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タクシー業界が「終わり」といわれる理由は?現状と今後について考察

最近、「タクシー業界は終わり」という意見を目にすることが増えてきました。

配車アプリの登場や「日本版ライドシェア」のサービス開始、旅客運送業の働き方改革などタクシー業界には大きな変革が訪れようとしています。

この記事では、タクシー業界の現状と直面している課題を整理し、業界の今後の展望を詳しく検証します。

また後半では、タクシー業界がと必ずしも「終わり」といえない理由についても解説します。

「このまま運転手を続けていいのか?」「自分の仕事に未来が見えない」など、タクシー業界で働き続けることに不安を感じている方にとって、今後のキャリアを考えるための参考になる内容となっているので、ぜひご覧ください。

目次

タクシー業界の現状と課題

タクシー業界は、近年大きな変化を迎えています。

ここからは、国土交通省の資料を参考に、タクシー業界の現状や抱えている課題について詳しく解説します。

タクシー車両の減少が進行中

タクシー業界では、平成14年2月に昭和30年から続いた規制の緩和が実施されました。

これにより、参入の際に必要とされる最低保有車両数が10両に引き下げられたり、免許制から許可制に制度が改正されたりし、新規参入がしやすくなったため、一時的に車両数が増加しました。

しかし、平成20年度以降はリーマンショックなどの影響もあり、タクシーの車両数は減少し続けています。

さらに、輸送人員や運送収入も近年の不景気の影響を受けて減少傾向にあり、業界全体が縮小しています。

出典:タクシー事業の現状|国土交通省

長時間労働と低所得がドライバーを圧迫

タクシードライバーは、ほかの産業の労働者に比べて勤務時間が長い傾向にあります。

特に、隔日日勤の勤務体系では、1回の出勤で17時間程度の拘束時間があることも……。

平成25年時点で、全産業の労働者が年間平均2,160時間働くなか、タクシードライバーは平均2,352時間、その他の年度でもタクシードライバーの残業時間は全産業の平均を常に上回る状況です。

しかし、タクシードライバーは長時間働いているにもかかわらず、年間所得は全産業の労働者のおよそ半分にとどまっています。

このように、長時間働いているのに低所得という現状が、タクシードライバーにとって大きな問題となっています。

出典:タクシー運転者と全産業労働者の年間所得等の推移(男性)|国土交通省

タクシードライバーの約8割が50歳以上

タクシードライバーの平均年齢は年々上昇しており、平成26年時点で58.7歳に達しています。

一方、全産業の労働者の平均年齢は42.9歳であることから、タクシードライバーの平均年齢は一般的な職業の平均と比べてもかなり高いことがわかります。

また、男性タクシードライバーの年齢別構成を確認すると、平成19年の時点では38%程度だった60歳以上のドライバーの割合が、平成23年では45%近くとなり、平成26年には53%に達しています。40代までのドライバーの割合が平成19年から15%前後で変化していないことも加味すると、業界全体での高齢化は深刻と言わざるを得ません。

出典:
タクシー運転者と全産業労働者の平均年齢の推移|国土交通省
タクシー運転者(男性)の年齢別構成比率の推移|国土交通省

「タクシー業界は終わり」に関する実際の声

次に、実際に「タクシー業界は終わり」と感じている人の声を紹介します。

https://twitter.com/genta9nuko/status/1837084300048474353
https://twitter.com/7Znv478Zu8TnSWj/status/1834870145585758395
https://twitter.com/mkrestart0201/status/1843552669425975477

これらの声からわかるように、タクシー業界では、新人教育や既存社員の研修が不十分なため、人材が十分に育たずに離職するなど、結果として人手不足が深刻化するおそれがあります。

さらに、一般ドライバーが自家用車で有償送迎を行う日本版ライドシェアが解禁されれば、タクシー業界の安全性が脅かされるとの懸念も広がっています。

また、帝国データバンクによれば2023年にはタクシー業界の倒産件数が33社に達し、過去10年で最多となりました。

将来的には、衰退が進む地方など、タクシーがなくなる地域が現れる可能性も報じられており、業界全体が厳しい状況に置かれています。

参考:タクシー業の倒産増、過去10年で最多の33件|株式会社帝国データバンク

タクシー業界が「終わり」といわれる理由1)2024年問題の影響を受けるから

物流業界に大きな改革をもたらした「2024年問題」は、顧客を乗せて運ぶタクシー業界にも大きな影響を与えています。

2024年4月1日から施行された「ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示」によって、ドライバーの拘束時間の上限や休息期間が改正されました。

この改正により、以前と比べてタクシードライバーの実勤務時間は短くなっています。

個人の時間は多く取れるようになる一方で、働ける時間が減ってしまうため、収入の減額を心配する声も多く上がっています

出典:
ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示|厚生労働省
ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示が改正されます!|厚生労働省

