昨今、ヤマト運輸に関するネガティブなニュースが相次ぎ、「何か問題があるのでは」と感じる人が増えてきました。
この記事では、ヤマト運輸が「最近おかしい」と言われる理由を探り、今後の展開を「経営状況・リストラ問題・働き方や労働状況」の3つの視点から解説します。
また、委託ドライバーにどのような影響が出るかも具体的に説明します。
ヤマト運輸の委託ドライバーとして働き続けることに不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
【おさらい】ヤマト運輸ってどんな会社?
ヤマト運輸は、物流業界のリーダー的存在といえます。
1919年に大和運輸株式会社として創業し、1983年に現在の商号であるヤマト運輸株式会社へ変更しました。
同社は、「宅急便」を中心に、法人・個人を問わず幅広い物流サービスを展開しています。
国土交通省の調査によると、令和4年度における「宅配便・メール便取扱実績」でヤマト運輸は全体の47.5%と圧倒的なシェアを誇っています。
次いで、佐川急便が27.6%、日本郵便が19.9%、福山通運2.8%、西濃運輸2.1%です。
さらに、ヤマト運輸の魅力は、業界での実績だけでなく、福利厚生の充実度にもあります。
特に、家族を持つ人が転職を検討する要因は、扶養手当が他社と比べて手厚い点にあると考えられます。
これにより、転職してヤマト運輸のドライバーになる人も多くみられます。
出典:
令和4年度宅配便等取扱実績関係資料|国土交通省
100年史|ヤマトホールディングス
ヤマト運輸が「最近おかしい」と言われている理由は?
物流業界をリードしてきたヤマト運輸ですが、最近ではネガティブなニュースを目にする機会も増えています。
ヤマト運輸で働いている人に限らず、一般の人の中にも「ヤマト運輸が最近おかしい」と感じている人が出てきています。
なぜそのように言われるのか、その原因を探ってみましょう。
ここからは、経営状況・リストラ問題・働き方や労働環境の3つの視点から詳しく解説します。
【ヤマト運輸は今後どうなる】1)経営状況について
まずは、ヤマト運輸の経営状況についてです。
「ヤマト運輸が終わっている」との声が広がる背景には、経営状況の悪化が挙げられます。
かつての業界リーダーとしての地位が揺らぎ、社内の問題が外部にも顕在化している状況だといえます。
ヤマト運輸の業績は悪化している?
ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス株式会社は、2024年4月〜6月期の連結決算で101億円の赤字を計上しました。
2023年の同時期にも1億円の赤字を記録しており、2年連続で第1四半期(4月〜6月)が赤字となっています。
これにより、業績の悪化が進み、経営危機の可能性がニュースで報じられています。
出典:
2025年3月期 第1四半期決算短信|ヤマトホールディングス
2024年3月期 第1四半期決算短信|ヤマトホールディングス
ヤマトHD2年連続最終赤字 4〜6月、値上げもコスト重荷|日本経済新聞
ヤマト運輸の経営に関する問題点は?
このような業績をはじめ、さまざまな問題を発端にヤマト運輸の経営陣に対する批判が高まっています。
原因は、以下に対して適切な対策が講じられていないという声が多いからです。
- 2024年問題として注目されるドライバーの労働時間規制強化
- インターネット通販やフリーマーケットアプリの荷物増加
2023年にはドライバーの利益効率化を目的に分業制を導入し、クール便を専門とする「クール部隊」を立ち上げました。
しかし、配達エリアの広さや冷凍庫に積みきれない荷物の量が問題となり、わずか1年で解体の方向に進んでいます。
現場の意向を無視して、上層部が机上の空論で方針を決定していると感じている現場のドライバーもいます。
事前に現場へ通知することなく業務が始まってしまい、うまくいかなければすぐに中止されるという流れが続いています。
こうしたやり方では、現場の効率化はほど遠いと言わざるを得ないでしょう。
ヤマト運輸が潰れる(なくなる)ことはある?
