軽貨物ドライバーを行う上で、軽貨物車両のコストがどのくらいかかっているのかを把握することは重要です。
特に、軽貨物車両を取り扱っている運送会社のコストは軽貨物車両の維持費がほとんどといえます。
軽貨物ドライバーは軽貨物車両の維持費を理解するのが、まず最初の仕事です。
では軽貨物車両の維持費は一体どのようになっているのでしょうか。また、維持費自体を抑えることは可能なのでしょうか。
本記事では貨物車両の維持費の種類、金額、そしてコストを抑える方法を解説していきます。
軽貨物車両にかかる維持費【車体について】
まず、軽貨物車両にかかる維持費について解説していきます。
維持費は大きく分けて、3つあります。
- ガソリン代
- メンテナンス費用
- 駐車場代
ガソリン代
まずは、ガソリン代です。
特に、軽貨物車両は「細かい配送業務」が多いので、ガソリン代がかかります。
ガソリン代については地域、また世界情勢に関わることなので予測ができない部分はあります。
ですが、ガソリン代を試算することは可能です。
ガソリン代=ガソリンの値段×走行距離÷燃費
例えば、ガソリンの値段が141円/リットルで1ヶ月3,000km走る軽貨物自動車のガソリン代を計算したい場合、下記のようになります。
141円/リットル(ガソリンの値段)×3,000km(走行距離)÷20km/リットル(走行距離)=21,150円/月
つまり、上記の計算だと1ヶ月における1台あたりの軽貨物車両のガソリン代は、21,150円となります。
しかし、上記のガソリン代は「ガソリン代の一部」に過ぎません。
冬や夏のシーズンになると、ドライバーは暖房、冷房を車内で使います。
使用頻度により変わるので難しいですが、上記の21,150円/月の場合、25,000円から30,000円に上昇するでしょう。
ガソリン代は燃費や走行距離、ガソリン代だけでなく、暖房や冷房の使用する頻度も把握する必要があります。
整備費やメンテナンス費用
整備費やメンテナンス費用も軽貨物車両の維持費の大きな部分を占めます。
- タイヤ交換
- オイル交換
- エアコンフィルターやバッテリー交換
上記3つについては整備、メンテナンスをおろそかにすると「燃費の悪い軽貨物車両」になってしまいます。
タイヤ交換の維持費
タイヤに関しては、すり減ることにより、馬力も下ってその分燃費が上昇してしまいます。
軽貨物車両のタイヤ交換の目安として、走行距離が30,000kmから35,000kmになった時にタイヤ交換の目安となっています。
したがって、1年に1回がタイヤ交換の目安ということです。
タイヤ交換の値段については、店舗にもよりますが、4本で15,000円から35,000円となっています。
また、タイヤにも種類があります。
- ノーマルタイヤ(冬以外のシーズンのタイヤ)
- スタッドレスタイヤ(冬のシーズンのタイヤ)
スタッドレスタイヤについては、冬の季節、特に雪が降る地域では必須のタイヤです。
価格については、スタッドレスタイヤの方が少し高い傾向があります。
したがって、冬の季節が厳しい地域の運送会社はスタッドレスタイヤについて値段も把握する必要があります。
オイル交換の維持費
オイル交換については、店舗によりますが1回の交換につき、4,000円から7,000円の相場となっています。
つまり、年に36,000km走る軽貨物車両の場合、4-5回以上のオイル交換が必要になります。
オイル交換のコストとしては、年間20,000円ほどかかるということです。
エアコンフィルター・バッテリーの維持費
エアコンフィルターやバッテリー交換についても、不定期な維持費となります。
エアコンフィルターとバッテリ交換のコストとして、エアコンフィルターは3,000円から4,000円、やバッテリー交換は20,000円から30,000円です 。
エアコンフィルターは年に1回交換 、バッテリー交換は2年から3年に交換の目安だといわれています。
したがって、年間を通してのコストは高く見積もっても34,000円ということです。
整備費・メンテナンスに関する維持費の総額
その他にも、ブレーキオイルの交換などのメンテナンスであったり、細かい維持費は存在します。
上記のタイヤ交換、オイル交換、エアコンフィルターやバッテリー交換を計算したら下記の通りです。
タイヤ交換 | 35,000円/年 |
---|---|
オイル交換 | 20,000/年 |
エアコンフィルター、バッテリー交換 | 34,000円/年 |
合計 | 89,000円/年 |
これにプラスアルファとして、ブレーキオイルの交換など他のメンテナンス費用も加算されます。
したがって、軽貨物車両の維持費として、およそ100,000円/年はかかる見込みとなっています。
③:駐車場代