タクシー業界が「終わり」といわれる理由2)ライドシェア拡大で競争激化するから

2024年3月、日本版ライドシェアが限定的に解禁されました。

ライドシェアとは、一般ドライバーが自家用車で有償の送迎サービスを提供できる制度です。

特にタクシーの供給が不足している場合に、ライドシェアは有効とされています。

もし海外のようにライドシェアが全面的に解禁されれば、一般ドライバーの参入の煽りを受けてタクシードライバーの労働条件が悪化する可能性も否定できません。

2024年11月現在、日本版ライドシェアは国土交通省から許可を受けたタクシー事業者が運行管理を行っています。

ただし、タクシー事業者の管理下にあっても、自動車運転免許取得後1年以上経過していればなれてしまうライドシェアのドライバーには、運転技術の未熟さや犯罪リスクなど安全面での懸念が残っています。

参考:
ライドシェア全面解禁なら「血みどろの戦いに」タクシー業界トップ|毎日新聞
タクシー業界、ライドシェアに続々参入「隙間時間に」と運転手募集|朝日新聞DIGITAL

タクシー業界が「終わり」といわれる理由3)高齢化と人材不足が深刻だから

少子高齢化の影響は、タクシー業界にも顕著に現れています。

さらに、車内という密室で業務を行わざるを得ない関係上、コロナ禍で高齢のタクシードライバーが次々と離職したため、高齢人材も不足している状態です。

タクシードライバーとして働くには二種免許が必要ですが、二種免許を取得するハードルを下げるために、取得日数短縮や取得費用補助の規制緩和を求める動きも出ています。

また、主婦でも働ける勤務体系を導入することで、パートなどの選択肢に選ばれるよう動くタクシー会社もありますが、これらの対策だけではすぐに解決できない問題といえるでしょう。

2023年に人口が150万人を下回った神戸市などでは、高低差が大きいという土地の特徴によって地域の足としての必要性が高いにも関わらず、高齢化と若い人々の近隣都市への流出によってタクシー事業者は苦境に立たされています

神戸市や新潟市などのように、人口が減少傾向にあって近隣により大きな都市がある町では、10年後にはタクシーが消える可能性があるともいわれています。

参考:10年後にはタクシーがなくなる地域も コロナ禍を経て「地域格差」が浮き彫りになったタクシー業界の“明暗”|新潮社

タクシー業界が「終わり」といわれる理由4)自動運転が浸透していくから

自動運転の時代はそう遠くない未来に訪れるとされ、タクシー業界もその影響を避けられません。実際、自動運転が進んでいる国であるとされるアメリカでは、条件付きではあるものの自動運転のタクシーサービスが一般開放され始めています。

もしタクシー車両が自動運転車両に入れ替われば、タクシードライバーの仕事が減り、失業のリスクが高まる可能性があります。

とはいえ、事故を起こさない完全な自動運転技術の実現には、まだ時間がかかるでしょう。

また、観光や介護・介助などの乗務員が付加価値として提供できるサービスの点を考えれば、自動運転が普及してきたとしてもドライバーがいることの必要性も見えてくると思われます。

参考:川鍋一朗氏「自動運転は5年後に浸透」と思う理由|東洋経済ONLINE

タクシー業界が「終わり」といわれる理由5)業界全体の給料が安いから

タクシードライバーといえば歩合制を採用している事業者が多かったこともあり、働けば働くほど稼げるといったイメージを持つ方もいるでしょう。しかし、全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、タクシードライバーの年間推計所得は418万9,900円です。

一方、全産業労働者の年間推計所得は506万9,400円です。

タクシードライバーの収入は全産業労働者の8割ほどにとどまり、その差は87万9,500円に上ります。

また、製造業生産労働者(男)・トラック運転者(男)・バス運転者(男)と比べても、タクシードライバー(男性)の給料は低い水準にあります。

出典:令和5年タクシー運転者の賃金・労働時間の現況|全国ハイヤー・タクシー連合会

タクシー業界にも闇がある?

一般的にはあまり知られていませんが、実際にタクシードライバーをやっている人しか知らない実態もあります。

具体的な事例として、以下が挙げられます。

  • ドライバーの拘束時間が長い
  • 正当な残業代が支払われていない場合がある
  • 釣り銭を自分で用意しなければならない
  • 酔客に対応しなければならない
  • 会社によっては事故の修理費用が自己負担になる
  • ほぼ会社命令の洗車時間に対する賃金が支払われない

