軽貨物配送の仕事には冷蔵・冷凍品の配送をおこなう「チルド配送」があります。
チルド配送の求人では自身の冷蔵・冷凍車を持ち込める場合が多く、車両の貸出がない案件では、ほかの軽貨物ドライバーと差別化できるでしょう。
本記事では、冷蔵冷凍車の持ち込みでできる仕事に焦点をあて、冷蔵冷凍車を取得すべきか、冷蔵冷凍車を所有しているドライバー向け求人の探し方など、具体的に解説していきます。
軽貨物の冷蔵冷凍車とは
まず、軽貨物における冷蔵冷凍車について、常温車と比較しつつ詳しく解説していきます。
冷蔵冷凍車とは、その名の通り冷蔵品や冷凍品に分類される荷物を配送できる車両です。具体的な荷物としては、主に魚や肉、アイスなどの食材が多いでしょう。
冷蔵冷凍車両の種類は「黄色ナンバーの軽車両」「750キロ積載の冷凍バン」「小型(2トン)中型」「冷凍トレーラーの大型」があります。
また、冷凍車の場合は、管理できる温度帯によって以下の4つに分けられます。
- 低温冷凍車:マイナス15度以下
- 中温冷凍車:マイナス5度前後
- 冷凍車:5度前後
- 保冷車:10度~20度
どの冷凍車を所有しているかによって、配送できる荷物に違いが出てきます。
軽貨物における常温車、冷蔵車、冷凍車の違い
軽貨物における「常温車」「冷蔵車」「冷凍車」の主な違いは以下の通りです。
価格 (新車) (中古車) (レンタル) | ナンバー | 運ぶ荷物 | 機能 | 燃費 | |
---|---|---|---|---|---|
常温車 | 100万円 40万円 月額2万円 | 4ナンバー | 一般配送物 | 保冷機能はなし | 冷蔵・冷凍車よりも燃費はよい |
冷蔵車 | 180万円 80万円 月額3万円 | 8ナンバー | 食品などの冷蔵品 | 5℃~-3℃で冷蔵 | 常温車より悪い |
冷凍車 | 220万円 100万円 月額3.5万円 | 8ナンバー | 食品などの冷凍品 | -15℃以下で冷凍 | 常温車より悪い |
参考:軽トラを保冷車に改造することは可能?
結論からいうと、通常の軽トラを改造して保冷車にすることは可能です。
しかし、改造する際には専門の架装メーカーに依頼をする必要があり、工事費として多額の資金が必要となります。
費用は工事の内容や車両の大きさにもよりますが、軽トラを保冷車に改造する場合、100万円程度かかる場合もあるので、中古の保冷車の購入と比較して検討するとよいでしょう。
冷蔵冷凍車の持ち込みでできる軽貨物の仕事の特徴
冷蔵冷凍車の軽貨物配送には相性のよい案件があります。
冷蔵冷凍車を所有しているという利点を活かしながら、うまく案件選びをすれば効率よく稼いでいけるでしょう。
ここからは、冷蔵冷凍車の持ち込みでできる仕事の特徴について解説していきます。
冷蔵冷凍車と相性のよい案件の種類は?
冷蔵冷凍車との相性がよい案件は、「定期便」「スポット便」「チャーター便」などです。
その理由として挙げられるのが「荷物タイプ」と「競合の少なさ」によるものです。
一般的な宅配であっても、食べ物や冷凍食品を配送することはありますが、全体的な荷物の割合からみると数は多くありません。
一方で、スポット便やチャーター便では冷蔵冷凍食品を扱う案件が多い割に、競合となるドライバーが少ないので仕事をとりやすいといえます。
さらに、食品の定期便に対応できるドライバーを募集している求人も多く、冷蔵冷凍車を所有していないドライバーは応募すらできない場合もあるでしょう。
このように、スポット便やチャーター便などに案件を絞り、冷蔵冷凍車を所有していることの利点をフルに活用することで、効率よく稼げます。
また、冷蔵冷凍車は常温車に保冷機能が搭載されているだけなので、保冷機能を停止すれば、一般荷物の配送にも対応できます。
冷蔵冷凍車を所有していれば、選べる案件の選択肢が多くなるといえるでしょう。
冷蔵冷凍車の案件単価
冷蔵冷凍車は常温車に比べると、案件単価が比較的高い傾向にあります。
以下、案件別に常温車と冷蔵冷凍車の報酬額の違いをまとめました。
定期案件(時給換算) | スポット・チャーター案件(時給換算) | |
---|---|---|
常温 | 1,500~2,000円 | 2,000~4,000円 |
冷蔵・冷凍 | 1,800~3,000円 | 2,500~6,000円 |
冷蔵冷凍車のほうが単価が高くなるのには、ドライバーの希少性と配送する責任の重さが関連しています。冷蔵冷凍車でしか運べない荷物、例えばアイスの場合、配送の際に溶けてしまっては商品価値が失われてしまいます。
そのため、商品管理の責任が重くなるという理由から、冷蔵冷凍車を使用する案件の報酬は高い傾向にあるのです。
冷蔵冷凍車の案件は多い?少ない?
