コロナ禍以降、大手通販サイトアマゾンをはじめとする通販業界の需要が高まり、軽貨物運送業に参入する人が増加しています。
これからアマゾンで軽貨物配送をしたいと考えている人の中には、法人契約ができるかどうか気になっている人もいるのではないでしょうか。
本記事では、アマゾンフレックスは法人契約できるかどうかやアマゾンデリバリープロバイダとの違いについて解説していきます。
アマゾンフレックスは法人契約できる?
結論から言うと、アマゾンフレックスでは法人契約ができません。
なぜなら、アマゾンフレックスは個人事業主のドライバーに向けたプログラムであるためです。
法人登録している人がアマゾンフレックスと契約したい場合は、個人事業主として登録しなければなりません。
なお、アマゾンフレックスとは、大手通販サイトアマゾンと直接業務委託契約を結び、アマゾンの荷物のみを配達する働き方で、黒ナンバーの軽貨物車両と普通運転免許証を持っている個人であれば誰でも始められます。
アマゾンと法人契約する方法はないの?
先述の通り、アマゾンフレックスでは法人契約ができません。
しかし、直接ではないものの、間接的にアマゾンと法人契約する方法はあります。
アマゾンとの法人契約を考えている人は、アマゾンデリバリープロバイダの働き方を知り、ぜひ検討してみてください。
アマゾンデリバリープロバイダ(デリプロ)なら法人契約が可能
アマゾンデリバリープロバイダであれば、法人契約が可能です。
ここでは、アマゾンデリバリープロバイダがどのようなものなのかについてや、アマゾンフレックスとの違いについて解説します。
アマゾンデリバリープロバイダ(デリプロ)とは
アマゾンデリバリープロバイダとは、デリプロ業者、つまりアマゾンと契約した中堅の運送会社の下請けとして配達を行う働き方で、個人、法人を問わず契約できます。
デリプロ業者は現在8社存在し、契約するデリプロ業者によっても異なりますが、加入するためには以下の条件を満たさなければなりません。
- 1人以上の配達員がいること
- 黒ナンバーの軽貨物車両
- 配達員の研修
- 各種保険(自動車保険、賠償責任保険、貨物保険)
配達員が1人と、その分の軽貨物車両があれば契約できます。
ただし、デリプロ業者が配達員を教育してくれるわけではないため、自分たちで研修をするなどして1人で配達できる状態にしてあげる必要があります。
軽貨物車両に関しては、必ずしも軽四輪車でなければならないということはなく、バイクや自転車、徒歩での配達も認められています。
また、各種保険への加入も条件とされています。
自動車保険は事業用で加入する必要があるため、ほとんどの場合自家用よりも掛金が上がってしまう点には注意が必要です。
保険会社によっては事業用の取り扱いがない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
さまざまなトラブルを想定し、賠償責任保険や貨物保険への加入も検討しておきたいですね。
アマゾンと直接法人契約を結ぶなら「Amazonデリバリーサービスパートナープログラム」
2023年3月より新たに開始された「Amazonデリバリーサービスパートナープログラム」では、運送会社がアマゾンと直接法人契約を結ぶことができます。
デリプロの場合、アマゾンとの直接契約ではなくデリプロ業者もしくは、デリプロ業者の下請け会社と契約することになります。一方で、Amazonデリバリーサービスパートナープログラムは、アマゾンの公式サイトから直接申し込みができ、いくつかの審査に通過すればアマゾンから直接案件を受けられるプログラムです。
Amazonデリバリーサービスパートナープログラムは、アマゾンから直接案件を請けられるため手数料が発生せず、利益を最大化しやすくなります。また、活動拠点が他のパートナーと被ることがないため、案件を食い合うことがなく、安定して仕事を請けられる等のメリットもあります。
このようにメリットの多いプログラムですが、申し込めばどの運送会社でもパートナーになれるわけではありません。あらゆる審査項目があり、通過は厳しいと言われています。
Amazonデリバリーサービスパートナープログラムでの開業や審査に関する詳細は、以下の記事でまとめていますのでぜひ読んでくださいね。
アマゾンフレックスとデリプロの違い
アマゾンフレックスとデリプロとAmazon配送サービスパートナーは、どちらもアマゾンの荷物を配達するプログラムであることは変わりませんが、仕組みや働き方などでさまざまな違いがあります。
2つを比較してみましょう。
アマゾンフレックス | デリプロ | デリバリーサービスパートナー(Amazon配送サービスパートナー) | |
---|---|---|---|
法人契約の可否 | 不可 | 可能(デリプロもしくは下請け業者と) | 不可(アマゾンと直接) |
仕組み | アマゾンとの直接契約 | アマゾンと契約のあるデリプロ業者との業務委託契約 | アマゾンと契約のあるAmazon配送サービスパートナー企業との業務委託契約 |
