軽貨物運送業において、貨物保険は荷主からの信頼を得るため、また万が一の損害賠償をカバーするために欠かせません。
本記事では、軽貨物の貨物保険の基本的な内容や必要性、料金の目安について解説します。
さらに、保険を提供する代表的な保険会社や保険料を抑えるための方法、保険の選び方や加入前に確認すべきポイントも紹介します。
貨物保険への加入を考えている運送業者やドライバーの方は、ぜひ参考にしてください。
軽貨物の貨物保険とは
軽貨物の貨物保険は、運送業者が荷主から預かった貨物に対して生じた損害を補償するための保険です。
個人事業主として働く軽貨物ドライバーは、自分の体や車に対する補償だけでなく、荷主から預かった荷物に対する補償も考慮しなければなりません。
万が一、荷物にトラブルがあった場合には荷主からの信頼を失うだけでなく、賠償責任を負うリスクもあるからです。
貨物保険にはいくつか種類がありますが、軽貨物運送業者が一般的に加入するのは「運送業者貨物賠償責任保険」です。
この保険は、運送中に発生した貨物の破損や盗難などの損害に対する賠償責任を補償します。
貨物保険は、軽貨物運送業者にとって欠かせないリスク対策です。
加入することで、万が一のトラブルが発生しても安心して業務を続けられる点が大きなメリットといえるでしょう。

貨物保険の補償範囲
貨物保険の補償範囲や内容は、加入する保険会社や契約内容によって異なりますが、一般的には以下のような損害が補償されます。
- 損傷や汚損
- 紛失や盗難
- 水漏れによる損害
- 火災・爆発による損害
- 車両事故による荷物の損害
- トラック転覆や横転による損害
- 誤配による損害
- 温度管理ミスによる損害
- 輸送遅延による金銭的損失
貨物保険は、走行中や車上仮置中はもちろん、積み込みや荷降ろし作業中など、業務に関連して発生した荷物の損害を幅広く補償します。
貨物共済との違い
貨物保険と貨物共済は、どちらも貨物の損害を補償する制度ですが、目的・加入者・運営・補償内容に違いがあります。
項目 | 貨物保険 | 貨物共済 |
---|---|---|
目的 | 事故や災害による損害賠償を目的とした商業的な保険 | 組合員同士でリスクを分担する共同の保障制度 |
加入者 | 主に運送業者や荷主 | 組合に加入した運送業者や事業者(営利を目的としない) |
運営 | 保険会社がリスクを引き受け、営利を目的として運営 | 非営利の組合が運営 |
補償内容 | 保険契約内容によって補償額が異なり、一般的には高額な補償が可能 | 補償範囲や条件は共済の規約に基づき、保険より掛け金が安いが、補償額や範囲に制限があることが多い |
貨物保険は商業的な保険会社が提供するもので、高額な補償を提供できます。
一方で、貨物共済は非営利の組合による保障制度であり、貨物保険よりもコストを抑えつつ一定の補償を受けられる選択肢です。
運送保険との違い
貨物保険と運送保険は、どちらも運送業者がリスクに備えるための保険ですが、目的や補償内容に明確な違いがあります。
項目 | 貨物保険 | 運送保険 |
---|---|---|
目的 | 輸送中の貨物そのものに対する損害を補償する | 顧客からの損害賠償請求に備えるための保険 |
補償内容 | 火災、破損、盗難など貨物に直接的に生じた損害を補償 | 運送業者が業務中に生じた過失(荷物の取り扱いミスや配送の遅延など)で、顧客から賠償責任を問われた場合の補償 |
貨物保険は「貨物そのものを守る」ため、一方、運送保険は「運送業者の責任を守る」ための保険です。
軽貨物の貨物保険の必要性
軽貨物運送業を営むには、貨物保険の加入が重要です。
運送中に事故や盗難、自然災害などが起こるリスクは避けられません。貨物保険に加入することで、万が一の事態に備え、経済的な負担を軽減できます。
特に軽貨物運送では、小型の荷物であっても高価な商品を扱うことが多く、事故が発生した際には高額な賠償が必要になる場合もあります。
また、一部の案件では貨物保険への加入が条件となっており、こうした仕事を受けるには保険の加入が必須です。
貨物保険に加入する方法としては、専用の保険に直接契約するほか、自動車保険に特約として貨物保険を追加する方法もあります。
ただし、特約の場合には補償内容が限定されることがあり、荷崩れなど交通事故以外の理由で発生した損害が対象外になる場合もあります。
そのため、補償内容を十分に確認したうえで、自分の業務に合った保険を選び、リスクに備えることが大切です。
【料金相場】軽貨物の貨物保険はいくらかかる?
