2022年10月より、軽自動車の貨物登録に関して規制緩和が施行されました。
施行内容である軽乗用車(5ナンバー)の貨物運送解禁により、貨物配送業への参入ハードルが下がった一方で、軽貨物業界では軽貨物ドライバーの賃金面などでのよくない影響が危惧されています。
この記事では、今回の規制緩和により、軽貨物業界にどのような影響が出るのか、4ナンバーと5ナンバーの違いなどの基本的な部分も踏まえ解説していきます。
軽自動車の貨物登録における条件(従来)
これまで軽自動車を貨物登録するには、4ナンバーで登録する必要がありました。
4ナンバーとは、車のナンバープレートの地名横に書かれた数字が4から始まるナンバーのことです。

4ナンバー登録をするには、車が貨物車として利用できるだけの積載スペースを備えていることが条件となります。

貨物運送するには4ナンバー化が必須?
これまで軽貨物で貨物運送をするには黒ナンバーを取得する必要があり、黒ナンバーは4ナンバー化が必須でした。
しかし、2022年10月からの規制緩和により、小型乗用車のナンバーである5ナンバーでも貨物運送が可能になりました。
4ナンバー登録できる車
車を4ナンバーで登録するには、貨物車として登録するための条件を満たす必要があります。国土交通省の情報によると、軽自動車の4ナンバー登録に必要な要項は以下の通りです。
- 物品積載設備の床面積が0.6㎡以上あること
- 乗車設備の床面積より、積載の為の床面積の方が大きいこと
- 最大乗車人数の重量より、積載荷物の最大重量の方が大きいこと
- 荷物の出し入れ口の広さが縦600mm、横800mm以上あること
- 運転者席と積載場所に隔壁があること
(参照:国土交通省「自動車の用途等の区分について」)
車種に関わらず、これらの条件をすべて満たした軽自動車が、貨物登録(4ナンバー登録)できます。
これまでは、軽貨物ドライバーとして働くには4ナンバー登録をした車を用意することが必要でしたが、2022年10月に施行された規制緩和により、軽乗用車でも貨物運送をおこなうことが可能となりました。
軽乗用車(5ナンバー)の黒ナンバー解禁に関しては次の章で詳しく解説します。
2022年、軽乗用車での貨物運送事業が解禁?
2022年10月より、軽乗用車の貨物運送事業が解禁されました。
軽乗用車で貨物運送をおこなえるようになったことで何が変わるのかについて解説していきます。
4ナンバーと5ナンバーの違い
まず、車のナンバープレートの分類番号である4ナンバー、5ナンバーがそもそもどういう意味合いを持つのかという話ですが、この分類番号は車の種類を区別するものです。
4ナンバーは小型貨物車に割り当てられるナンバーです。5ナンバーは小型乗用車に割り当てられるナンバーで、一般的に多くの人が乗っている乗用車の多くは、5ナンバーとなっています。
<各ナンバーの割り当て>
ナンバー | 車の種類 | 車の例 |
---|---|---|
1ナンバー | 普通貨物自動車 | 大型トラックなど |
2ナンバー | 普通乗合自動車 | バスなど |
3ナンバー | 普通乗用自動車 | 小型乗用車の規格を超えた乗用自動車 |
4ナンバー | 小型貨物自動車 | 貨物用途の軽自動車、軽トラックなど |
5ナンバー | 小型乗用自動車及び乗合自動車 | 一般的なサイズの車など |
6ナンバー | 小型貨物自動車 | 4ナンバーと同様 |
7ナンバー | 小型乗用自動車及び乗合自動車 | 5ナンバーと同様 |
8ナンバー | 特種用途自動車 | パトカーや消防車など |
9ナンバー | 大型特殊自動車 | フォークリフト、クレーン車など |
0ナンバー | 建設機械用大型特殊自動車 |
なお、6ナンバーは4ナンバー車の数が上限に達した場合に用いられ、7ナンバーは5ナンバー車の数が上限に達した場合に用いられます。区分は同じです。
規制緩和の概要
2022年10月より始まる規制緩和によって、これまで軽貨物自動車のみがおこなえていた軽貨物運送を一般の乗用車でもおこなえるようになります。
運輸支局への届け出など軽貨物運送事業を始めるまでの手続きはこれまでと変わりませんが、これまで軽乗用車を貨物車とするために必要だった、後部座席の取り外しなどの「構造変更」をおこなう必要がなくなります。
