると思いますが、実は青ナンバーは外交官が使用する外務省用車を指すナンバープレートなのです。
ここまでで解説したように、「白ナンバー」と「黄色ナンバー」は自家用車でも使用することができ、「黒ナンバー」も自家用車と事業用のどちらでも使用できます。
黒ナンバーを自家用車としてプライベートでも使用することで、車両が1つで済む点や税金が安くなるというメリットがあります。
しかし、その半面で任意保険が高くなるなどのデメリットもあるので、黒ナンバー車をプライベートでも使用する際は事前によく確認しておく必要があります。
軽貨物に登録できる車両の条件
軽貨物車として登録できる車両には、いくつかの条件が定められています。
- 車重:軽自動車規格に適合する車重(通常、660cc以下のエンジンを搭載)
- 積載量:車両により異なるが、一般的に350kg~500kg程度
- 座席数:基本的には2名まで(荷物スペースが必要なため)
- 車体の形状:通常は箱型で、荷物を安全に運べる構造であること
- 車検証の用途欄:「貨物」になっていること
これらの条件を満たしている車両であれば、基本的には軽貨物運送事業で使用できます。特に、積載量や座席数は業務に直結する要素なので、車両選びの際にはしっかりと確認しましょう。最後に、用途に応じて追加できるオプション(例:冷凍設備、棚など)もあるので、それらも考慮するとよいでしょう。
ただし、2022年10月より軽自動車の貨物登録に関して規制緩和が施行されました。これにより、軽自動車を自家用から事業用に変更する必要もなくなりました。
詳細は以下の記事をご確認ください。
軽貨物に登録できる車種は?
軽貨物に登録できる代表的な車種は以下の通りです。
- スズキ キャリイ
- ダイハツ ハイゼット
- ホンダ アクティ
- 三菱 ミニキャブ
これらの車種は、燃費が良く、運転がしやすいため、初めて軽貨物事業を始める方にもおすすめです
軽貨物運送事業者として黒ナンバー登録する方法
次に、軽貨物運送事業を営むために黒ナンバーを登録する方法について解説していきます。
軽自動車の貨物登録に必要な書類を準備
黒ナンバーの登録をするために必要な書類は主に次の5つです。
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書(2部)
- 運賃料金設定届出書(2部)
- 運賃料金表(2部)
- 事業用自動車等連絡書
- 車両証コピー
書類によっては2部用意しなければいけないものがあるので事前に確認しましょう。
また、運賃料金表は特に上限や下限は無く、積込料や取卸料、待機時間料などについても自由に設定できます。
貨物軽自動車運送事業経営届出書とは?
「貨物軽自動車運送事業経営届出書」は、軽貨物運送事業を始める際に必要書類の1つです。
この書類には、事業者が軽貨物運送事業を行う際の基本的な情報、例えば事業者の名前、住所、使用する車両の情報などを詳細に記載します。そして、これを運輸支局や関連する行政機関に提出する必要があります。
この書類の提出は、事業を正式に開始する前に行う必要があり、承認を受けることで初めて法的に運送事業を開始できます。未提出や不備があると、罰則が科せられる可能性もあるので、注意が必要です。
運輸支局へ書類を提出する
上記の5つの書類を準備、記載したのちに運輸支局へ書類を提出します。
自分が事業を始めたい自治体の運輸支局に行き、書類の確認や「事業用自動車等連絡書」に捺印してもらいましょう。
軽自動車検査協会へ書類を提出する
次に、軽自動車検査協会へ書類の提出が必要となります。
提出書類は次の5つです。
- 車検証の原本
- 申請依頼書
- ナンバープレート2枚
- 運輸支局が捺印した事業用自動車等連絡書
- 住民票または法人の謄本(車検証の名義が自身になっていない時)
黒ナンバーに登録する際には、書類だけを準備すればいいというわけではなく、使用できる状態の車両を準備しなければいけないので、事前にしっかりと準備しておきましょう。
軽自動車の貨物登録にかかる費用
事業を始めるにあたって気になるのが費用面です。
特に軽貨物運送事業を始めるにあたって車両や駐車場の準備、営業所の設置などさまざまな費用がかかります。
そして黒ナンバーを取得するにも費用がかかります。
主な費用と内訳は次の通りです。
- 約20,000円~30,000円
<内訳>
- ナンバープレート代:約15,000円
