ネット上で注文すれば、外出しなくても都合のいい時間帯に商品を届けてもらえるネットスーパー。注文者側からすれば便利なシステムですが、配達する側は一体どのような仕事をしているのでしょうか。
「始めてみたいけど、きついって聞いたから不安」
「仕事内容は?誰でもできるなら始めてみたい」
この記事では、上記のような悩みを持つ軽貨物ドライバー向けに、ネットスーパーの配達に関する仕事内容やきつさなどを分かりやすく解説していきます。
ネットスーパーの配達とは
ネットスーパーの配達は文字通り、ネット上で注文を受けた商品を、スーパー側が注文者宅に配達することです。
スーパー側といってもスーパーの職員が配達するのではなく、業務委託を受けた業者が配達を請け負うことが一般的です。
ここでは、ネットスーパーの仕組みや種類を紹介します。
ネットスーパーとは
ネットスーパーは普段スーパーで買い物をするのと同じように、ネット上で買い物ができる便利なシステムです。
注文さえしておけば、あとは配達してもらうだけなので、一歩も外出することなく買い物が済みます。
最初に始めたのは西友ですが、現在では多くのスーパーがネットスーパーのシステムを取り入れています。
ネットスーパーは以下のような利用者の悩みを解消しています。
- 帰りが遅く自分で買い物に行けない
- 体調の問題で外出できない
- 水をまとめ買いするときなど、重い荷物を持つのが負担
コロナウィルス感染症の流行以降、人混みに出ることなく買い物ができることから、さらに需要が高まりました。
ネットスーパーの種類
どういったスーパーがネットスーパーのシステムを取り入れているのでしょうか。会社別にそれぞれ特徴を見ていきましょう。
西友
ネットスーパーを最初に始めたのが西友でした。配達時間は10時〜22時まで。1日に6回便があり、枠はそれぞれ2時間ごとになっています。
代引き以外の支払いで、在宅が確認できた場合にかぎり、非対面での受け渡しが可能です。在宅を確認したうえで、玄関前や宅配BOXなど指定された場所に商品を置きます。在宅が確認できなければ、不在として持ち帰らなければなりません。
一度に注文できる上限が設けられており、なかでも飲料や酒類は配達員に負担がかかることから、一度の注文に対して4ケースまでとなっています。
22時まで配達しなければならない分稼働時間は長めですが、重いものを運ぶ機会が減るという点では、他社に比べ体への負担が少ないといえるでしょう。
イオン
配達時間は11時〜20時までと時間は短めです。店舗にもよりますが、便は1日4回、枠は2〜3時間ごとになっています。
「置き楽」という置き配サービスがあるのが特徴的で、置き楽を指定されている場合は、玄関前などの指定された場所に商品を置けばOK。インターホンを押しての在宅確認も必要ありません。
店舗によっては再配達のサービスをおこなっていないところもあり、所属している店舗が再配達をおこなっていなければ、再配達依頼を気にする必要がありません。配達員としては精神的に楽でしょう。
イトーヨーカドー
配達時間は10時〜21時までで枠は2時間ごと。時間帯はネットスーパーとしては平均的ですが、1日に9便もあるため、時間指定にはより気を遣わなければならないでしょう。
もっとも配達員にとって負担となるのは、当日の最終便出発時間以内であれば、再配達の依頼を受け付けている点です。たとえ出発1分前であっても依頼があれば対応しなければならず、再配達が重なればその分夜間の配達件数が増えることになります。
しかし、以前に比べて働きやすくなった点もあります。
当初は手渡しでの受け取りを原則としており、配達員にとってはきつい部分もありましたが、現在では接触することなくお届けできる非接触お届けサービスや、置き配サービスも実施されています。
ネットスーパーの配達員の業務委託について
ネットスーパーの需要は日々高まっていますが、配達員は常に不足しており、常に募集しているような状況です。
なかには時給制のバイトもありますが、ほとんどの場合は、業務委託の形態で募集されています。
業務委託でネットスーパーの配達員になるまでの手順は、以下のとおりです。
- 運送会社の個別説明会に参加
- 契約
- 研修
- 業務開始
それぞれ説明します。
運送会社の個別説明会に参加
軽貨物業界全体の流れや配達するうえでの心構え、業務内容などの詳しい説明を受けられます。そのため、未経験の人やブランクのある人でも安心して始められます。
契約
説明を受けたあとは、双方納得のうえで契約を交わします。このとき、こちら側に不利な契約を結んでしまわないためにも、契約書をしっかり読んでサインすることが大切です。
研修
車に同乗させてもらって先輩の仕事ぶりを見学したり、実際に配達を体験したりなどして配達の基礎を学びます。
業務開始
研修で仕事の流れが身についたら、いよいよ1人で配達をスタートします。