新たに車を用意せずとも自分の所有する乗用車で軽貨物運送事業を始めることができ、軽貨物運送業を始めるハードルが下がったことが規制緩和の特徴です。
一応の条件として、乗用車を貨物車として使用する場合の荷物の最大積載量は、以下のように定められています。
「定員乗車数」-「乗車数」×55㎏
例えば4人が定員の乗用車では、(4-1×55=165)となり、荷物を積載できる重さは165㎏までとなります。
軽乗用車で貨物運送できるメリット
軽乗用車で貨物運送できるメリットは、やはり軽貨物運送業を始める際の初期費用がなくなることです。
もちろん軽乗用車を所有している人のみの話ですが、これまで軽貨物を始める際には、わざわざ軽貨物車を用意する必要があり、中古で購入しても数十万の出費が必要でした。
それが軽自動車での貨物運送が認められたことで、軽乗用車を所有している人は、そのまま自身の車で軽貨物運送業を始めることが可能になったのです。
軽貨物運送業への参入が簡単になったことが、メリットであるといえるでしょう。
軽乗用車で貨物運送できるデメリット
業界全体の話となりますが、軽貨物運送業への参入者が増えることで、低賃金でも仕事を受ける人が現れ、業界全体の賃金低下の可能性が出てくることがデメリットとして挙げられます。
今回の規制緩和で、軽貨物運送業の労働者が増加することが予想されています。
一気に労働者が増えることでこれまでのバランスが崩れ、今まで軽貨物で働いていた人に大きな混乱をもたらす可能性があるでしょう。
業界全体の低賃金化と予期せぬ混乱が今回の規制緩和のデメリットになるのではと予想されています。

なぜ軽乗用車での貨物運送は解禁された?
軽乗用車での貨物運送は、2022年8月に国土交通省から公表され、10月に施行が開始されることになりました。
規制緩和に至った背景、そしてこれからの軽貨物運送業界への影響を解説します。
規制緩和の背景
今回の規制緩和が施行された理由の1つに、人手不足の運送業界への人材確保があります。
運送業界は長年、人手不足という大きな問題に頭を悩ませていました。特に近年はネットショッピングの普及や、コロナの影響により、運送業界の需要が大きく広がっているといえます。
広がる物流の需要に対して、人手不足の問題は深刻なものとなり、軽貨物運送業の規制緩和にまで至ったと考えられます。
規制緩和により、これまでのように軽貨物運送業を始める際、軽貨物車を用意する必要がなくなるため、自宅の乗用車で副業感覚で始める人が大きく増えると予想されています。
軽乗用車の解禁が軽貨物運送業界に与える影響
軽乗用車の軽貨物運送業解禁により、軽貨物運送業界に起こる影響には、よい影響と悪い影響どちらも考えられます。
まずよい影響ですが、多くの人が運送業界に参入することによって、物流業界の人手不足がある程度解消されることです。
人手不足が解消されると、運送業界で問題視されているドライバーの長時間労働がある程度解決するかもしれませんし、ネットショッピングの利用者のニーズに応えた、スピーディな配送を維持できるでしょう。
反対に悪い影響として考えられるのは、軽貨物運送業への参入者が増えることで競争率が高くなることです。
競争率が高くなれば低賃金でも仕事を受ける人が増え、業界全体の低賃金化が起こり、これまで軽貨物ドライバーとして働いていた人に大きな負担がかかることになります。
また、個人事業主であるドライバーの数がむやみに増えれば、配送の質が低下することも考えられます。
このように、軽自動車の貨物運送解禁はいい面ばかりではなく、不安視される悪い面も多いといえるでしょう。

軽自動車の貨物登録にかかる費用
これまで述べたように、2022年10月より、軽貨物運送業への参入に貨物登録は必要なくなりましたが、貨物登録にはまだ税金面などでのメリットが存在します。
軽自動車の貨物登録にかかる費用は数千円ほどで済みますが、構造変更が必要な場合はそれなりの金額がかかってしまいます。
車の構造変更をおこなうと、その時点で新たに車検を通す必要があります。そのため、構造変更は車の車検前に済ませておくのがベストです。
構造変更をおこなった場合、車の車検代に加え、検査手数料やナンバー代などもかかるので、諸々込みの費用で30,000円〜50,000円ほどは必要になるでしょう。
軽自動車は構造変更しても貨物登録できる?