仕事の取り方 | 自分でオファーを取る | デリプロ業者から回してもらえる | アマゾンから直接請けられる |
1日の勤務時間 | 1日2時間だけなど、自分の都合に合わせてオファーを受けられる | 週60時間まで(出勤日数の上限は週5日) | 週60時間まで(出勤日数の上限は週5日) |
休日 | 働きたいときにオファーを受ければよいため、休みたいときは休める | シフト制(出勤日数の上限は週5日) | シフト制(出勤日数の上限は週5日) |
このように、同じアマゾンの荷物を配達する仕事ではありますが、仕組みや働き方は大きく異なります。
参考:アマゾンHubデリバリーパートナープログラムとは
アマゾンHubデリバリーパートナープログラムとは、アマゾンが各地域の中小企業や個人に荷物の配達を委託し、委託を受けた中小企業や個人が、本業の合間に配達をするシステムです。
パートナーとなる企業は飲食店や美容院、花屋、アパレル関係のショップなど、どの企業も運送業とは無縁の業種であることがほとんどです。
荷物は決められた日にパートナー企業の事務所や店舗に届けられ、事務所や店舗から最長で約2km圏内にある配達先に配達します。
一時的に荷物を保管するスペースを確保しなければなりませんが、事務所や店舗の近くで空いた時間を活用して副収入を得ることができます。そのため、たとえば飲食店や医療関係など、午前中と午後からの営業の間に数時間空き時間があるような業種にはもってこいの取り組みと言えるでしょう。
配達方法は自由に選択でき、軽貨物車両での配達でなくても構いません。
荷物の個数も1日に約30〜50個と本業に負担をかけない程度の物量であることから、自転車や徒歩で配達している人もいます。
働くなら、アマゾンフレックスとデリプロどちらのほうがよい?
先述した通り、アマゾンフレックスは個人向けのサービスであり、法人格での契約はできません。法人としてアマゾンの仕事を請けたいならデリプロ業者と委託契約を結びましょう。
ただし、法人の運送会社ならどこでもデリプロ業者と契約できるわけではありません。コネや実績、地域性などによって契約できるかは変わってきます。そのため、まずはデリプロ案件を抱えている運送会社と個人で委託契約を結ぶことをおすすめします。
ここでは、個人事業主として仕事をする場合、アマゾンフレックスとデリプロ案件にどのような違いがあるのか、3つの側面から比較していきます。
報酬について
まずは、報酬について比較します。
自分の都合に合わせて効率よく働きたい場合はアマゾンフレックス、1日の報酬額が保証された状態で安心して働きたい人にはデリプロがおすすめです。
アマゾンフレックスはブロックごとに金額が設定されている
アマゾンフレックスの場合、報酬はいくつのブロックをこなしたかどうかで決まります。
ブロックとは働く時間帯の枠のことで、短時間のものなら2時間、長時間のものであれば8時間や12時間のオファーがあります。
働きたい時間帯のオファーを選んで受けられるため、副業として軽貨物ドライバーをしたい人や、扶養の範囲内で働きたい人にもおすすめです。
報酬は1ブロックに対していくら、というように金額が提示され、時給換算すると2,000円程度です。
報酬額の計算方法を例を挙げて紹介します。
<1日に8時間のブロックを1つこなした場合>
2,000円×8時間×1ブロック=16,000円
<1日に5時間のブロック1つと3時間ブロック1つをこなした場合>
2,000円×5時間×1ブロック+2,000円×3時間×1ブロック=16,000円
上記のように毎日8時間、かつ月に25日間稼働した場合の月収は400,000円です。
アマゾンフレックスの場合、アマゾンとの間に運送会社を挟まないためロイヤリティを引かれることがありません。
しかし、ガソリン代や車両のメンテナンスなどの経費は自分で負担する必要があります。
また、月に25日働きたいと思っても、うまくオファーが取れるとは限りません。アマゾンフレックスが稼げないと言われるのはそのためです。
初心者がはじめから希望金額を稼ぐのは難易度が高いと言えるでしょう。
デリプロ案件は日給制のところが多い
デリプロ案件の場合、報酬が日給で決まっているところが多く、1日15,000〜20,000円程度が相場です。
<日給15,000円の場合>
15,000円×25日稼働=375,000円
<日給20,000円の場合>
20,000円×25日稼働=500,000円
配達個数にかかわらず1日の報酬が決まっているため、物量が少なければ難なく上記のような金額が稼げます。
そのため、初心者や多く配れる自信がないという人は、デリプロから始めるのもよいでしょう。
しかし、物量が多ければ多いほど荷物1個あたりの単価が下がってしまうため、配達スキルが高い人からすると割に合わないと感じるかもしれません。
そのためデリプロで多く稼ぎたいという人は、できるだけ日給が高めに設定されている運送会社を選択する必要があります。
