物流関係者が知っておきたいことのひとつに「3PL」というものがあります。
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)とは、物流に関する業務を自社で行わず、荷主や運送業者以外の第三者に委託することです。
3PLは国土交通省が推進する新しい物流のかたちであり、年々市場規模も広がっていますが、「3PL」と聞いてピンとこない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、3PLの意味や市場規模について解説します。
倉庫業との違いやメリット・デメリットも紹介しているため、ぜひ最後までご覧くださいね。
3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)とは?
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)とは、倉庫で行う業務や配送といった物流業務を自社で行わず、「サード・パーティ」と呼ばれる荷主企業とも運送業者とも異なる第三者に委託することです。
業務効率化や人手不足の解消などが期待できる新しい物流のスタイルで、国土交通省も推進する取り組みです。
3PLでは、企業のタイプ別にファースト・パーティ、セカンド・パーティ、サード・パーティの3つに分けられます。
それぞれの特徴や倉庫業との違いについては、以下の見出しで解説します。
物流におけるサード・パーティーとは?
3PLでは、物流関連の企業をファースト・パーティ、セカンド・パーティ、サード・パーティの3つに分類します。
そのうちサード・パーティとは、荷主企業の代わりに物流業務を行う物流専門業者のことです。
荷主のポジションになる企業をファースト・パーティ、セカンド・パーティはファースト・パーティと契約する業者のことをいい、配送業者を指すこともありますが小売業者や問屋が該当する場合もあります。
通常、ファースト・パーティとセカンド・パーティの間で物流業務は完結します。
そこにサード・パーティが加わるのが3PLです。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
ファースト・パーティ | メーカーなどの荷主企業 |
セカンド・パーティ | 配送業者や小売業者、問屋など |
サード・パーティ | 物流専門業者 |
3PLと倉庫業の違い
3PLと倉庫業の違いは、行う業務の範囲にあります。
たとえば、倉庫業の主な業務は物品の保管です。荷主企業から預かった物品を、品質を落とさずに管理することが仕事であり、物流全体を管理するものではありません。
しかし、3PLでは倉庫業のように部分的にではなく、受託した物流業務を包括的に管理します。
保管や配送、物品の受発注や返品処理、カスタマーサポートなども代行し、物流の効率化を実現します。
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)と呼ばれるのは、サード・パーティが総合的に管理(ロジスティクス)するためです。
荷主企業にとって最適といえる物流体制をつくるのが3PLです。
3PL事業とは
前述のとおり、3PL事業とは物流に関するすべての業務を第三者企業が受託する仕組みです。
ここでは、3PL事業者についてや日本の大手3PL企業を解説します。
3PL事業者とは
3PL事業者とは、3PLによって荷主企業から物流業務全般を受託した事業者のことを指します。
これまで解説してきた「サード・パーティ」が該当し、「アセット型」と「ノンアセット型」に分かれます。
アセット型、ノンアセット型の違いは以下のとおりです。
アセット型 | 倉庫やトラックを自社で保有し、それらを用いて事業を行う |
ノンアセット型 | 倉庫、トラックを持たず、外部の倉庫事業者や配送事業者をその都度活用して事業を行う |
日本の大手3PL企業
日本の大手3LP企業といえば、以下の企業が該当します。
- 日本通運
- ヤマトホールディングス
- 日本郵政
- SGホールディングス
- 商船三井
- TSネットワーク
- 日立物流
- 近鉄エクスプレス
- セイノーホールディングス
- センコーグループホールディングス
日本通運は、アセットやノウハウを豊富に保有しており、高度な3PLサービスを行っていることが特徴です。
また、ヤマトホールディングスは物流オペレーションとその管理を代行するにとどまらない、実効性のあるプロジェクト構築などを行っています。
そのほか、多くの企業が3PL事業に力を入れています。
3PL事業は国土交通省も推進している?
