2025年3月現在、海外からの観光客の増加や個別対応型の観光スタイルの需要拡大により、観光タクシードライバーが注目されています。
しかし、その魅力の裏には、体力的な負担や厳しい接客対応などの大変さも伴います。
この記事では、観光タクシードライバーの仕事内容や、仕事のきついポイントを実際の体験談を交えて紹介していきます。
また、働く前に知っておきたい疑問にもお答えするので、観光タクシードライバーを目指す方、または現在働いている方は、ぜひ参考にしてください。
観光タクシーとは
観光タクシーとは、通常のタクシーとは異なり、観光地の案内やガイドの役割を果たすサービスです。
一般的なタクシーは移動手段として利用されますが、観光タクシーは運転手が観光スポットの歴史や見どころを解説しながら、旅行者を目的地まで案内します。
予約制が基本で貸し切り利用が一般的な観光タクシーは、個人や家族旅行だけでなく、ビジネスや視察の移動手段としても活用されています。
観光タクシーの料金制度
観光タクシーの料金は一般的なタクシーのメーター制とは異なり、時間貸しや定額制が採用されています。
例えば、2025年3月現在東京のkmタクシーでは「東京観光3時間コース」が17,080円(税込)、観光タクシーたびの足の「京都市内観光3時間コース」で17,700〜23,100円と設定されています。
飛騨高山の山都タクシーでは、1時間あたり4,500〜5,400円の料金設定です。
料金は観光ルートや走行距離、サービス内容によって変動し、長時間の利用では割引が適用されることもあります。
効率的に稼げる一方で、ガイド料や高速料金が別途発生するケースもあるため、料金設定を把握しておくことが重要です。
出典:
【東京観光】充実した半日を過ごせるおすすめ観光タクシーモデルコースを紹介|kmタクシー
観光タクシーの料金|観光タクシー「たびの足」
観光タクシー|山都タクシー
【顧客向け】観光タクシーを利用するメリット・デメリット
観光タクシーの最大のメリットは、専属ドライバーによる快適な移動と観光地の詳しい解説を同時に受けられる点です。
道に迷う心配がなく、効率良く観光地を巡れるので、旅行の計画がスムーズに進みます。
また、大きな荷物を持ち歩かずに済み、利用者の希望に応じたオーダーメイドコースを利用できるため、高齢者や小さなお子様連れにも便利です。
一方で、デメリットとしては、通常のタクシーに比べて料金が高くなることやドライバーのサービスの質にばらつきがある点が挙げられます。
また、観光シーズンや繁忙期には、希望の時間帯に予約がとれない場合があります。
加えて、観光タクシーを利用する際には違法タクシー(白タク)の利用は避けることが重要です。これらの車両は無許可で営業しており、安全面や料金面で不安があります。
正規の営業許可をもったタクシーを選ぶことで、安全で安心な旅行が実現できるでしょう。
観光タクシードライバーの仕事内容・1日の流れ
観光タクシードライバーの1日のスケジュールサンプルを表にまとめました。
時間 | 活動内容 | 詳細 |
---|---|---|
8:00 | 出勤・点呼・車両点検 | ・営業所に出勤し、点呼を受ける ・車両の清掃と点検を行い、準備が整い次第出発 |
9:00 | 観光客のお迎え・観光地へ移動 | ・予約を確認し、観光客を迎えに行く ・観光地の情報やルートをお客様に説明する ・最初の観光地へ向かう |
10:00 | 観光地案内 | 観光地に到着後、観光スポットを案内し、歴史や見どころを解説 |
12:00 | 昼食休憩 | ・昼食休憩をとり、リフレッシュ ・次の観光地の準備 |
13:00 | 観光地巡り | 次の観光地へ向かい、案内を続ける |
15:00 | 観光地案内 | 最後の観光地を案内し、観光を終える |
16:30 | 観光客の送迎 | 観光終了後、観光客をホテルや駅などに送る |
17:30 | 帰社・車両整備 | 仕事を終え、車両の清掃・点検を行い帰社 |
【観光タクシードライバーのきついポイント】観光知識の学習が大変
観光タクシードライバーは、単に目的地まで送迎するだけでなく、観光ガイドとしての役割も求められます。
そのため、観光地の歴史や文化、名物、隠れた名所まで、幅広い知識を身につける必要があります。
例えば、お客様から「この神社の由来は?」「おすすめのグルメは?」といった質問を受けた際は、適切に答えられなければなりません。
さらに、観光地の最新情報やイベントも常に把握する必要があります。
運転技術に加え、こうした学習の負担を軽視していると、思った以上に大変な仕事だと感じることもあるでしょう。
観光タクシードライバーには資格が必要?