また、デリプロの場合、アマゾンフレックスのようにアマゾンと直接契約しているわけではなく、アマゾンとドライバーとの間に運送会社が入るため、その運送会社からロイヤリティが引かれます。
引かれる割合は運送会社によって異なりますが、10%〜15%程度が相場だと言われています。
アマゾンフレックス同様、ガソリン代や車両のメンテナンス代なども自分で負担しなくてはなりません。
仕事の安定性について
続いては仕事の安定性についてです。
安定感はないものの自由がきくアマゾンフレックスと、自由はないが安定感のあるデリプロ。
安定性については真逆と言えるでしょう。どちらに重きを置くかによって選択肢は異なってきます。
アマゾンフレックスで安定して稼ぐにはコツが必要
アマゾンフレックスで安定して働くためには、コンスタントにオファーを獲得する必要があります。
オファーはすべての配達員に向けて配信されるため、地域によっては1つのオファーをドライバー同士で取り合うことも……。
オファーを勝ち取るには、評価を上げて優先オファーが出るようにしたり、オファーのキャンセル待ちをしたりといった、さまざまな工夫が必要です。
評価を上げるためには、未配をしないことや不在時には顧客に対し2度連絡することを心がける、一度受けたオファーをキャンセルしないなどの努力が必要です。
評価が上がれば、特定の人に優先的に出る優先オファーが出現するようになり、通常のオファーしか見られなかったときよりもオファーが取りやすくなります。
ただそれでも、確実にオファーが取れるとは言い切れません。運やタイミングなど、努力ではどうしようもない部分もあります。
アマゾンフレックスではじめから安定して稼ぐことは至難の業でしょう。
デリプロなら安定して仕事がもらえる
デリプロの場合はアマゾンフレックスとは異なり、毎日安定して仕事がもらえます。
アマゾンフレックスのようにその都度自力で仕事を獲得するのではなく、所属する運送会社によってシフトが組まれるためです。
週5日勤務、週休2日という働き方は、個人事業主よりも会社員に近いものがあります。
せっかく独立したのだから、もっと個人事業主らしい働き方がしたいという人には不向きかもしれません。
ただ、安定した仕事と収入を得られる点や、アマゾンフレックスのようにオファーが取れないと悩まなくてよい点は大きなメリットと言えるでしょう。
仕事のきつさについて
最後は仕事のきつさについて比較します。
どちらも荷物を配達する点においては同じですが、アマゾンフレックスの場合は荷物の個数が自分で調整できないところ、デリプロは拘束時間が長いところがきついポイントです。
短時間でも多く配れる自信がある人にはアマゾンフレックス、体力があり拘束時間が長くても苦にならないという人にはデリプロが向いているでしょう。
アマゾンフレックスは荷物の個数が調整できないところがきつい
アマゾンフレックスのきつさは、時間は選べても荷物の個数を選べないことです。
たとえば6時間のブロックで荷物100個の依頼であれば、6時間で100個配達しなければならず、配達に慣れている人であれば可能でも、慣れていない人にとってはきついと感じるでしょう。
セール中などで物量が増えているときは、依頼される荷物の数も多くなる傾向にあります。
自分に配りきれない数のオファーばかりになると、オファーを受けることを躊躇ってしまい、取れるオファーも取れなくなってしまう可能性があります。
デリプロは拘束時間が長いところがきつい
デリプロで働くうえできついことといえば、拘束時間の長さが挙げられます。
所属する運送会社にもよりますが、朝は7時頃から荷物の積み込みを始め、夜の配達を終えて退勤するのは21時を超えているなどということも珍しくありません。
途中で休憩がとれればまだよいですが、要領の悪い人や配達スピードの遅い人、配達に慣れていない初心者などは、休憩をとる暇もなく忙殺されることもあります。
また、セール中などで物量が多いときなど、休憩を削って1つでも多く配達するという精神で挑まなければ、時間内に配りきれないこともあります。
そういった場合は丸1日走り回らなければならないため、人によっては体力的に続かないこともあるでしょう。
軽貨物初心者は、アマゾンデリバリーサービスパートナーの仕事から始めるのがおすすめ
アマゾンフレックスをはじめとするギグワークと呼ばれる働き方は、自由度は高いですがその分安定性が低く、軽貨物初心者にはハードルが高めです。
はじめからギグワークを選ぶよりも、一般的な運送会社と業務委託契約を結び、委託ドライバーとして働くことをおすすめします。
なかでも、アマゾンデリバリーサービスパートナーの案件は非常におすすめです。
アマゾンと直接契約しているアマゾンデリバリーサービスパートナーの案件では、ロイヤリティがないため報酬単価が高い傾向にあり、日当保証がついているため安心して働けます。
また、アマゾンの1次請けの運送会社から委託されるため、研修制度や勤務ルールが整備されています。
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