軽貨物ドライバーの仕事と言えば、主に宅配がメインですが、少し変わった働き方として、「引越し事業」というものもあります。
顧客が引越しをする際に荷物の運送を担当する、引越し業者のような働き方をすることになりますが、軽貨物で引越し事業をするにあたって必要な条件などはあるのでしょうか。
この記事では、一般的な引越し業者と軽貨物の引越し業者の違い、収入面や始めるまでの手順などもあわせて解説していきます。
顧客が引越しを個人に依頼するケースとは
顧客が引越しを個人に依頼するケースとして一番多いのが、料金を安く抑えたい場合です。
引越し業者に引越しを依頼すると、どうしてもそれなりの金額がかかってしまいます。それに対して、軽貨物運送業者など個人で引越しを請け負っている事業者に依頼することで、顧客は料金を安く抑えられます。
軽貨物車では運べる量に限界があるので、単身者などが主な利用層ですが、最近では個人間での引越しマッチングサービスなども存在するので、個人での引越し業も一定の需要があると言えるでしょう。
引越し業者になるために必要な届出・許可・資格は?
専門的な引越し業者として働くためには、軽貨物で引越し業を行う場合よりも開業までのハードルが高いといえます。
ここでは引越し業者として開業するための条件や、必要な手続きなどを解説します。
引越し業者に必要な届出・許可
一般的な引越し業は軽貨物の引越し業と違い、個人事業主として開業することができません。
引越し業者として開業するには法人を設立する必要があります。
「一般貨物自動車運送事業」としての届出を地方運輸支局に提出したり、運送を行う車両を5台以上用意したりなど、クリアすべき条件がいくつもあるのです。
無許可で引越し業をやるリスク
引越し業を開業する際に、「いちいち誰かの許可を取らなくてはいけないのか」、「無許可で勝手に営業をしても問題ないのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、引越し業を無許可でやるのは立派な違反行為なので、リスクが高いといえます。
無許可での引越し業者といえば、白ナンバーの業者がいい例です。
引越し業者は運輸支局から許可を得る過程で、ナンバープレートを緑色の「緑ナンバー」へと変える必要があるため、無許可で営業しているとすぐにバレてしまいます。
ただし、白ナンバーのトラックが引越しを行っていても、例外的に違反ではないケースも存在します。
引越し業者がトラック不足で一時的にトラックをレンタルしている場合、白ナンバーのトラックで引越しを行っている場合もあるのです(当然それも許可を得た上でですが)。
また、街の便利屋さんなどが、荷物の運送ではなく、引っ越しの手伝いという建前で、引っ越し業者と似た仕事をしている場合もあります。
そういった例外を除けば、白ナンバーの引越し業者は無許可で営業を行っていることになりますが、手続きが面倒だからと言って、無許可で行うのはやめましょう。
顧客は、きちんと許可を得た引越し業者に依頼していると信じて依頼しているため、後から無許可であったことが知られると、トラブルの元になります。
また、無許可での引越し業の営業は法令に違反し、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」を課せられる可能性もあります。
許可を得るための手続きが面倒でも、きちんと必要な手順を踏んで引越し業者になったほうがよいのは明白です。
引越し業者に必要な資格
引越し業者になるうえでするべき届出を出したならば、必要な資格はこれといってありません。
ただ、当たり前ですが車の免許は必要になります。普通自動車の免許でもトラックを運転することはできますが、事業の拡大や引越しの規模によっては、中型、大型免許の取得も必要になります。
中型・大型免許の取得には15〜30万円ほど、期間としては通いなら1ヵ月前後かかってしまいますが、その分やれる仕事の幅が広がるので、時間のあるうちに免許を取っておくのも手です。
開業する前に引越し業者としてどのように事業展開していくのかイメージして、免許の取得を検討するようにしておきましょう。
引越し業者と軽貨物運送業者の違いは?