観光タクシードライバーとして活動するには、普通二種免許が必須です。
加えて、各地域やタクシー会社独自の認定資格や研修があり、取得することで観光知識や外国人対応スキルを向上できます。
また、国土交通省も外国人観光客対応ドライバーの育成を推進しており、今後の観光需要拡大に向けたスキルアップが求められています。
資格名 | 内容 |
---|---|
普通二種免許(必須) | 旅客を乗せるために必要(普通免許取得後3年以上) |
観光タクシードライバー認定資格 | タクシー会社や自治体が独自に実施する研修・試験 |
東京観光タクシードライバー認定 | 東京シティガイド検定+研修修了で認定 |
京都検定資格 | 京都の歴史や文化の知識を問う試験(1~3級) |
全国通訳案内士(任意) | 外国人向けのガイド資格(語学スキル必須) |
地域限定通訳案内士(任意) | 地域限定の観光ガイド資格(語学試験不要の場合あり) |
出典:
東京シティガイド検定|公益財団法人 東京観光財団
京都検定とは|京都商工会議所
外国人観光客対応ドライバーの育成|国土交通省
全国通訳案内士とは|国土交通省観光庁
地域通訳案内士とは|国土交通省観光庁
【観光タクシードライバーのきついポイント】体力的な負担
観光タクシードライバーは、運転だけでなく観光案内も行うため、想像以上に体力を使う仕事です。通常のタクシードライバーとは異なり、車を降りて歩きながら案内する場面も多く、特に坂道の多い観光地では負担が増します。
また、1日貸し切りが基本のため、拘束時間が長くなりがちです。
さらに、夏の炎天下や冬の寒さの中での案内業務は、体力を消耗しやすい要因となります。
こうした点を踏まえ、観光タクシードライバーには運転技術だけでなく、長時間の業務に耐えられる体力も求められます。

【観光タクシードライバーのきついポイント】繁忙期は休みがとりにくい
観光タクシードライバーは、観光シーズンやイベント時期に需要が集中するため、休みをとるのが難しくなります。
春の桜シーズン、夏休み、秋の紅葉、年末年始などは観光客が増加し、予約が殺到します。
そのため、連勤が続き、まとまった休みを確保するのが難しくなることも少なくありません。
通常のタクシードライバーは比較的自由な勤務シフトを選べる場合が多いですが、観光タクシーは事前予約制が基本のため、繁忙期にはスケジュールが詰まりやすくなります。
特に、長距離や終日貸し切りの依頼が増えると、休めるタイミングが限られてしまうでしょう。繁忙期の稼働が収入に直結するため、稼ぎ時には休みをとりづらいのが現実です。
【観光タクシードライバーのきついポイント】繁閑の差が大きく収入が不安定
観光タクシードライバーの仕事は、繁忙期と閑散期の差が大きく、収入が不安定です。
春や夏休み、年末年始などは観光客が集中し、予約が殺到するため、収入を大きく伸ばせるチャンスがあります。
しかし、逆に閑散期は予約が少なく、収入の減少は避けられません。
通常のタクシードライバーは一定の給与が支給されることが多い一方、観光タクシーは完全歩合制が一般的で、稼働時間や繁忙期にどれだけ稼げるかに依存します。
このため、繁忙期と閑散期で収入に大きなばらつきが生じ、生活の安定性が欠けることもあります。
観光タクシードライバーの年収は?
Indeedの情報によると2025年3月現在、日本での観光タクシードライバーの平均年収は約439万円です。
ただし、これは参考値であり、実際は地域や会社によって大きく異なります。
例えば、大国自動車交通株式会社では未経験者向けの給与保証制度があり、入社1年目で年収700万円を達成した実績があります。一方、日本交通株式会社では未経験者に3カ月間の月給40万円を保証し、その後は歩合給に移行します。
このように、観光タクシードライバーの収入は、給与体系や経験、個人の努力によって大きく差が生じるのが特徴です。
出典:
日本での観光タクシードライバーの給与|Indeed
大国自動車交通株式会社の転職・求人詳細|キャリアインデックス
日本交通株式会社の転職・求人情報|エン転職

【観光タクシードライバーのきついポイント】顧客対応が難しい
観光タクシードライバーは、運転だけでなく接客スキルも重要な仕事です。顧客ごとに求める対応が異なり、適度な会話のバランスをとることが求められます。
例えば、話しすぎると敬遠され、無口すぎると不満につながることもあるでしょう。
また、観光案内が期待と異なるとクレームになることがあり、ルート変更や追加サービスの要望によって料金トラブルが発生する可能性もあります。
さらに、外国人観光客との言葉の壁がストレスの原因になることも少なくありません。
特に高級観光タクシーでは、VIP対応や特別なリクエストに応じる必要があり、プレッシャーを感じる場面もあります。
「観光タクシードライバーはきつい」に関する実際の声
観光タクシードライバーの仕事は、一見華やかに思えますが、現場の声を聞くと厳しい一面も浮かび上がります。
ここでは、実際に働くドライバーたちのネガティブな声を紹介します。
観光タクシードライバーも接客では横柄な態度の顧客や過度な要求に対応することがあり、運転技術以上にストレス耐性が求められる仕事です。
また、観光業界は社会情勢の影響を受けやすく、コロナ禍では観光客が激減し、多くのドライバーが収入減に直面しました。
さらに、観光タクシードライバーとしての認定証を取得しても、集客につながるとは限らないという声もあります。
このように、接客の難しさや景気に左右される厳しさが観光タクシードライバーの仕事の大変な部分といえるでしょう。
【FAQ】観光タクシーの仕事に関するよくある質問
ここでは、観光タクシーの仕事に関するよくある質問とその回答を紹介します。
心付けはもらえる?