3PL事業は、国土交通省も推進している取り組みです。
なぜなら、物流を効率化することがCO2の削減になるほか、地域の雇用を創出するきっかけとなり、物流業界の人手不足を解消することにもつながるためです。
国土交通省では、3PL事業に対して以下のような支援を行っています。
- 人材育成
- ガイドラインの策定
- 物流総合効率化法の策定
- 物流拠点施設への税制特例などによる支援
3PL事業の取り組みを進めるため、平成16年度には国土交通省と有識者、各事業者団体をメンバーとした「3PL人材育成促進事業推進協議会」を立ち上げました。
その後は独自の教育プログラムやテキストを用いて、毎年3PL人材育成研修を行っています。
また、3PLに関する調査を定期的に行っており、その中で「3PL契約ガイドライン」や「3PL事業の成功要因・情報セキュリティガイドライン」を作成しています。
物流総合効率化法とは、物流の総合化と効率化の促進に関する法律です。
物流総合効率化法の認定を受けた事業に対し、事業立ち上げや運行にかかる経費の補助、必要な施設・設備への支援などを行います。
そのほか、物流拠点施設の災害対応能力を強化するための補助事業なども行っています。
3PLを導入するメリットとデメリット
3PLによってもたらされるメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、3PL導入による荷主側のメリットとデメリットについて解説します。
3PLのメリット
3PLのメリットとして挙げられるのは以下のとおりです。
- 自社のビジネスに集中できる
- 物流にかかるコストを削減できる
- 人手不足の解消や労働環境の改善
3PLによって荷主企業は物流に人材を割く必要がなくなるため、本来行うべき自社のビジネスに集中できるようになります。
また、自社で物流まで行う場合、配送にかかるコストはもちろん、倉庫の使用料や物流に割く人材の人件費、機械設備やシステムなどにもコストがかかるという問題がありますが、3PLを活用すれば、物流にかかるコストを全体的にカットできます。
上記によって、結果的に人手不足の解消や労働環境の改善にもつながるのもメリットといえるでしょう。
3PLのデメリット
3PLのデメリットとして挙げられるのは以下のとおりです。
- 自社に合う3PL事業者に出会えるとはかぎらない
- 現場の状況が把握しづらい
- 物流関連のノウハウが自社に蓄積しない
コスト削減にしても人手不足の解消にしても、高い効果を得られるのは自社に合う3PL事業者がいてこそです。
事業者選びに失敗してしまうと、狙いどおりの効果は得られません。
また、物流に関する業務を委託することで、現場で何が起こっているのかが把握しづらくなります。
完全に丸投げするのではなく、定期的に荷主側が確認できる体制にする必要があるでしょう。
そのほか、物流業務を外注するかたちになるため、物流関連のノウハウが自社に蓄積せず、トラブルが起こった場合に自社で解説できないというデメリットもあります。
日本の3PLの市場規模と将来性
今後、日本において3PLの市場規模はどのように変化していくのでしょうか。また、将来性はあるのでしょうか。
ここでは、3PLの将来性や今後の動向について解説します。
3PLの市場規模
3PLの市場規模は拡大し続けています。
国土交通省によると、平成18年度に調査した3PL事業の市場規模が約1兆5,315億円であるのに対し、平成23年度には2兆2,314億円と、5年間で45.7%も伸びていることがわかります。
その後も市場は伸び続け、令和2年度には3.3兆円に達しました。
ただし、伸び率は当初に比べるとゆるやかになっています。
その原因のひとつとして考えられるのはコストの上昇です。
そもそも物流コストを削減する目的で3PLを導入した荷主企業の要求に、3PL事業者が応えられなくなった結果です。
3PLの市場規模は今後も拡大していくことが予想されますが、平成18年から平成23年ごろのような爆発的な成長は今後期待できないのではないでしょうか。
出典:国際競争力強化のための我が国3PL施設整備におけるアウトソーシングの 現状及び今後の予測に関する調査│国土交通省
3PLの現状の課題と将来性
年々市場規模を広げている3PLですが、多くの問題点や課題もあります。
3PL業務を委託した荷主企業が感じた問題点や課題は以下のとおりです。
- ロジスティクスのプロを3PL事業者が有していない
- 3PL事業者からの提案やコンサルティングの提供がない
- 3PL事業者のサービスに、荷主の要望に応えられるだけの品質やマネジメント力がない
- 結局コストの削減ができていない
3PL業務を受託した物流事業者が感じた問題点や課題は以下のとおりです。
- ロジスティクスのプロが育成できていない
- 3PL事業による利益が出ていない
- 荷主企業から一方的にコストダウンを要求されている
双方に共通しているのは、「3PL事業者に十分な人材がいない」ことです。
3PL事業者では、3PLを導入したものの人材育成が間に合っておらず、「ロジスティクスのプロ」と呼べるような人材が育っていません。
また荷主企業でも、3PL事業者が有するロジスティクスのプロが十分でないと感じています。
このことから、もっとも改善を急ぐべきなのは3PLの人手不足による問題であることがわかります。
うまくロジスティクスのプロを育成し、企業の要望に応えられるだけのサービスやマネジメントを提供できれば、今後も重宝されるのではないでしょうか。
物流業界で働くなら、最新情報にアンテナを立てておこう!
3PLは国を上げて推進する取り組みであり、年々市場規模も広がっています。
しかし、メリットばかりではなくデメリットもあり、今後の課題も山積している状態です。
変化の激しい物流業界で働くなら、ラストワンマイルを担うドライバーであっても、業界がどのように変化していくのか常にアンテナを立て、業界で話題のテーマについてキャッチアップしておく必要があるでしょう。
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