軽貨物車両の維持費として忘れがちなのが「軽貨物車両の駐車場代」です。
また、地方と都心で借りることができる駐車場の料金には、大きな金額の差があります。
- 地方:5,000円/月〜
- 都心:25,000円から35,000円/月〜
地方だと安いですが、都心だとその5倍から6倍以上の値段と考えておくとよいでしょう。
したがって、駐車場のコストを抑えるためには「駐車場をどこにするか」も重要なポイントです。
軽貨物車両にかかる維持費【税金・保険・車検について】
続いて、軽貨物車両にかかる税金、保険についての維持費を説明していきます。
軽貨物車両にかかる税金、保険は以下の通りです。
- 自賠責保険料
- 任意保険
- 軽自動車税
- 自動車重量税
- 車検料
自賠責保険料
まずは、自動車の保険で欠かせない「自賠責保険料」について説明していきます。
自賠責保険料は、軽貨物車両の車検が2年おきとなっているので、基本的に2年間保証の自賠責保険料に入る人が多いです。
また、軽貨物車両の車検の費用は一律30,840円/2年となっており、どの保険会社も保険料は変わりません。
したがって、軽貨物車両の自賠責保険にかかる費用は30,840円となっています。
任意保険
任意保険については、その名の通り、加入しなくても良い保険です。
しかし、基本的には全ての運送会社は全ての車両に任意保険を組み込んでいます。
何故なら万が一、ドライバーが業務中、人をひいてしまったり、建物や器物を破損させてしまった場合に多額の弁償金を支払わなければいけないからです。
任意保険は大きく分けて、4つの種類があります。
- 対人賠償保険
- 対物賠償保険
- 車両保険
- 貨物保険
上記保険に関しては、簡単に言うと、「人、物、車両、商品が事故の際に怪我、損害が生じれば保証してくれる保険」です。
軽貨物車両の任意保険の相場は100,000円から150,000円です。
しかし、保険の内容やプランによって変わってくるので、選ぶ際は注意が必要になります。
軽自動車税
軽貨物車両には税金の種類として、軽自動車税、自動車重量税という税金があります。
軽自動車税については、「最初に受けた検査の時期」によって納税額が変わってきます。
- 平成27年3月31日以前、最初に検査を受けた場合→3,000円/年
- 平成27年4月1日以降、最初に検査を受けた場合→3,800円/年
- 初めての検査から13年経過している場合→4,500円/年
このように、検査を最初に受けた時期によって納税する金額は変わります。
自動車重量税
自動車重量税はその名の通り、「自動車の重量によって変動する税金」です。
自動車重量税は支払うタイミングは下記の通りになります。
- 新車登録の時
- 車検の時
基本的に、新車の登録から2年後に初回の車検が行われます。
そして、2年ごとに車検を行わなければなりません。
つまり、 自動車重量税は1年ごとにかかるものですが、新規登録あるいは車検時に、車検証の有効期間に2年分まとめて支払う仕組みになっています。
また、自動車重量税は「エコカー減税」が適用される税金です。
つまり、車両がエコカー減税に適用されていれば、自動車重量税は安くなります。
出典:自動車重量税の税額一覧表
車検料
前述のとおり軽貨物車両の車検は、初回の登録後2年、以降2年ごとに更新する必要があります。
その際にかかる基本料金は、軽自動車の場合30,000円から50,000円が相場ですが、車両の状態・依頼する業者によって金額は変動するので参考程度に考えておきましょう。
車検料を安く抑えたい場合は、まずいくつかの業者に見積もりを依頼して比較するのがおすすめです。
車検の時期が13年・18年のタイミングであれば、車の買い替えも検討してみるとよいでしょう。
軽貨物車両にかかる年間の維持費
ここまで、軽貨物車両の維持費について解説してきましたが、それでは一体全体として年間いくらくらいかかるのでしょうか。
下記は高く見積もった場合の軽貨物車両の維持費になります。
約135,000円(車両にかかる維持費)+約164,000円(車両にかかる保険料、税金)=299,000円
駐車場が都内、保険料も高い保険に加入したことを想定して、おおよそ30万円はかかるとされています。
4ナンバーと5ナンバーにかかる維持費の比較
軽貨物車の4ナンバーと、小型乗用車の5ナンバーは維持費がどう違うのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
任意保険やガソリン代などは、使い方や必要とするケースによって個人差があるため、共通した基本的な税金・保険料を比較してみました。
それぞれのナンバーでの目安は以下の通りです。
軽貨物車(4ナンバー) | 小型乗用車(5ナンバー) | |