ヤマト運輸の経営は悪化しており、厳しい状況に置かれていることは確かです。
しかし、今後の企業全体の対応や再建策によっては、状況が好転する可能性もあります。
もし、ヤマト運輸が潰れるような事態になれば、社会的インフラを担う重要な企業であるため、その影響は非常に大きなものになるでしょう。
【ヤマト運輸は今後どうなる】2)リストラ問題について
次に、リストラ問題についてみていきましょう。
ヤマト運輸は2024年に大規模なリストラを行っています。
ここからは、その背景について解説します。
ヤマト運輸のリストラとは
ヤマト運輸のリストラ対象は、正社員や委託社員ではありません。
メール便やネコポスといった小型荷物を配達していたクロネコメイトという個人事業主や仕分け作業を行っていたパート社員の合計約3万人です。
2024年1月31日に「クロネコDM便」のサービスを終了し、一部の業務を日本郵便に移管したことが、このリストラの背景にあります。
出典:よくある質問(FAQ)|ヤマト運輸
ヤマト運輸でリストラが起きた理由
ヤマト運輸で大規模なリストラが行われた理由には、主に以下が挙げられます。
- ダイレクトメール(DM)便などの小型荷物の配達業務を日本郵便に移管したため
- メール便事業が不採算部門であったため
- インボイス制度が開始されたため
日本郵便への移管に伴い、業務を担っていた人員を削減する必要が生じました。
また、2007年に施行された「信書便法」の規制強化により、ヤマト運輸は信書を扱うことが禁止され、メール便のサービス範囲が制限されました。
この制限と日本郵便との競争激化、さらにコスト増加がメール便事業の業績悪化を招いたと考えられます。
加えて、2023年10月に導入されたインボイス制度もリストラ問題に影響しています。
メール便を担当していた多くの個人事業主は、免税事業者です。
インボイス制度によりヤマト運輸側に税務上の負担が増える懸念があったため、リストラの一因となったとされています。
ヤマト運輸では退職者も続出している?
ヤマト運輸ではリストラだけでなく、都内では20人以上の正社員ドライバーが自主退職するなど、退職者が続出しています。
主な原因は、業務効率化を目的に導入された「ドライバー分業制」です。
従来の体制では、ドライバーは常温の荷物とクール便を同時に配達していました。
しかし、新制度ではクール便専任の「クールドライバー(CD)」が広範囲にわたる配達エリアを担当しなければならなくなりました。
この制度変更により、クールドライバーは1人で大量のクール便を処理する必要があるため、荷物の品質維持が難しくなっています。
また、分業制によってドライバーの年収が100〜200万円も下がるケースもあり、ドライバーにとっては不利益が大きいといえます。
さらに、センターの集約化によって業務負担が増加し、就業規則で定められた1時間の休憩すら取れない状況も発生しています。
報告上は休憩を取ったことにする虚偽報告が常態化しているという問題もあります。
こうした厳しい労働環境により、クールドライバー制度やセンター集約化に不満が高まり、退職者が続出していると考えられます。
【ヤマト運輸は今後どうなる】3)働き方や労働状況について
近年、ヤマト運輸では働き方や労働状況に大きな変化が起きています。
具体的には、どのような変化があるのか詳しく解説します。
ヤマト運輸は働き方改革に失敗している?
ヤマト運輸では、2017年から働き方改革に取り組んでいますが、現場からは「失敗している」という声も上がっています。
ヤマト運輸の働き方改革の主な内容は、以下のとおりです。
- アンカーキャスト(AC)の人事制度を導入
- セールスドライバー(SD)の働き方・体制の刷新
2018年5月に導入されたアンカーキャスト(AC)は、午後から夜にかけての配達を行うパート社員で、主に子育て中の女性が働いています。
営業や集荷はせず配達のみを担当し、正社員ドライバーであるセールスドライバー(SD)の負担軽減が目的です。
しかし、アンカーキャストに荷物を渡すことでSDの配達量が減り、収入が伸び悩むという問題が生じています。
さらに、配達経験のないアンカーキャストが慣れるまでには時間がかかり、その間はSDがサポートする必要があります。
せっかく指導しても、独り立ちするまでに辞める人も少なくありません。
また、SDの労働時間抑制のために、出勤時間を通常の8時から9時にずらすなどの施策が行われています。
しかし、出勤時間を遅くしても荷物量は変わらないため、午前指定の荷物を短時間でこなさなければなりません。
これらの改革は、SDの長時間労働を改善することを目的としていますが、現状では逆に負担が増える結果となっています。
出典:ヤマトグループの「働き方改革」|ヤマトホールディングス株式会社
変形労働時間制を廃止
