個人事業主やフリーランスとして軽貨物の事業を営む際には「黒ナンバー」が必要不可欠であることから、黒ナンバーは業務目的に取得しますが、そこで浮かぶ疑問として「黒ナンバー車はプライベートでも使ってよいのか」という点があります。
今回は、黒ナンバーはプライベートでも使えるのか使えないのかという点から、黒ナンバーの利用条件や普段使いをするメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
黒ナンバーをプライベートで使ってもよいのか?
冒頭でも記述したように、黒ナンバーは基本的に軽貨物業を営む際の業務目的として取得します。
車はプライベートの移動手段としても一般的なので、なかには黒ナンバーを業務用の車にし、プライベート用の車を所持する方もいます。
しかし、業務用の車とプライベート用の車をそれぞれ所持するとなると費用も倍かかってしまうため、2台を所持するのは簡単ではなく、黒ナンバーをプライベートでも使いたいという方も多いです。
結論から言うと、黒ナンバーはプライベートでも使用できます。しかし、いくつか注意点もあるので、利用条件を踏まえて解説していきます。
黒ナンバー軽自動車の利用条件
黒ナンバーは軽貨物事業を営む際に必要不可欠であり、取得にはいくつかの利用条件があります。
今回はその中でも特に重要な利用条件を3つ紹介します。
定員
軽貨物事業で使用されている軽バンの乗車定員人数は最大4人です。
しかし、一般的に軽貨物事業で使う軽バンはリアシートを畳んだ状態で乗車定員2名で使用します。また、乗車人数によって最大積載量が異なり、2名の時は350kg、3名の時は250kgとなっています。
また、5ナンバー(小型自動車)の後部座席を取り払って黒ナンバーを取得した際には、4名の乗車ができないので注意が必要です。
黒ナンバーの取得条件
黒ナンバーは誰でも取得できるというわけではなく、取得するためにいくつかの条件があります。
主な取得条件は次の通りです。
- 軽貨物自動車を1台以上保有している
- 営業所や休憩、睡眠施設がある
- 車庫を保有している
- 運送約款がある
- 損害賠償能力がある
それぞれ解説していきます。
軽貨物自動車を1台以上保有している
黒ナンバーを取得するためには、そのナンバーを付ける自動車が必要です。
自動車であればなんでもいいというわけではなく、車検証の用途が「貨物」となっている軽トラックや軽バンなどの軽貨物車を保有していなければいけません。
車庫、営業所、休憩・睡眠施設がある
車を保有しているだけでなく、「車庫」や「営業所」、「休憩や睡眠ができる施設」も設置しておかなければいけません。
また設置する際には、車庫から半径2km以内の場所に営業所や休憩施設を設置する必要があります。
営業所や休憩施設は適切な使用権限があれば、賃貸でも自己所有でも問いません。
運送約款がある
「運送約款」とは、企業と利用者の取引においての契約内容をあらかじめ定めた文書のことであり、主に運賃や事業者の責任に関する内容が明記されています。
損害賠償能力がある
自動車損害賠償保障法等に基づく責任保険または責任救済に加入する計画や一般自動車保険の締結など十分な損害賠償能力があることが求められます。
この時の注意点として、保険は任意保険と事業用の保険のどちらも加入が必要となります。
黒ナンバーの名義
軽貨物事業を営む際の注意点として、名義貸しがあります。
名義貸しとは、運送事業の許可を持っていない者が運送事業者の名義を利用して運送行為をおこなうことであり、名義貸しによって名義を貸す側と借りる側の双方にメリットが生じることがありますが、名義貸しは法的に禁止されている行為なので絶対にやめましょう。
黒ナンバーを普段使いするメリット・デメリット
続いて、黒ナンバーをプライベートで使用する際のメリット・デメリットについて紹介していきます。
黒ナンバーを普段使いするメリット
黒ナンバーをプライベートで使用する際の主なメリットは次の通りです。
車が1台で済む
車を保有するためには、それぞれの車を止めておく駐車場を借りなければいけません。
そのため、自家用車と事業用の車を保有する際には、2台以上の車を止めておくための駐車場を確保しなければいけないため、固定費だけでもかなりの費用がかかってしまいます。
その点、事業用とプライベートの車が1つであれば駐車場が1つで済み、固定費を抑えられるのです。
税金が安くなる
自動車にかかる税金の種類として「重量税」と「自動車税」があります。
自家用車として車を保有している時よりも事業用として車を保有している時のほうが「重量税」も「自動車税」のいずれも安くなるため、同じ車を保有していてもかかる費用は安くなります。
黒ナンバーを普段使いするデメリット
車ナンバーをプライベートで使用する際の主なデメリットは次の通りです。
任意保険料が高くなる
黒ナンバーの大きなデメリットとして挙げられるのが任意保険料の高さです。
業務用として車を使うと、運転頻度の高さから事故が起こる可能性が高くなり、任意の保険料の金額も高くなります。
扱っている保険会社の数が少ない点にも注意が必要です。
参考:黒ナンバーを黄ナンバーに戻すことは可能?