業務委託の要件
普通自動車免許さえあればOKというところが大半です。そしてほとんどの場合、AT限定可となっています。
経験や学歴も問わず、20代〜70代までといった幅広い年代の人を募集していることが多いです。
ネットスーパーの配達はまさに誰にでも始められる仕事で、基本的に定年はありません。しかし、重い荷物を運ぶ必要があることや、車の運転が長時間にわたることなどを考えると、高齢者にはきつい仕事であるといえるでしょう。
業務委託として契約した場合の待遇
会社によっては、寮や社宅があるところ、給料の前払い制度を取り入れているところもあります。
車両があれば持ち込めますが、車両がない場合でも貸し出してもらえることが多いです。もちろんその場合は、車両のレンタル代を毎月支払っていかなくてはなりません。ガソリン代は持ち込みでもレンタルでも、基本的には自分もちです。
なお、ネットスーパーの業務委託で得た収入は、自ら確定申告をする必要があります。業務開始から1か月以内には、管轄の税務署に開業届を提出しなくてはなりません。
ネットスーパーの配達の仕事内容
ネットスーパーの配達員の仕事は、店舗スタッフから商品を受け取るところから始まります。商品を集めて梱包したり(ピッキングといいます)伝票を用意するのは、店舗スタッフの仕事です。
以下が大まかな仕事内容です。
- 商品を積み込む
- 商品を配達する
- 次の便の商品を店舗に取りに行く
- 締め作業
ネットスーパーの配達員と、通常の軽貨物配送の配達員、それぞれの仕事内容を比較してみましょう。
商品を積み込む
まず、商品を積み込むところから始まるのはどちらも同じです。それぞれ、積み方にはコツがあります。
ネットスーパー|積み方は取り出しやすさとわかりやすさを優先
ネットスーパーの場合、1回の積み込みにつき、1便分の商品を積めばよいので、軽貨物配送のように車がパンパンになってしまうことはあまりありません。
ただし、1カ所の注文数が膨大であれば、積載量が多くなることはあります。
車の中で商品が迷子になってしまったり、個口が複数あることに気づかず、あとで浮いてきてしまうことを避けるため、適当に積むのではなく取り出しやすさやわかりやすさを考えて積み込むのがポイント。
ピッキングを行う店舗スタッフの手際によっては、出発が遅れてしまう可能性もあるため、できるだけ時間のロスは少なく済むようにしておく必要があります。
通常の軽貨物配送|時間指定なしの荷物もできるだけ積んでいく
軽貨物配送の場合、荷物は仕分けチームによってすでにエリア別に分けられており、自分が担当するエリアのボックスに入れられている荷物を、端末でひとつひとつ読み込みながら積んでいきます。
ネットスーパーとは違い、8時や9時といった早い時間から配り始めないといけないため、7時頃から積み込み始めないと間に合いません。午前中指定の荷物だけでなく、時間指定なしの荷物も朝からできるだけ積んでいくのがベターです。ときには、ルームミラーで後ろが確認できないほど車がパンパンになってしまうことも。
積み方の工夫が必要なのはどちらも同じです。あとで探さなくても済むように、このあたりにこの地区のものを積む、など自分の中でルールをつくっておき、上から順にとっていけるように積んでいくのがコツです。
商品を配達する
商品を積み終わったらいよいよ配達です。どちらも時間指定を守るのが鉄則です。
ネットスーパー|すべての商品が時間指定だという意識を持つ
時間に間に合わない場合は、会社や店舗によって対応方法は異なりますが、本部に報告したり直接顧客に連絡を入れたりと、何らかの対応をする必要が生じます。これを怠るとクレームにつながるため、適切な対応が求められます。
慣れないうちは、道がわからなかったりして時間がかかることもあるでしょう。
しかし、ネットスーパーを利用する人はある程度決まっています。何度も配達を繰り返しているうちに、配達スピードも向上していきます。
また、支払い方法が代引きであれば、代金を回収する業務も発生します。常にお釣りを用意しておかなくてはいけません。
通常の軽貨物配送|時間指定のない荷物もできるだけ午前中に配りきる
軽貨物配送の場合、朝積み込んだ荷物は、時間指定のないものでも午前中にすべて配りきるのが理想です。
なぜなら、午後に荷物を多く残してしまうと、昼に到着する2便の量によっては午後からの物量がきつくなり、自力で配達しきれなくなる可能性があるからです。
ネットスーパーの場合は、空きがなくなればそれ以上注文は入りません。しかし、軽貨物配送で対応する荷物については、商品さえ欠品していなければ購入ができるので、明らかに無理な物量でも対応しなければならなくなります。
また、運送会社によっては代金の回収を委託業者にさせないところもあります。その場合は、配達だけに専念できるうえに、お釣りを用意する手間も省けます。
次の便の商品を店舗に取りに行く