軽貨物運送業を行ううえで、貨物保険の料金相場や費用の内訳を理解することは重要です。
以下に、主な保険会社の情報や料金の目安、保険料に影響を与える要因を整理しました。
保険会社 | 年間保険料 |
---|---|
三井住友海上火災保険株式会社 | 約37万円 |
AIG損害保険株式会社 | 要問合せ |
東京海上日動火災保険株式会社 | 要問合せ |
損害保険ジャパン株式会社 | 要問合せ |
保険料の具体的な額は、契約内容や条件により異なります。
公表情報は上記のとおりですが、軽貨物ドライバー向けの基本的な保険料の相場は、年間25,000円〜50,000円程度です。
月額に換算すると約2,000円~4,000円程度が目安といえます。
また、保険料は、以下のような条件によって変動します。
- 荷物の補償額
- 運送の距離や地域
- 契約形態
- 運転履歴や等級
さらに貨物保険には、基本的な保険料に加え、残存物取片付け費用特約などの特約の追加費用や自己負担額の設定によって保険料が変動します。
ただし、実際には、軽貨物ドライバーは所属する軽貨物会社を通じて保険に一括加入しており、保険料は任意保険と共に給与から天引きされます。
そのため、ドライバー自身は個別の保険料を把握していないケースがほとんどです。
出典:
運賠 安心デリバリー保険料例|三井住友海上火災保険株式会社
運送業者貨物賠償責任保険|AIG損害保険株式会社
運送業者貨物賠償責任保険 補償内容|東京海上日動火災保険株式会社
運送業者貨物賠償保険(車両特定方式)|損害保険ジャパン株式会社
軽貨物の貨物保険料を安く抑えるためのポイント
ここでは、軽貨物の貨物保険料を安く抑えるための3つのポイントを紹介します。
実践できるポイントを取り入れて、できるだけ保険料を抑えるようにしましょう。
複数の保険会社から見積もりを取る
軽貨物の貨物保険を選ぶ際には、複数の保険会社で見積もりを取得して比較することが重要です。
保険会社ごとに料金体系や補償内容が異なるため、見積もりを比較することで、最適な保険を見つける可能性が高まります。
また、インターネットの比較サイトや保険代理店を活用することで、効率良く複数のプランを検討できます。
特に、軽貨物車両に特化した保険を提供している会社を選ぶと、よりニーズに合ったプランが見つかるでしょう。
車両台数と売上高に応じて契約形態を選ぶ
貨物保険の契約形態は、契約車両の台数に応じて異なります。
事業者が所有する全車両を一括でカバーする契約や1台ごとに契約する形態があり、事業規模によって選択が変わります。
大規模な事業者は全車両を一括で契約するほうが効率的ですが、個人事業主や小規模事業者は1台単位の契約が適していることが多いでしょう。
また、売上高に応じた保険料設定を行っている保険もあります。売上高方式では、事業の規模に基づいて保険料が決定されるため、安定した売上を得ている事業者には有利に働くことがあります。
補償内容と保険料の最適なバランスを見つける
軽貨物の貨物保険料を抑えるためには、補償内容と保険料のバランスを慎重に検討することが重要です。
まず、運送業務の内容に基づき必要な補償範囲を明確にしましょう。例えば、高額な荷物を運ぶ場合は補償額を増やし、リスクが低い場合は最低限の補償で十分です。
また、特約の有無や自己負担額の設定を見直すことで、保険料を最適化できます。
特約は業務に必須のものだけを選び、不要なオプションを削ると無駄を減らせるはずです。
一方、自己負担額を高めに設定すると、月々の保険料が抑えられる場合があります。
代表的な軽貨物の貨物保険
次に、代表的な軽貨物の貨物保険を提供している保険会社を紹介します。
それぞれの保険の基本情報や特徴、料金体系について、どのような人に適しているかも含めてみていきましょう。
損保ジャパン
損保ジャパンの運送業者貨物賠償保険には、補償範囲に応じて「ワイド型」と「限定型」の2つの契約パターンがあります。