事業目的で黒ナンバーを取得した後、徐々に業務の数が減っていったり、軽貨物事業を辞めたりなどもあり得ます。
そんな時に黒ナンバーから黄色ナンバーの普通車に戻したいという方もいるでしょう。
結論からいうと、黒ナンバーから黄色ナンバーに戻すことは可能です。
個人によって金額は異なりますが、黄色ナンバーに戻すことで保険料がかなり下がるケースがあるので大きなメリットになるでしょう。
戻す際の手続きも「新しいナンバーの決定」や「貨物自動車運送事業廃止届出書」をはじめとした必要書類を提出するだけでよいので、簡単に済ませることができます。
黒ナンバーを自家用で利用する際の注意点
黒ナンバーを自家用で利用することは可能ですが、利用にあたっていくつかの注意点があります。
主な注意点は以下の3つです。
- リース契約によっては自家用で使用できない
- 最大の乗車人数と積載量が変わる
- プライベート時と業務時のガソリン代を分ける必要がある
それぞれ詳しく解説していきます。
リース契約によっては自家用で使用できない
基本的に黒ナンバーの車でもプライベートで使用できますが、リース契約の内容によってはプライベートでの使用ができないケースもあるので、契約締結時によく確認しておいたほうがよいでしょう。
最大の乗車人数と積載量が変わる
軽貨物事業を営む際に特に注意しなければいけないのが、条件によって最大の乗車人数と積載量が異なるという点です。
黒ナンバーを取得する際には、もともと4ナンバーなのか5ナンバーなのかによって、乗車人数や最大積載量が異なります。
最大乗車人数や積載量を守らなければ道路交通法違反となり、罰金や減点を食らってしまうので事前にしっかりと把握しておきましょう。
プライベート時と業務時のガソリン代を分ける必要がある
個人事業主として軽貨物事業を営む際には、ガソリン代を経費として落とせますが、プライベートで使用したガソリン代は経費で落とせません。
プライベートと事業用の車を別で所有している場合、使用したガソリンの区別がつきやすいですが、プライベートと事業用を共有している際には区別がつきにくくなってしまいます。
タイミング次第では事業で車を使用する際にはガソリンがほとんど入っておらず、毎回補充をしてからでなければ使えないというケースも起こり得ます。
主な対策法としては、プライベートと事業用のガソリンを入れる際の支払い方法を別のカードにするという方法があり、それによってレシートや領収書を管理しやすくなります。
黒ナンバーをプライベートでも使用する場合、さまざまなメリットを得られますが、注意点を把握していなければむしろデメリットのほうが大きくなってしまいます。
なかには法に触れてしまう場合もあるので、規則やルールの確認は必須です。
黒ナンバーの維持費はどれくらい?
事業用として黒ナンバーを取得した場合、その後の維持費用が発生します。
黒ナンバーを維持するために必要となる費用の主な項目は「ガソリン代」「税金」「車検費用」です。
それぞれの項目について黒ナンバーと黄色ナンバーを比較しつつ解説していきます。
一般の軽自動車との比較
それぞれの項目を一般の軽自動車と比較していきます。
ガソリン代
ガソリン代の計算方法は「ガソリンの値段×走行距離÷車両の燃費」で求められます。
例によって解説します。
軽貨物ドライバーは1か月あたり約3,000kmほど走行するとも言われているため、1リットルあたりのガソリンが150円で車両の燃費がリッター20kmとして大まかな計算をすると、「150円(ガソリンの値段)×3,000km(走行距離)×20km(燃費)」となり、
1か月あたりのガソリン代は22,500円になります。
ガソリン代で黒ナンバーと黄色ナンバーが違う点としては、経費で落とせるか落とせないかという点でしょう。
黒ナンバーのように事業目的で使用したガソリンは経費として落とせますが、プライベートで使用する黄色ナンバーは経費では落とせないので出費にも影響が出てきます。
税金
先述したように、事業用の黒ナンバー車は自家用車として使用する黄色ナンバー車よりも任意保険の金額が高くなります。
主に加入すべき保険の種類は「対人賠償保険」「対物賠償保険」「車両保険」「貨物保険」の4つがあり、事業用の黒ナンバー車の任意保険はプライベート用の黄色ナンバー車に比べて約3〜4倍ほどかかると言われています。
車検
事業用の黒ナンバー車と自家用車用の黄色ナンバー車では車検の時期が異なり、黄色ナンバーの軽自動車を新車で購入をした際の最初の車検年数は新車登録後から3年、黒ナンバーの場合は2年となっています。※2年後以降はいずれも2年ずつです。
また、黒ナンバーの場合は車検費用が5,200円かかりますが、黄色ナンバーの場合は6,600円がかかります。
軽貨物の仕事を続けるなら黒ナンバーが必要
黒ナンバーは軽貨物の事業を営む際には必要不可欠であり、黒ナンバーを保有していない者が軽貨物事業として運送行為をすると罰則対象となります。
そのため、これから個人事業主として軽貨物の仕事を営んでいこうとしている方は、しっかりと黒ナンバー取得の条件をクリアして正式に運送事業を営むべきでしょう。
軽貨物の求人は専門のサイトを利用するのがおすすめ
軽貨物の事業を営むためには黒ナンバーが必要であり、プライベートで使用することで多くのメリットを得られます。
しかし、黒ナンバーを取得できても仕事を獲得できなければ売上を伸ばすことができず、最悪の場合、事業を続けることが困難となってしまいます。
個人事業主やフリーランスで軽貨物事業を営む際には、「安定して仕事を獲得できるのか」不安に思う方も多いでしょう。
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