ヤマト運輸は、2023年4月に全国の営業所で変形労働時間制を一斉に廃止しました。
この決定は、同制度の運用に関する訴訟を背景に行われたものです。
変形労働時間制とは、繁忙期に労働時間を長くし、閑散期に短くすることで、全体の労働時間を調整する制度です。
厚生労働省の調査によると、日本国内の企業の59.3%が導入しており、多くの企業で採用されています。
しかし、ヤマト運輸では、労働時間の上限を超えるシフトや頻繁なシフト変更が問題視され、訴訟に発展しました。
6年にわたる裁判の末、2023年7月の和解を待たずにヤマト運輸は制度の廃止を決定。
変形労働時間制が廃止されたことにより、ドライバーは月の半分以上が1日13時間勤務などという過酷な労働環境から開放されました。
また、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて働いた場合には、時間外労働に該当し、割増残業代が適用されるようになりました。
出典:
変形労働時間制|厚生労働省 徳島労働局
令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省
雇用環境改善へ向けての取り組み
ヤマト運輸は、過酷な雇用環境を改善するための取り組みを進めています。
まず、2017年、ヤマト運輸の元ドライバー2人が未払い残業代の支払いを求めて裁判を起こし、労働基準監督署にも是正を訴えました。
その結果、ヤマト運輸は全ドライバーに対して、200億円以上の未払い残業代を支払う事態に追い込まれました。
この問題を受けて、ヤマト運輸は変形労働時間制を廃止し、法定労働時間に基づく管理体制へと移行しています。
これにより、今後新たな賃金未払い問題が発生しないことが期待されています。
さらに、2024年の春闘では、ヤマト運輸は基本賃金を前年の7,328円から8,775円に引き上げ、給与面での改善がみられました。
一方で、夏季の一時金は前年の56万5,000円に対し51万円と減少しています。
全体として、過酷な雇用環境の改善に向けた取り組みが進み、少しずつ状況が改善されているといえるでしょう。
ヤマト運輸の委託ドライバーへの今後の影響は?
ヤマト運輸の業績悪化は、委託ドライバーにも確実に影響を与えています。
では、実際にヤマト運輸の委託ドライバーにどのような影響があるのか、今後の展望を含め解説します。
荷物量が削減される
まず、委託ドライバーへの影響として考えられるのは荷物量の削減による収入低下です。
ヤマト運輸は自社ドライバーの荷物個数を確保して収益を上げようとするため、委託ドライバーへの荷物割り当てを減らしています。
2024年9月現在でも、会社や病院、学校など、1度で配達が完了する場所はヤマト運輸のドライバーが優先的に配達しています。
結果として、委託ドライバーは不在の可能性が高い個人宅を主に担当するため、配達完了が難しく、収入が伸びにくい状況です。
配達単価が引き下げられる
次に、委託ドライバーが影響を受ける要素は、配達単価の引き下げです。
ヤマト運輸の経営状況が悪化すれば、配達単価の引き下げは避けられないかもしれません。
また、委託ドライバーはあくまでヤマト運輸の下請けであり、ヤマト運輸のルールに従って配達を行う必要があります。
例えば、以前は7時など早い時間に出勤して荷物の積み込みができました。
しかし、荷物の盗難や無報酬の仕分け作業の問題から、9時出勤に変更された営業所もあります。
「9時出勤だと積み込みが遅れ、午前指定に間に合わない」という声もありますが、指示に従わないと単価が引き下げられる可能性があるため注意が必要です。
委託ドライバー数が削減される
最終的には、委託ドライバーの削減が検討されています。
これまでは荷物量が多いため外部に委託して配達していましたが、自社の利益が確保できなければ委託を減らすしかありません。
実際、ヤマト運輸の収益悪化の一因は委託費の増大です。
自社のドライバーで配達すれば、その分の委託費を削減できるため、複数の委託ドライバーがいる営業所では削減案が浮上しています。
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最近、ヤマト運輸に関するネガティブなニュースが相次ぎ、「このまま働き続けて大丈夫だろうか」と不安を感じる人も多いでしょう。
実際、ヤマト運輸の経営状況は厳しく、長年働いてきた社員がリストラされるケースも出ています。
表向きには働き方改革で労働環境が改善されたようにみえますが、委託ドライバーへの影響も避けられないかもしれません。
そのため、ヤマト運輸の委託ドライバーだけに依存せず、ほかの軽貨物案件を探すことが賢明といえるでしょう。
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