積み込んだ分を配達し終えたら、次の便の分を店舗やセンターに取りに戻ります。
ネットスーパー|待たされることを計算に入れて動く
ピッキングがまだ済んでいなければ、できあがるまで待たなければなりません。
ピッキングは慣れていない人や高齢者のパートが担当していることが多く、待たされることがよくあります。このあとは1〜3の作業を便の数だけ繰り返し、その日1日分のすべての商品を配達します。
ちなみにネットスーパーの場合、不在はほとんど発生しません。万が一不在だった場合の対応は、会社や店舗によって異なります。
当日の最終便出発までであれば再配達を受け付けるところや、再配達のサービスをおこなっていないところなどさまざまです。ネットスーパーの方針によって配達員への負担も変わってきます。
通常の軽貨物配送|再配達の可能性を考えて夜間はできるだけ軽くしておく
通常の軽貨物配送は、朝、昼、夕方の3便が基本です。1便、2便の時点で夜間の荷物や翌日以降の指定の荷物も届くため、間違って配達しないように気をつけないといけません。早配もクレームになるからです。
3便目の荷物は少ないことが多いですが、不在が多いとそれがそのまま夜間の荷物に乗ってくるため、夜間の配達がきつくなります。ネットスーパーと違い不在が多いため、再配達依頼もかなり来ます。
昼は13時〜13時半頃に2便が到着するため、それまでにセンターに戻るようにし、午後からの配達に間に合うように出発します。16時〜18時の時間指定の荷物を配り終わったらまたセンターに戻り、夜間の荷物と、3便で届いた荷物を積み込んで最終の配達に出発します。
締め作業
ネットスーパーの場合は、最後の配達が完了したら店舗に戻り、以下の作業をしたらその日の作業は終了です。
- 伝票の提出
- 代引料金の精算
- 端末の締め
- オリコンの片付け
オリコンとは、商品が入っていた箱のことです。空のオリコンが車に残ったままになっているはずなので片付けます。
通常の軽貨物配送の場合は、最後の配達を終えたら、センターに戻り端末の締め作業をし、不在などで持ち帰った荷物をボックスに戻します。
ほかのエリアを配っている委託ドライバーや社員の残数を確認し、もしきつそうであれば応援に行くこともしばしばあります。
ネットスーパー配達員の1日の流れ
ネットスーパーの配達員は、以下の流れで日々業務をおこなっています。
例として西友の時間帯を挙げましたが、会社によって配送時間が異なるため、時間帯については若干前後します。
時間 | 業務 |
---|---|
9:30 | 出社 |
10:00〜22:00 | 配達 |
22:30 | 業務終了 |
ネットスーパーの配達員の収入
ネットスーパーの配達員の収入はどうなのでしょうか。日給制、歩合制など、ケース別に解説します。
地域にもよりますが、日給制だと日額12,000円〜18,000円程度であることが多いです。以下は、日給12,000円の場合の収入例です。
日額 | 月の稼働日数 | 月収 | 年収 |
---|---|---|---|
12,000円 | 25日 | 300,000円 | 3,600,000円 |
日給18,000円の場合は、以下のとおりです。
日額 | 月の稼働日数 | 月収 | 年収 |
---|---|---|---|
18,000円 | 25日 | 450,000円 | 5,400,000円 |
月収30万円では割に合わないような気がしますが、45万円もあれば、労力に見合っているといえるのではないでしょうか。
また、歩合制の場合の収入例は、以下のとおりです。
配送単価 | 配送件数 | 月の稼働日数 | 月収 | 年収 |
---|---|---|---|---|
400円/件 | 30件/1日 | 25日 | 300,000円 | 3,600,000円 |
日給12,000円と変わりませんね。以下は配送単価が500円だった場合です。
配送単価 | 配送件数 | 月の稼働日数 | 月収 | 年収 |
---|---|---|---|---|
500円/件 | 30件/1日 | 25日 | 375,000円 | 4,500,000円 |
多く配れるのであれば歩合制のほうが稼げますが、配れそうにないのであれば、日給制のほうがよいでしょう。
とはいえ、ネットスーパーの配達は通常の軽貨物配送のようなペースで配ることはできないため、収入には限界があります。
通常の軽貨物配送であれば、荷物1個の配送単価は150円〜とネットスーパーよりも安いですが、配達先がエリア内に密集していることが多く、荷物も車に100個以上積み込めるため、1日に200個以上配達する人も多くいます。
<通常の軽貨物配送の収入例>
配送単価 | 配送件数 | 月の稼働日数 | 月収 | 年収 |
---|---|---|---|---|
150円/個 | 200個/1日 | 25日 | 750,000円 | 9,000,000円 |