---|---|---|
自賠責保険料 | 30,840円/24カ月 | 19,730円/24カ月 |
軽自動車税 | 5,000円/年 | 10,800円/年 |
自動車重量税 | 5,200~8,800円/年 | 16,400円/年 |
合計 | 41,040円~44,640円/年 | 46,930円/年 |
どちらも軽自動車・エコカー減税なしとして仮定した場合の目安で、自賠責保険料を払う年として考えた年間の金額です。
軽貨物車は運転する頻度が一般利用より多いため、必然的に事故のリスクも高くなります。
そのため、自賠責保険料は割高ですが、軽自動車税や自動車重量税は割安です。
小型乗用車と比較すると、総合的に軽貨物車の方が税金は安いことが分かります。
また、自賠責保険料は車の安全性能の向上や、事故率の低下などが理由で引き下げられることもあります。
さらに、軽自動車税・自動車重量税はエコカー減税のように変わる場合もあるので、頭に入れておきましょう。
軽貨物車両にかかる維持費を抑える方法
ここまでの説明で「軽貨物車両にかかる維持費はこんなにするのか」という印象を持つドライバーも多いでしょう。
しかし、軽貨物車両の維持費を抑える方法もあります。
保険は慎重に選ぶ
まずは、保険の選び方です。
自賠責保険は基本的に決められた保険なので、費用としては変わりませんが、任意保険は「選び方」によっては安くなります。
例えば以下のポイントです。
- 自分の車両に無駄な保険料をかけていないか
- ドライバー(自分)に多くの保険料をかけすぎていないか
前述した様に、任意保険には大きく分けて、4つの任意保険が存在します。
初心者ドライバーであれば、全ての保険に入るのが無難ですが、全ての保険に入ると保険料が大きな負担になってしまいます。
ひとつひとつ保険会社を調べていけば、保険費として大きくコスト削減できます。
また、保険会社によって金額も違うので、念入りに保険のプラン調べてから選びましょう。
ガソリン代を節約する
2つ目はガソリン代を節約することです。
ガソリン代は経費にもなりますが、節約すると大幅な維持費削減にもつながります。
例えば、下記のことをしたらガソリン代は節約することが可能です。
- 車のアクセルを一定にする
- エンジンをかけたまま停車(アイドリング)しない
- エアコンを控える
急発進・急ブレーキ、配送時にエンジンをかけたまま停車しないことを意識するだけでも、燃費が改善され節約につながります。
エアコンは無理に控える必要はありませんが、窓を開ければ過ごせる季節はなるべく使わないようにするなど、日々節約を心がけるとよいでしょう。
定期的にメンテナンスを行う
定期的にメンテナンスを行うことで、ガソリン代の節約や車の故障を防ぐことができます。
以下は定期的にメンテナンスを行いましょう。
- エンジンオイル
- オイルフィルター
- タイヤ
- エアコンフィルター
- バッテリー
オイル、タイヤは老朽化するにつれ、燃費も悪化してガソリン代の維持費を大きくする原因となります。
したがって、定期的な確認、そして必要であれば交換が必要です。
エアコンフィルターは、交換せずに使用し続けると目詰まりを起こし、エアコンが正しく機能しなくなるうえに悪臭の原因にもなります。
メンテナンスを放置すればするほど、状態が悪化し修理・交換が高額になる場合もあるでしょう。
加えて、車両の故障や走行時のトラブルにつながる可能性が高くなります。
想定外の出費を抑えるためにも、定期的にメンテナンスするのがおすすめです。
維持費を負担してくれる委託先を選ぶ
委託先には、車両の貸し出しやガソリン代の補助などサポート体制が充実しているところもあります。
基本的には手数料やリース代を支払うことが前提ですが、なかには無料でサポートしている委託先もあるので探してみるのもいいでしょう。
「これから軽貨物業を始めたいけど、初期費用も維持費も資金が用意できない」「どれくらい維持費がかかるのかイメージできないのでまずは試したい」という人は特におすすめです。
まずはサポート体制がある委託先で、自分がどれだけ運送業界で仕事をこなせるのかを見ていくのもいいでしょう。
軽貨物車両の維持費はしっかりと把握し、うまく抑えよう
軽貨物車両にかかる維持費のおさらいをしていきましょう。
軽貨物車両の維持費は下記の通りです。
- 車体コスト(ガソリン代、メンテナンス費用、駐車場代)
- 税金・保険費用(自賠責保険料、任意保険、軽自動車税)
これらを総合すると、軽貨物車両には年間30万円ほどの維持費がかかることが分かります。
軽貨物車両の維持費を理解することは、軽貨物ドライバーを始めるにあたって欠かせないことです。
そして軽貨物車両の維持費を抑える上で大切なことなので、必ず把握しておきましょう。