軽貨物車両自由化により、令和3年10月から軽乗用車での配達業務が可能になりました。
制度が変わったことに不安を感じている現役ドライバーや詳細について知りたい人、これを機に軽貨物ドライバーとして語らいてみたいと考えている未経験者など、その立場によって制度についての印象はさまざまでしょう。
この記事では、軽貨物車両自由化の概要や法改正の背景、解禁による影響などについて解説します。
軽乗用車の事業登録から仕事をするまでの流れについても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
軽貨物車両自由化とは?
軽貨物車両自由化とは、これまで車検証上の用途が貨物である車両にかぎり認められていた貨物軽自動車運送事業を、自家用の軽自動車でも行えるように制度が変わったことを指します。
ここでは、軽貨物車両自由化の概要や解禁日、使用できる車両の条件について解説します。
軽貨物車両自由化の概要
先述のとおり、軽貨物車両自由化とは、貨物軽自動車運送事業においてこれまで制限されていた軽乗用車の使用が認められるようになったことです。
これにより、わざわざ軽自動車を取得する必要がなくなり、すでに保有している車両を配達業務に使用できるようになりました。
また、これまでは使用する車両の乗車定員が貨物運送に適したものでなければならず、荷室を確保するために、後部座席を取り払うなどの構造変更が必要でしたが、解禁後は構造変更が不要になり、参入のハードルが下がったと言えます。
なお、軽乗用車で配達をする際は運輸局で事業用登録を行い、黒ナンバーを取得する必要があります。
軽乗用車での配達が解禁したのはいつ?
軽乗用車での配達が解禁されたのは令和3年10月27日です。
きっかけは、令和3年6月に政府が閣議決定した規制改革実施計画の中で、貨物軽自動車運送に軽乗用車が使用できるよう検討する旨が示されたことです。
その後パブリックコメントが実施され、国土交通省により貨物軽自動車運送事業での軽乗用車使用を解禁すると発表されました。
使用できる車両の条件
軽乗用車での配達が可能になったとはいっても、なんでもいいというわけではありません。
法改正後に定められた貨物軽自動車運送事業に使用できる車両の条件は以下のとおりです。
- 排気量が660ccの軽自動車であること
- 5ナンバーであること
- ナンバープレートが黄色であること
軽乗用車を軽貨物車両として使用するためには、以上の条件を満たす必要があります。
軽自動車の排気量は660ccであるため、使用できる車両も660ccと決まっています。たとえばコンパクトカーなどは排気量が1,000cc以上であるため、対象にはなりません。
なお、使用できる車両のナンバープレートはもともと黄色ですが、事業用として登録すると黒ナンバーに変わります。
軽自動車でも、オリンピック用のナンバープレートの場合は黄色ではなく白色ですが、その場合も事業用として登録することで黒ナンバーに変わります。
軽貨物車両自由化の法改正が行われた背景
ここからは、軽貨物車両自由化の法改正にいたった背景について解説していきます。
物流業界における人手不足の問題
軽貨物車両自由化の法改正が行われるにいたった理由の1つは、物流業界の慢性的な人手不足にあります。
厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、トラック運転者の有効求人倍率は平成30年度以降、全職業平均の約2倍で推移しています。
それに対して宅急便の取り扱い個数は年々増加傾向にあり、人手不足が解消するどころか深刻化しているのが現状です。
いくら仕事があっても、人材がいなければ業務を回していけません。
この先も人手不足が解消しなければ、それを理由に倒産する会社が出てくる可能性があり、ますます人手不足が深刻化していきます。
そこで打ち出されたのが軽貨物車両自由化です。
軽乗用車でも荷物の配達を可能とすることで新規参入のハードルを下げ、人手不足解消のきっかけとなることをねらいとしています。
なお、人手不足の原因には、ドライバーの高齢化や労働時間の長さ、労働時間に見合わない低い賃金などが挙げられます。
本当の意味で人手不足を解消するためには、運送業界全体の改革が必要だと言えるでしょう。
EC需要の拡大による配達物の増加
軽貨物車両自由化の背景には、配達物の増加もあります。
年々増加する宅急便の取り扱い個数に対してドライバーの数が足りていないため、どうしてもドライバー1人ひとりにかかる負担が大きくなってしまいます。
基本的に、その日配達予定の荷物はその日中に配達しなければならず、さらに再配達にも対応しなければならないため、時期によっては明らかにキャパオーバーである物量がドライバーにのしかかることも珍しくありません。
その結果体調を崩して辞めてしまうドライバーがいることも、人手不足を助長する原因の1つです。
しかし、軽貨物車両自由化によってドライバーが増えれば、現軽貨物ドライバーにかかっている過度な負担が軽減される可能性があります。
フードデリバリー業界の発展
軽貨物車両自由化は、フードデリバリー業界からの要望でもあります。
新型コロナウイルス流行以降、Uber Eatsや出前館などといったフードデリバリーサービスの需要も伸びており、副業が解禁されたことで副業として取り組む人も多くいます。
しかし、軽貨物車両を用意できない場合は自転車や原付自転車を使用するしかなく、悪天候の場合はどうしても配達員が不足しがちでした。
