軽貨物事業で開業する際には車両購入や保険料など、さまざまな項目で費用がかかります。
しかし、開業後の収入が安定するか定かではないため、極力初期費用を抑えたいという方がほとんどでしょう。
そんな時に活用したいのが助成金や補助金です。
今回は、軽貨物事業で開業を考えている方に向けて、軽貨物事業で利用できる補助金や助成金を踏まえ、開業費を抑える方法について解説していきます。
軽貨物ドライバーが申請できる助成金や補助金はある?
個人事業主として事業を営む際には、国からの支援である「助成金」や「補助金」を利用できます。
助成金や補助金を利用することで、開業時や事業を続ける際の大きな助けとなるでしょう。
まずは代表的な3つの助成金や補助金を紹介します。
名称 | 対象 | 上限 | 条件 |
---|---|---|---|
IT導入補助金 | 中小企業 | 30~450万円 | 業務効率化や顧客獲得のためのITツール導入 |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者 | 50万円 | 従業員20名以下(運送業の場合)顧客獲得が目的 |
先進安全自動車(ASV)導入補助金 | 運送業の企業 | トラック15万円 バス30万円 貸切バス20万円 | 事業用の車両 |
(出典:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会、全国商工会連合会、国土交通省)
IT導入補助金
企業が利用できる代表的な補助金として「IT導入補助金」が挙げられます。近年、バックオフィスの業務効率化や顧客獲得のために、多くの企業でITシステムやITツールが導入されています。
しかし、ITシステムやツールの導入には多額の費用がかかってしまうため、未だ導入できていない企業も多くあります。
そのため、2022年となった現在では、上限30万円〜450万円までとして国からの補助金でITシステムやツールの導入ができるようになっています。
小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は、小規模というように対象企業の規模が制限されており、主に従業員の人数で判断されます。
飲食業や小売業、建設業などさまざまな業種がありますが、それぞれの業種で上限の人数が定められています。
そのなかでも運送業は”20名以下”と定められており、補助金の使用目的も顧客獲得のための「販促用のチラシ」「広告出稿」「自社Webサイト制作」などに制限されています。
小規模事業者持続化補助金の注意点として、利用目的が定められているため、申請するには利用した際の領収書や納品書などの証拠が必要となります。
先進安全自動車(ASV)導入補助金
先進安全自動車(ASV)導入補助金とは、ドライバーの安全運転を支援するための補助金であり「衝突被害軽減ブレーキ」や「ふらつき注意喚起装置」など、ドライバーが運転の際に安全を確保することを目的として利用できる補助金です。
設置する機器や車両の種類によって、補助金の上限が異なります。
軽貨物ドライバーになるための開業資金はいくら?
軽貨物ドライバーとして開業するためには、開業に伴う費用が発生します。主な項目は以下の通りです。
- 車両費
- 黒ナンバー取得費
- 保険料
それぞれ解説していきます。
車両費
まず軽貨物ドライバーとして必要不可欠なのが車両であり、車両費は開業費のうちの大半を占めるといっても過言ではありません。
軽貨物では軽バンや軽トラなどを使用するため、新たに車両を準備する必要があります。
車両を準備するには「新車購入」「中古車購入」「リース」の3パターンがありますが、それぞれ次のような選び方がおすすめです。
- 新車購入:初めから長期的に軽貨物ドライバーを考えている
- 中古車購入:新車を買うほどの資金的余裕はない
- リース:とりあえず開業して様子をみながら進めたい
これらのように、開業時の状況に合った車両の準備方法を選びましょう。
また、軽貨物車をレンタルする手段もあります。請負元の運送会社からレンタルするケースが多いですが、取り扱いのある会社はまだまだ少ないのが現状です。
黒ナンバー取得費
軽貨物ドライバーとして開業する際には通常の白ナンバーではなく、「黒ナンバー」の取得が必要です。
黒ナンバーとは黒地に黄色の文字でかかれているナンバープレートのことであり、定期便やルート再送、宅配など軽貨物ドライバーとして働くには黒ナンバーの取得が必須となっています。
黒ナンバーは陸運支局や軽自動車検査協会に必要書類を提出することで取得できますが、その際に印鑑証明やナンバープレート交付のために2,000円ほど必要となります。
保険料