契約形態は、トラック全車両をまとめて契約するか、一部の車両のみをカバーするかの選択が可能です。
保険は1年間で包括的に補償され、保険期間中に事故が複数回発生しても、支払限度額が減額されることはありません。
ただし、損害率に基づく料率調整が行われるため、次年度以降の保険料は見直される可能性があります。
出典:運送業者貨物賠償保険(車両特定方式)|損害保険ジャパン株式会社
東京海上日動
東京海上日動の運送業者貨物賠償責任保険の契約形態は、すべての車両を対象にする「包括方式」と一部車両のみを対象とする「個別方式」の2つです。
追加保険料が必要な特約として、運送業者貨物第三者賠償責任担保特別約款や残存物取片付け費用担保特別約款など、複数のオプションが提供されています。
免責金額は、1事故あたり5,000円以上で設定する必要があります。
出典:運送業者貨物賠償責任保険|東京海上日動火災保険株式会社
三井住友海上
三井住友海上の運賠安心デリバリーでは、すべての業務を対象とする包括的な契約や一部の業務に限定した契約が可能です。
また、前年度の売上高に基づいて保険料が決まる「売上高包括方式」も提供しています。
補償額は100万円〜1億円、免責金額は0円〜100万円まで柔軟に設定でき、ニーズに合わせた保険内容が選べます。
出典:運賠安心デリバリー|三井住友海上火災保険株式会社
AIG損保
AIG損保の運送業者貨物賠償責任保険は、複数の契約方式から選択できます。
すべての車両を対象にする車両特定方式や軽貨物車特定方式、または年間売上高に基づいて保険料を算出する売上高方式があります。
1事故の支払限度額は100万円〜1億円、免責金額は0円〜100万円です。
必要に応じてオプション特約を追加することで、業務に合わせた保険内容に調整できるでしょう。
出典:運送業者貨物賠償責任保険|AIG損害保険株式会社
軽貨物の貨物保険の選び方・加入前の確認ポイント
各保険会社の特徴を踏まえ、自分の事業に合った保険を選ぶために、加入前に以下の3点を確認しておきましょう。
補償内容と事業リスクの適合性を確認する
保険の補償内容が自社の事業リスクに適しているか確認することが重要です。
例えば、高価な荷物を運ぶ場合には十分な賠償額が設定されているかをチェックしましょう。
また、事故時の荷物補償だけでなく、第三者賠償や臨時費用などの特約が必要かも考慮する必要があります。
自社の運送業務の特徴に合った補償を選ぶことで、リスク管理が効果的に行えます。
保険料とコストパフォーマンスを比較する
保険料が安いだけでなく、補償内容とのバランスが取れているかを比較することが大切です。
例えば、月額10,000円の保険と12,000円の保険では、後者が特約で高額貨物の補償を含む場合、業務内容によっては割安と判断できることもあります。
複数の保険会社から見積もりを取り、補償内容や免責金額の違いを具体的に比較しましょう。
また、長期契約の割引や分割払いの手数料も検討することで、コストパフォーマンスを向上させられます。

保険会社の信頼性とサポート体制を確認する
貨物保険を選ぶ際、保険会社の信頼性も重要な要素です。
過去の事故対応や顧客満足度を確認し、実績のある保険会社を選ぶことで、万が一のトラブル時にも安心して対応してもらえます。
また、迅速な対応やサポート体制の充実度も、選定基準として重視すべきです。
信頼できる保険会社と契約することで、軽貨物業務を安心して行うための強力なバックアップが得られるでしょう。
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軽貨物業界で信頼できる運送会社を見つけるためには、貨物保険に加入している企業を選ぶことがポイントです。
貨物保険は荷主からの信頼性の証であり、トラブル時の損害をカバーする役割を果たします。
そのため、優良な企業は貨物保険をしっかりと整備しています。
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