その分、体への負担も大きいですが、とにかく稼ぎたいという人には、通常の軽貨物配達をおすすめします。
なお、ネットスーパーの配達員で正社員という求人はほとんどありません。会社によっては社員登用制度もありますが、必ずしもなれるわけではありません。
ネットスーパーの配達のきついところ
ネットスーパーの配達員の仕事は、決して難しいものではありません。むしろ、仕事自体は単純といってよいでしょう。
しかし、きついと感じるポイントは多く、それが辞めたいという思考に結びつきやすいのも事実です。きついと感じるポイントは、以下の3点です。
- 重い荷物を運ばないといけない
- 常に時間に追われる
- 店舗と配達エリアを何度も往復する必要がある
それぞれ解説します。
重い荷物を運ばないといけない
大量のまとめ買いや、何ケースもの飲料など、重いものを運ばなくてはならないときもあります。戸建てならまだよいですが、集合住宅の上の階まで運ぶとなると一苦労です。さらにエレベーターがない場合は、かなりきつい作業になるでしょう。
実際に、飲料の配達が大変だという声は多く上がっています。
階段の昇り降りだけでも、毎日繰り返していると腰や膝を痛める原因になり得ます。とくに夏場は飲料の注文が増えますが、コロナウィルス感染症予防の観点からマスクも外せないため、体力に自信がある人でもきついと感じるかもしれません。
常に時間に追われる
配達中は時間に追われることも多いです。時間厳守なのはもちろん、交通状態に左右されたり、工事により急遽別の道を探さなければならなくなるなどの、イレギュラーも発生するためです。急いでいるときにかぎって、問い合わせの電話が入ることも。
標準的な配達個数は1便につき5〜6件なので、それだけ聞くと余裕がありそうにも思えますよね。しかし、便ごとに商品を取りに店舗に戻る必要があるため、2時間フルに使えるわけではありません。
また、店舗スタッフによるピッキングが遅れると、こちらにその皺寄せがきます。
実際に、ピッキング遅れによって時間が押すことが日常茶飯事で、毎日ストレスを抱えながら業務にあたっている配達員もなかにはいます。
時間に追われていると、人は知らず識らずのうちに疲弊していきます。繊細な人ならなおさらでしょう。毎日のことなので、すぐに焦ってしまう、テンパってしまう人にとっては、大きなストレスになるリスクがあります。
店舗と配達エリアを何度も往復する必要がある
回数は会社や店舗にもよりますが、1日に何度も便があり、その都度商品を取りに店舗に戻る必要があるため、必然的に店舗と配達エリアを何往復もすることになります。
運転時間も長くなるため、運転自体が苦になるという人にとってはきついでしょう。
ネットスーパーの配達に向いている軽貨物ドライバー
ネットスーパーの配達に向いているのはどんな人なのでしょうか。以下の3つのタイプが当てはまります。
- 力持ちの人
- ストレスに強い、テンパらない人
- 運転が苦にならない人
順に解説します。
力持ちの人
力があり、体力が有り余っている人や、トレーニングが趣味だというような人には、まさにうってつけの仕事といえるでしょう。
ネットスーパーの配達では重い荷物を運ぶ機会が多く、かなりの重労働を強いられます。
飲料のケースを集合住宅の上の階まで運ぶ際、一度に1ケースずつしか運べない場合と、一度に何ケースもまとめて運べる場合とでは、それだけで配達スピードが倍以上違ってきます。
配達スピードが上がればその分配達件数も増え、歩合制であれば大きな差となるでしょう。そのため、力自慢の人は有利です。
ストレスに強い、テンパらない人
ストレスに強く、テンパらない人にも向いています。間に合わなかったらどうしよう、と常に時間を気にしすぎるのは、精神的につらいからです。神経をすり減らしながら仕事をしていては、結果的に長続きしません。
時間をしっかり守りながらも、自分のペースを崩さず落ち着いて仕事ができる人は適任といえるでしょう。
運転が苦にならない人
店舗と配達エリアを何度も往復していると、1日でトータル80km〜100kmもの走行距離になってしまうこともあります。
そのため、長時間運転していても苦にならない人や、運転が好きという人は向いているといえます。
ネットスーパーの配達に関するルールは各社さまざま
ネットスーパーの配達に関する全体的な話をしてきましたが、働き方やルールなどはスーパーにより異なります。
自分にとって何がメリットで何がデメリットなのかを見極め、自分に合った場所で働きましょう。
また、基本的にネットスーパーの配達は運送会社からの業務委託でおこないます。運送会社によってはロイヤリティの違いなどもあるので、運送会社選びは収入にも影響を与えます。
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