軽自動車を貨物登録したい場合、貨物車として登録するための条件を満たす必要があります。
もし貨物登録したい軽自動車が条件を満たしていない場合、構造変更することで条件をクリアできる場合があります。
軽自動車の構造変更とは
軽自動車の構造変更は、軽自動車の用途を「貨物」に変更することを目的とし、貨物登録の条件を満たすよう車体を改造することです。
4ナンバー登録の条件をもう一度おさらいすると、
- 物品積載設備の床面積が0.6㎡以上あること
- 乗車設備の床面積より、積載の為の床面積の方が大きいこと
- 最大乗車人数の重量より、積載荷物の最大重量の方が大きいこと
- 荷物の取り入れ口の広さが縦600mm横800mm以上あること
- 運転者席と積載場所に隔壁があること
となります。
軽乗用車で貨物登録をしたければ、これらすべてを満たすよう、構造変更をおこなう必要があります。
貨物運送できる軽自動車への構造変更のやり方
4ナンバー登録の条件を満たすための構造変更には、具体的にどのようなやり方があるのか、例を挙げて解説します。
まず、軽自動車の4ナンバー登録で1番の障害となりえるのが、「乗車設備の床面積より、積載の為の床面積の方が大きいこと」です。
これは軽自動車の後部座席を撤去することで対応します。後部座席が存在する限り、床の乗車面積より積載面積を大きくすることは難しいので、後部座席の取り外しが必要になります。
そのほかにも運転手席と積載場所に仕切りを作ったり、荷物の取り入れ口が基準を満たさない場合は開閉部分を交換するなどの対応が必要になる場合もあります。
軽自動車の4ナンバー化には、4人乗りの車を2人乗りにする必要もあるということです。
4ナンバーに関する構造変更の必要書類
4ナンバーにするために軽自動車の構造変更をおこなったときは、必要な書類を自動車検査登録事務所か運輸支局に提示し、構造等変更検査を受ける必要があります。
検査に必要な書類は以下の通りです。
- 自動車検査票
- 点検整備記録簿
- 自動車損害賠償責任保険(共済)証明書
- 使用者の委任状(認印押印)
- 委任事項〔自動車検査証記入・構造等変更検査〕
- 所有者の委任状(認印押印)
- 申請書
- 手数料納付書
- 自動車重量税納付書
- 納税証明書
必要な書類は国土交通省のサイトにも掲載されています。申告書のダウンロードもできるので、必ずチェックしましょう。
(参照:国土交通省「構造等変更の手続き」)
軽貨物ドライバーとして業界で生き残っていくためには
2022年10月の規制緩和により、軽自動車の貨物ドライバーが人気となり、ドライバーの数が大きく増える可能性があります。
ドライバーが増えれば、1人当たりの負担が減る可能性もありますが、配達閑散期には荷主から契約を切られるリスクも高まるでしょう。
このような問題が増えるなか、軽貨物ドライバーとして業界で生き残っていくためには、1つの荷主や契約相手に依存せずに、複数の案件を同時にこなすなどの柔軟な対応が必要になるでしょう。
また、軽乗用車で新規に参入してくるドライバーは、副業感覚で働く人が多いと考えられます。そのため自分の配送スキルを上げ、専業のドライバーとして、副業ドライバーと確かな差をつけることができれば、荷主からも重宝されるようになります。
今回の規制緩和により、実際のところ軽貨物業界にどういう変化が生まれるのかは予想が難しい部分も多いですが、自分の生活を守れるよう、業界の今後の動向には気を配っておくようにしましょう。