冷蔵冷凍の案件は一般的な配送案件(宅配など)に比べると少ないといえます。
近年、フリーランスや個人事業主として軽貨物ドライバーを営む方が増えていますが、そのほとんどは常温車での軽貨物配送をおこなっています。理由としては、単純に冷蔵冷凍の案件が少ないからです。
最近では、ネットスーパーなどの注目が高まり、保冷が必要な荷物を運べるドライバーへのニーズが高まっているともいえますが、荷物全体でみると生鮮食品や冷凍食品の数はさほど多くありません。
チルド案件の数は多くないですが、それに比例してチルド案件に対応できるドライバーも多くありません。そのため、冷蔵冷凍品の配送は他のドライバーとの差別化という意味でもねらい目ともいえるでしょう。
軽貨物の冷蔵冷凍車の取得費用はどれくらい?
同じ軽貨物の車両でも、常温車と冷蔵冷凍車では取得費用に差があります。
ここでは、それぞれの取得費用の違いについて、購入とレンタルの場合に分けて解説します。
<軽貨物車両の取得費用目安>
新車 | 中古車 | レンタル | |
---|---|---|---|
常温車 | 100万円 | 40万円 | 月額2万円 |
冷蔵車 | 180万円 | 80万円 | 月額3万円 |
冷凍車 | 220万円 | 100万円 | 月額3.5万円 |
冷蔵冷凍車のレンタル費用
軽貨物車を購入しない場合、リースにて車両を借りるのが一般的です。
リースは主に短期プランと長期プランで分かれており、同じ車両を借りる際でもプランによって毎月のリース料は変わってきます。
冷蔵冷凍車も常温車と同様にリース会社からリースできますが、故障した場合の負担割合などはあらかじめしっかりと確認しておきましょう。
冷蔵冷凍車の新車購入費用
新車で冷蔵冷凍車を購入する場合、費用はメーカーや車両の大きさによって異なります。
また、どのレベルの追加オプションをつけるかによって大きく金額が異なるため、はじめからオプションをつけすぎず、後からでも付けられるものは徐々につけていくと初期費用を抑えられます。
冷蔵冷凍車の中古車購入費用
冷蔵冷凍車の中古価格は、走行距離や年式によって大きく異なります。
特に走行距離が多ければ多いほど、その後のメンテナンス費がかさむため、購入時の費用だけにとらわれず、走行距離や年式のバランスを見て購入するとよいでしょう。
宅配メインで仕事をするなら冷蔵冷凍車の購入は避けるべき?
冷蔵冷凍車を用いたチルド案件は単価や希少性が高く、おすすめしたい仕事の1つですが、軽貨物の仕事を宅配メインで取り組んでいこうと考えている方には、あまりおすすめできません。
冷蔵冷凍車を取得して軽貨物の仕事をおこなうデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 故障の可能性がある
- 代用車が少ない
- 維持費が高い
冷蔵冷凍車では荷室の温度を保つ機能が故障してしまうと、冷蔵冷凍品の配達ができなくなってしまいます。また、故障時の代用車は少なく、すぐに業務に復帰できないというケースもあるのです。
それにより、一時的に業務を請け負えず、収入が途絶えてしまうというリスクもあります。
さらに、冷蔵冷凍車は常温車に比べ、燃費が悪いです。保冷機能にガソリンを使うので、常温車よりもガソリンの減りが早くなるのは当然ですよね。
チルド案件をメインでやっていこうという場合は、冷蔵冷凍車が必須ですが、宅配メインで考えている場合、冷蔵冷凍車の機能はさほど必要ではありません。先述した通り、冷蔵冷凍車でも一般的な宅配はできますが、あらゆるリスクを鑑みると、冷蔵冷凍車は通常の宅配には向いていないといえるでしょう。
軽貨物の冷蔵冷凍車を持ち込みでできる仕事の探し方
ここからは、冷蔵冷凍車を持ち込みでできる案件の探し方について紹介していきます。
冷蔵冷凍車専門の掲示板で探す
1つ目は冷蔵冷凍専門の掲示板で探す方法です。
特にチルド案件のようにニッチな業務は、専用の掲示板が作られている場合が多く、運送会社の求人募集も散見されます。
掲示板で実際に求人を探すことは容易ですが、求人サイトのように、募集側の会社が素性を明らかにしていない場合もあるので、仕事を請けるときは請負元の下調べも欠かさないようにしましょう。
軽貨物のマッチングサービスで探す
軽貨物の仕事を気軽に探したいという方には、軽貨物のマッチングサービスがおすすめ。
サービスの利用には費用がかからず、希望に合った案件に自分の裁量で応募できます。
代表的な軽貨物のマッチングサービスには「ハコベル」「Pick Go」などがあります。マッチングサービスは、ドライバーの競争率が激しい傾向にありますが、冷蔵冷凍車所有者限定の求人などは競合が少ないため、効率よく受注できるでしょう。
軽貨物専門の求人サイトで探す
3つ目は軽貨物専門の求人サイトの利用です。
軽貨物専門の求人サイトは、軽貨物案件に特化しており、希望に合った仕事を探しやすいという点が一番のメリットです。
また、掲載業種や職種を絞っていない大手の求人サイトに比べ、軽貨物ドライバーに寄り添った、サービス設計やサイト設計がされている点も魅力の1つ。
例えば、不明瞭になりがちな報酬やロイヤリティに関する事項を、実態と齟齬がないように正しい数値で掲載させる等の取り組みをしているサイトもあります。
案件の種類も多岐にわたり、希望条件に合ったチルド案件も見つかるでしょう。
このように、軽貨物のチルド案件の探し方はさまざまですが、案件を募集している運送会社の待遇や報酬などは通常の軽貨物案件を探すときと同様に、抜かりなくチェックしておくことが大切です。