軽貨物ドライバーとして働くと、運転頻度が増えるので必然的に事故を起こす可能性が高くなってしまいます。
そのため、保険への加入が必要不可欠であり、自動車を使用する際に加入が必須な「自賠責保険」に加え、加入が任意とされている「任意保険」への加入もしておくべきだといえます。
また、軽貨物事業の場合、車両自体にかける保険の「車両保険」や荷物に対する保険である「貨物保険(運送業者貨物賠償責任保険)」などの加入も考えておくといいでしょう。
開業の際には車両費や黒ナンバー取得費のように「必ずかかる費用」と車内のクッションや携帯電話など「私物で補える費用」があります。
開業費用を抑えたい方は、かけなければいけない費用とかけなくても済む費用を分類し、不要な費用は極力かけないように工夫するとよいでしょう。
次の章では、軽貨物事業で開業する際の開業費を抑える方法について詳しく解説していきます。
軽貨物業を取り組む上で開業費を抑える方法
開業後に安定した収益が見込めるというケースは少なく、開業時に費用をかけ過ぎてしまうと、後々金銭面で苦しくなってしまいます。
そのため、多くの方が開業費を抑えたいというのが本音のところ。
ここからは実際に開業費を抑えるにはどのような方法があるのか紹介していきます。
軽貨物車両は中古やリースで
先述したように、開業時に車両を準備するには「新車購入」「中古車購入」「リース」の3パターンがありますが、新車購入は多額の初期費用が必要となるため、開業費を抑えるには「中古車購入」と「リース」がおすすめです。
中古車購入のメリットとして、新車購入に比べて初期費用が抑えられるだけでなく、保険料が新車に比べて割安になり、維持費も安く抑えられます。
その反面、中古であるがゆえに故障するリスクが高く、修理やメンテナンスにかかる費用が高くなってしまうので注意が必要です。
リースのメリットは、カーリースを利用することで初期費用をかけずに車両が準備できるので、開業時にかかる費用を大きく削減できます。
また、通常、黒ナンバーを取得する際には、申請業務を全て自身でおこなわなければいけませんが、リース会社が代わりに黒ナンバーの取得まで対応してくれるケースもあるので手間が省けます。
ただし、車両を保有していなくても事故を起こした際の修理費やメンテナンス費は自分で負担しなければいけません。さらに、リースは一定期間中に車両を借りる契約であるため、契約期間中に解約をする際には違約金が発生します。
このように、中古車両の購入やリースにもメリットに対してのデメリットがあります。
自分で車両を保有する場合は、購入費だけでなく「車検代」や「駐車場代」「自動車重量税」など、車両を維持するための費用もかかってしまいます。
そのため、開業費を一番抑えやすいのは「リース」だと言えます。しかし、長期的に軽貨物事業を考えており、自分の車両で働きたいという方は中古車両で開業費を抑えつつ事業を始めるのもありでしょう。
軽貨物車両をレンタルしてくれる委託元を選ぶ
委託元の運送会社から軽貨物車をレンタルする方法もあります。
リースとは違って、細かな審査などはありません。
レンタル会社からレンタルする方法もありますが、軽貨物車を取り扱っているレンタル会社がまだまだ少ないため、一般的にレンタルといえば委託元の運送会社を利用します。
リースと同様、車両の購入費用が不要なので初期費用は抑えられますが、長期間にわたってレンタルをすると、合計コストは購入する場合より高くなるので慎重に検討しましょう。
車両の部品の質を最低限にする
車両を準備した後はカーナビやドライブレコーダーに加え、長時間運転の負担を減らすためにハンドルカバーやクッションを車内に常備する方も多いでしょう。
しかし、細かな部品や備品にこだわりすぎて質の高いものや備品を大量に購入していると、「気付けば多くの費用を費やしてしまった…」というケースに陥ることも。
そのため、開業時には最低限業務がおこなえる程度のものだけを揃えておき、業務に慣れていくうちに必要なものや好みのものを購入していくことで、開業費用を抑えられます。
軽貨物業の開業に伴う助成金や補助金の申請は計画的に!
軽貨物事業を開業する際や事業を続けていくうえで、さまざまな補助金や助成金の制度が設けられていますが、申請した全ての人が支援を受けられるわけではありません。
補助金や助成金による支援を受けるには、対象となる条件を満たしている、定められた期間内に申請を完了しているなどの条件が整っている必要があります。
「期間の最終日に初めて申請をし、訂正箇所が生じてしまい申請が完了しなかった」というケースも多くあります。
そのため、申請期間の締め日より前に申請をしておき、修正が必要になったとしても期間内に完了できるように余裕を持って進めましょう。