- 車庫証明届:約500円
- 住民票や印鑑証明書の発行:約500円
これらは自分で黒ナンバーの取得をした際にかかる費用ですが、書類の準備や慣れない書類の記入はかなりの労力やコストがかかります。
そのため、代行業者や行政書士に依頼をすることで余計な手間を省けます。
代行業者や行政書士に依頼をした際の費用は、それぞれの業者によって異なりますが、
おおよそ約30,000円〜50,000円ほどを見積もっておくと良いでしょう。
軽貨物運送業に登録するための要件
軽貨物運送業として事業登録をするにはいくつかの要件があり、要件をクリアしていなければ軽貨物運送事業を始めることができませんので非常に重要です。
主な要件は次の6つとなっています。
- 1台以上の車両を保有している
- 営業所や休憩所、睡眠施設がある
- 営業所から2km以内の場所に車庫がある
- 適切な運送約款がある
- 損害賠償能力がある
- 運行管理の体制が整っている
これらの要件は細かく定められているため、事前にしっかりと把握しておきましょう。
軽自動車を貨物登録するメリット・デメリット
独立して軽貨物運送の事業を始めるには黒ナンバーの取得が必要不可欠ですが、黒ナンバーの登録をすることでいくつかのメリットを得ることができ、それに対してのデメリットも生じます。
事業を始める前にメリットやデメリットをしっかりと把握できれば、今後の方針や事業展開にも活かせます。
それではメリットとデメリットをそれぞれ解説していきます。
軽自動車を貨物登録するメリット
黒ナンバーの登録をする主なメリットは次の3つです。
独立や開業のハードルが低い
企業から独立して事業を営む際には、かなりの月日を要するケースが多いですが、軽貨物運送においては短い時間で開業が可能です。
先述したように「運輸支局」や「軽自動車検査協会」に必要な書類を提出しますが、必要書類が用意できれば、それぞれ30分から1時間ほどで手続きは終了です。
極論、軽自動車1台あれば開業できるため、独立のハードルが低いといえるでしょう。
開業に必要な初期費用が少ない
軽貨物運送事業では、開業に際してかかる費用は黒ナンバーの取得にかかる約20,000円〜30,000円と比較的少ないといえます。
営業所は賃貸物件でも可となっており、車両を保有していない人でも中古であれば約500,000円前後、新車であれば約2,500,000円ほどあれば黒ナンバーを付ける車両が購入できます。
自家用車よりも税金が安くなる
これまで自家用車として使っていた軽自動車を黒ナンバーにしたり、これまで車両を持っていなかった方が事業用と自家用を兼ねて黒ナンバーの車両を購入することで、通常の自家用車を所有するのに比べ、「重量税」と「自動車税」が安くなります。
軽自動車を貨物登録するデメリット
黒ナンバーの登録をする際のデメリットは主に次の2つが挙げられます。
任意保険料が割高になる
黒ナンバーの登録をすることで税金は安くなりますが、軽貨物ドライバーとして働くと、運転の頻度が上がり事故の確率が高まることから、保険料が割高になってしまいます。
独立後に、委託ドライバーとして運送会社から仕事の依頼を受ける際は、任意保険の加入が条件とされるケースが多いため、割高になろうと任意保険には加入しておくべきでしょう。
仲介手数料が発生する
黒ナンバーを取得して独立をしたら、荷主や企業から直請けで依頼をもらうまでは、クロネコヤマトや佐川急便などの運送会社と契約をして報酬をもらうケースが多いです。
仲介を通して案件をこなすと、仲介の手数料が発生し、得られる報酬が減ってしまいます。
しかし、開業したての際には報酬額も重要ですが、少しでも多くの案件をこなし実績を増やしていくほうが優先といえるでしょう。
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ここまで解説したように、軽貨物運送業を開業する際には黒ナンバーが必要不可欠です。
しかし、独立してから最も大切なのは安定して仕事を獲得するという点です。
独立後に自ら営業活動をおこなって仕事を獲得しようにも、よっぽど業界に顔が知られている方や営業活動経験者でなければなかなかうまくいきません。
軽貨物運送を始めたての方は、運送会社から委託されて配送をおこなう委託ドライバーになるのがおすすめです。
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