観光タクシードライバーは、顧客から心付け(チップ)をもらうことがあります。
ただし、日本ではチップ文化が根付いていないため、必ずもらえるわけではありません。
特に、国内の観光客は心付けを渡す習慣がほとんどないため、期待しすぎるのは禁物です。
一方、海外からの観光客はチップを渡すことに抵抗がないケースが多く、良いサービスを提供した際には感謝の気持ちとして手渡されることもあります。
心付けを受け取ること自体に問題はありませんが、過度に期待せず、あくまでサービスの一環として対応する姿勢が大切です。
なお、タクシー会社によっては、心付けの受け取りに関するルールを設けている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
顧客と一緒に食事をしてもよい?
観光タクシードライバーとして顧客と行動を共にすることはありますが、一緒に食事をするかどうかは状況によります。
顧客側から「一緒にどうですか?」と誘われることもありますが、基本的にはドライバーとしての立場を保つため、同席しないのが無難です。
ただし、長時間の貸し切りで食事休憩をとる必要がある場合、同じ店で食事をすることは珍しくありません。
その際は、一定の距離感を保ちつつ、相手に気を遣わせない対応を心がけるのがポイントです。
また、高級観光タクシーなどでは、ドライバーの立ち位置がより明確に定められている場合もあるため、会社のルールを事前に確認しておくと安心でしょう。
英語は話せたほうがよい?
観光タクシードライバーとして働くうえで、英語が話せると有利です。
近年、日本を訪れる外国人観光客は増加しており、特に都市部や観光地では英語対応が求められる場面も少なくありません。英語が話せると、外国人観光客との会話がスムーズになり、接客の幅が広がるだけでなく、指名予約につながることもあります。
ただし、必須ではないため、基本的な観光案内のフレーズを覚えておくだけでも役立ちます。
また、一部のタクシー会社では、英語研修や通訳アプリの活用を推奨している場合もあります。語学力を高めることで、観光タクシードライバーとしての市場価値を高められるでしょう。
観光タクシーの開業について
観光タクシーを開業するには、一般乗用旅客自動車運送事業の許可が必要です。無許可で観光タクシー業務を行うと、道路運送法に基づき3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方が課せられるおそれがあります。
例えば、通訳案内士が自家用車で観光案内を行う行為は、道路交通法違反に該当します。
また、観光タクシーの運営においては、法人・個人それぞれで開業に必要な許可基準が異なります。
法人の場合、営業区域の最低車両数や営業所、車庫、休憩仮眠施設の保有が求められます。
さらに、車両数に応じて運行管理者や整備管理者を確保しなければなりません。
一方、個人事業主として開業する場合、新規許可を受けるか、すでに運営している個人タクシー事業者から権利を譲り受ける譲渡譲受の2つの方法があります。
これらの許可基準を満たすことで、観光タクシー事業が合法的に運営できるようになります。
出典:
第九十六条|道路運送法
タクシー事業を始めるには|関東運輸局
法人タクシー事業を始めるには|国土交通省 関東運輸局
通訳案内士による自家用車を用いた通訳案内行為について|自動車局旅客課長

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観光タクシーは、通常のタクシーと異なり、観光地の案内やガイドの役割を果たします。
そのため、観光知識の学習や体力的な負担が伴い、繁忙期は休みがとりにくい一方で、繁閑の差が大きく収入が不安定という面もあります。
さらに、顧客対応が難しいという点も、観光タクシードライバーのきつい面です。
観光タクシードライバーに興味があるものの、自分に合うかどうか、また、どうやって職を探せばよいかが不明な方も多いでしょう。
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