軽貨物車両自由化は、そういった問題の解決に役立ちます。
また、軽乗用車は軽貨物車両と比べてあまり多くの荷物を積めないという問題がありますが、フードデリバリーであれば宅配ほど荷物を一度にたくさん積む必要がないため支障はないでしょう。
軽貨物車両の自由化(解禁)による影響
軽貨物車両の自由化が、業界全体や現軽貨物ドライバーに与える影響は少なからずあります。
ここでは、軽自動車での配達が解禁されたことによる影響について解説します。
ドライバーの質が下がる
軽貨物業界への参入が気軽にできるようになった反面、以下のようなドライバーが増える可能性があります。
- 運転や駐車に関するマナーが悪い
- 荷物を丁寧に扱わない
- 置配指定になっていないにもかかわらず勝手に玄関前に荷物を置く
- 再配達に行かない
このような質の悪いドライバーが増えることは、業界全体に悪い影響を及ぼします。
ドライバー全体の質が下がり、業界全体に対してマイナスのイメージがついてしまうことが懸念されています。
荷物単価の低下につながる可能性がある
新規で参入者が増えることで需要と供給のバランスが崩れ、荷物単価が低下する可能性があります。
現時点では荷物単価が下がる流れはないものの、今後価格崩壊が起こり、荷物単価が低下すれば、ダメージを受けるのは現軽貨物ドライバーです。
また、報酬の安い案件に対して抵抗がない副業ドライバーの存在も、荷物単価の引き下げに拍車をかける可能性があります。
現軽貨物ドライバーの仕事がなくなることはない
軽乗用車で貨物軽自動車運送事業を営む人が増加することで、現軽貨物ドライバーの仕事がなくなるのでは?と不安になる人もいるのではないでしょうか。
しかし、すぐに目に見えて仕事が減ってしまうようなことはないと考えられます。
なぜなら、アマゾンフレックスでは軽乗用車での登録が認められておらず、ほかの大手軽貨物運送会社でも、軽乗用車の最大積載量が少ないことから従来の軽貨物車両を優先する旨のコメントを発表しているためです。
また、近年は軽貨物車両でも荷物を一度に積みきれないことがあるほど物量が増加しているため、軽乗用車が軽貨物車両に代わるような仕事をすることは困難であるという考え方もあります。
そのため、今後さらなる法改正がないかぎり、軽乗用車の活躍の場はフードデリバリーがメインになるのではないかと予想されています。
軽乗用車で配達の仕事をするまでの流れ
軽乗用車で配達の仕事をするためには、軽乗用車の事業用登録や任意保険の加入、開業届の提出が必要です。
今回は軽乗用車をすでに用意できているものとして解説しますが、軽乗用車がない場合は事業用登録の前に確保しておく必要があります。
手順に沿ってそれぞれ解説します。
軽乗用車の事業用登録
まず、配達に使用する軽乗用車を事業用として登録する必要があります。
以下の書類を準備し、管轄の運輸支局と軽自動車検査協会にて手続きを行いましょう。
- 運転免許証
- 車検証の写し
- 登録したい軽乗用車
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 運賃料金設定届出書
- 事業用自動車等連絡書
以上が軽乗用車を事業用として登録し、黒ナンバーに変更するための書類です。
届出書関係の様式は、運輸支局の窓口や国土交通省のホームページから取得できます。
貨物軽自動車運送事業経営届出書には事業代表者の住所、氏名や営業所の位置、登録したい軽乗用車の数や種類などについて記入します。
そのほか、駐車場や運送約款などについての記入も必要です。
運賃料金設定届出書には実際に事業を開始したあとの運賃について記載し、料金表を添付します。
事業用自動車等連絡書は、運輸支局での届出のあと発行される書類です。軽自動車検査協会での手続きに必要な書類で、再発行ができません。
事業用自動車等連絡書と車検証の写し、もともと使用していた黄色ナンバーを軽自動車検査協会に提出すると、黒ナンバーが発行されます。
任意保険の加入、見直し
事業用登録が完了したら、任意保険への加入や見直しをしましょう。
すでに加入している場合でも、内容によってはそのままのプランでは補償されない場合があるため注意が必要です。
また、保険会社によっては事業用の車両に対応していないケースがあります。
保険会社に問い合わせ、現在加入している保険会社で対応できないのであれば、事業用の車両でも加入できる保険を探す必要があります。
そのほか、荷物を破損・紛失した際に補償してくれる貨物保険にも加入しておいたほうがよいでしょう。
開業届の提出
事業用登録と保険の加入を済ませたら、管轄の税務署に開業届を提出します。
開業届は、開業から1カ月以内の提出が必要です。
提出しなかったとしても罰則はありませんが、提出することで青色申告が可能になるため提出しておくことをおすすめします。
青色申告を利用して確定申告を行えば、最大で65万円の控除が受けられます。
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今回は軽貨物車両自由化について解説しました。
軽貨物車両自由化により、軽貨物業界への参入ハードルは下がったと言えます。しかし、晴れて軽貨物ドライバーになったとしても、仕事がなければ報酬を得られません。
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