引越し業者と軽貨物運送業者の引越し業は、大まかな仕事内容は同じですが、異なる部分も多いです。
引越し業を専業にして働くのであれば、引越し業者として開業したほうがよいですが、軽貨物運送業者は配送の仕事と引っ越し業を兼業することもできます。
両者の違いを理解して、どのように働いていくかイメージしてみてください。
必要な届け出・許可の違い
引越し業者も軽貨物運送業者も、運輸支局に届け出を出すという行為自体に違いはありません。
ただし「貨物軽自動車運送事業」か「一般自動車貨物運送事業」のどちらで届出を出すかの違いがあります。
名称を見ればわかりますが、軽貨物運送業者は「貨物軽自動車運送事業」、引越し業者は「一般自動車貨物運送事業」として届出を出すことになります。
先述しましたが、運送業許可を取得するハードルは、「一般自動車貨物運送事業」のほうが高いといえます。
車両の違い
続いて車両の違いですが、軽貨物運送業者は軽トラックなどの軽貨物車を用意し、黒ナンバーをつけて営業をすることになります。
一方、引越し業者は通常の貨物自動車で、事業用である緑ナンバーを付けて営業することになります。
基本的には、どちらも一般的な車両がつける白ナンバーでの営業活動はできません。
軽貨物運送業者と違い、引越し業者は開業する際に、事業用の車両を5台以上用意する必要があるので、準備物の面でもハードルが高いといえるでしょう。
収入・支出の違い
続いて気になる収入面の話ですが、引越し業者は月給30〜35万円程が相場といわれています。年収に換算すると360〜420万円ほどが平均です。
軽貨物運送業者は引越し業だけを仕事とするのは難しいので、平均的な月収、年収を明言することはできませんが、一度の仕事の報酬で、10,000〜20,000円程の収入があります。
ただ、軽貨物の引越し業は比較的短時間で終わるのに加え、荷物を運ぶ距離や量によっても報酬が変わってきます。
ちなみに引っ越し業だけでなく、通常の配送を行う軽貨物運送業者として働いた場合、平均的な年収は400万円ほどです。
支出はどちらも車の運送業という特性上、ガソリン代やオイル交換代などの車の維持費や保険代がかかります。引越し業者は取り扱う車が多いので、その分経費も多くなるでしょう。
仕事内容の違い
最後に仕事内容の違いです。
引越しの作業を行うことに変わりはありませんが、軽貨物の引越しは基本的に1人で行うのに対し、引越し業者は2人以上の複数人で作業を行うことになります。
また、引越し業者は大型の荷物を運ぶことが多いので、体力、筋力がかなり必要になります。一方で軽貨物の引越しは、軽貨物車に載せられる物のみ運搬するため、大型の荷物は少なく、引越し業者よりは体力的にも負担が少ないでしょう。
さらに、引越し業者は荷物の運送から、家までの運び入れを全て業者の人間が行うのに対し、軽貨物の引越しは、あくまで荷物の運送のみ行うケースが多いです。
作業範囲の点については、事業者ごと異なるため、後からトラブルにならないよう明確にしておくことが大切です。
また、一度の依頼に対する仕事時間も異なります。
引越し業者は1日に1,2件の依頼を集中して行いますが、軽貨物の引越しは1つの案件が2時間ほどで終わるので、他の仕事と兼業して行うことも可能です。
軽貨物での引越し業の開業の流れ
ここからは軽貨物で引越し業を開業するために必要となる準備、仕事を始めるまでの流れを解説します。
開業すれば引越し業だけでなく、通常の配送の仕事も当然行えるようになります。
事前準備
事前準備としてまずは車両を用意しましょう。荷物の運送を行うための軽貨物車を最低でも1台用意する必要があります。
初期費用を抑えたい場合はリースがおすすめです。
開業届の提出
個人事業主が開業する際には税務署へ開業届を提出することが義務付けられています。
開業届は確定申告(青色申告)の際にも必要となります。事業開始から1ヵ月以内には提出するようにしましょう。
地方運輸支局への届出
軽貨物運送業者として働くには、地方運輸支局に「貨物軽自動車運送事業」としての届出を提出する必要があります。
必要となる書類は以下の4つです。全て用意した上で、運輸支局へ提出するようにしてください。
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 運賃料金表
- 事業用自動車等連絡書
- 車検証
黒ナンバーの取得
運輸支局から営業許可を得るために届け出を提出すると、運輸支局から連絡書が届きます。連絡書を軽自動車検査協会に提出することで、黒ナンバーと車検証を受け取ることができます。
これで軽貨物運送業者として働く準備が整いました。
案件探し
以上全ての手続きを行い、軽貨物運送業者として働く準備が整ったら、求人サイトなどから案件探しを行いましょう。
引越し業の仕事を募集している会社があれば、収入面、手数料などのチェックを行い契約を検討してみるのもよいですね。
軽貨物で引越し業だけを専業とするのは難しいので、配送の仕事も行うことになると思いますが、それぞれの報酬体系から自分が最も稼げるやり方を見つけてみてください。
軽貨物ドライバーの案件探しならハコボウズがおすすめ
今回は軽貨物ドライバーの引っ越し事業について解説しました。
軽貨物ドライバーとして仕事の幅を広げるという点では、特に準備も必要なく始められる引っ越しは魅力的です。
しかし、近年需要が増しているとはいえ、まだまだ専門の引っ越し業者に依頼する顧客が多く、作業範囲も限られていることから、引っ越し1本で軽貨物事業を進めていくのは難しいでしょう。
軽貨物ドライバーとして開業するなら、まずは配送業で稼げるようになるのが最善策です。特に安定して仕事を請けていきたい方におすすめなのが委託ドライバー。
運送会社と業務委託契約を交わすことで、自ら営業をする必要なく安定的に仕事を獲得できます。
ただし、運送会社によっては不当労働をさせたり、適切でないロイヤリティを抜いているところもあります。
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