上記のような問題がタクシードライバー業界の課題として浮き彫りになっています。

タクシー業界が一概に「終わり」とはいえない理由

これまでタクシー業界の抱える多くの課題をあげてきました。課題だけをみるとタクシー業界は厳しいと感じた人もいるでしょう。

しかし、一概に「終わり」とはいえない理由が3つあります。

では、どのような点に期待を持てるのか、具体的にみていきましょう。

配車アプリが普及しているから

配車アプリの普及により、タクシーの利用が以前よりも便利になりました。

以前はタクシーを呼ぶ際、タクシー会社に電話したり、ホテルのフロントに頼んだりする必要がありました。

しかし、現在はスマートフォンのアプリを使えば簡単にタクシーを手配できます。

配車アプリでは、GPSを使って迎えに来てもらいたい場所を正確に伝えられ、料金や到着予定時間も事前に確認可能です。

さらに、支払いはアプリ内で完結するため、手軽さがタクシーの利用を後押ししています

また、タクシードライバーとしてもいつ来るかわからないお客さんを流しで待つよりも、アプリで配車依頼のあった場所に確実にいるお客さんを乗せるほうが確実で楽だという意見もあります。

高齢者や外国人観光客から必要とされているから

高齢者にとって、タクシーは欠かせない移動手段です。

免許の自主返納を促す動きが広がっているものの、都市部のように公共交通機関が充実している地域は限られています。年齢的には免許を返納すべきでも、暮らしている地域では免許が欠かせない……という高齢者は多くいます。

特に介助が必要な方にとっては、自動運転だけでは対応しきれない場面も多く、通院や日常生活の買い物にタクシーの利用が不可欠です。

また、インバウンド需要の増加に伴い、タクシーの需要も拡大しています。

観光地案内や宿泊施設への送迎など、地域に詳しい乗務員がいるタクシーは日本の観光産業を支える重要な役割を果たしており、今後もその必要性は高まるでしょう。

タクシー業界の利権問題があるから

日本におけるタクシー業界には長年の利権問題があり、新規参入が難しい状況が続いています。

そもそも日本では法律によってタクシーの車両数が制限されており、国土交通省の許可を受けていない事業者が自由に始められる業種ではありません。さらに特定の地域に関しては新規参入・増車がそもそも禁止と定められていることもあります。

これが、日本で主要国とは異なる「日本版ライドシェア」が導入された背景にもなっています。

日本版ライドシェアでは運営がタクシー会社に限定されており、日本でライドシェアが定着するようならタクシー会社は新しい営業形態を獲得し、定着しなければまたタクシーが必要な人が支えてくれるため、ライドシェアのドライバーが確保できなくてもタクシー会社には利益がもたらされる仕組みです。

この状況では、交通難民問題の解決は難しいといえるでしょう。

新規事業者の参入による多様化は期待できない一方で、タクシー業界の利権は守られ続けると考えられています。

出典:「タクシー業界と自民党がタクシー待ちの行列を作っている」ライドシェア産業の芽を摘む”献金と利権”の卑しさ|PRESIDENT Online

タクシー業界に将来性はある?

タクシー業界の今後については、見通せない部分も多いです。

ドライバーの高齢化に伴う人手不足や革新的な自動運転技術、ライドシェアの拡大により、業界が縮小していくのは避けられないかもしれません。

しかし、タクシーは高齢者や外国人観光客にとって、依然として必要な交通手段です。

特に、移動手段を持たない高齢者にとって、タクシーは生活に欠かせないものです。

たとえ自動運転が普及しても、重い荷物を運んだり、手を引いて歩いたりするようなサービスは、まだ人の手に頼らざるを得ません。

また、馴染みのドライバーに頼る安心感も、人間ならではの強みといえます。

逆にいえば現代は、タクシー業界の転換期かもしれません。

これから自動運転やライドシェアを取り込んだ新しいタクシー業界の形態が生まれていくと思われますが、タクシーそのものの必要性は変わらないことを考えればタクシー業界はこれからも残り続けるでしょう。

車を運転する仕事なら、軽貨物ドライバーもおすすめ◎

近年タクシードライバーは高齢化が進み、長時間働いてもほかの業界と比べて年収が低い傾向が続いています。

2024年問題によって労働時間がさらに制限され、給料にも悪影響が及ぶことが懸念されています。

また、日本版ライドシェアや自動運転の普及もタクシー業界に大きな影響を与えるでしょう。

タクシーの持つ公共交通の性質からみて今後もタクシー業界が存続する可能性は高いですが、将来への明るい展望や優れたキャリアを築くことは難しいかもしれません。

そこで、同じ運転業務でも、需要が高まっている軽貨物業界に注目してみてはいかがでしょうか。Amazonなどのネット通販が広く普及したため、軽貨物を運搬するドライバーも人手が足りていない状態が続いています。

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前述の通り、タクシー業界がすぐに終わるわけではありませんが、新たな視点でドライバーの仕事を考えている方は、この機会に「ハコボウズ」を1度のぞいてみてはいかがでしょうか。

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