昨今、軽貨物ドライバーの需要が高まっています。その理由は簡単で、物流業界の人手不足が要因です。今では、宅配ドライバー、企業配ドライバー、ネットスーパーなどさまざまなところで軽貨物ドライバーが活躍しています。
また、軽貨物運送業界は未経験者歓迎というところも多く、未経験から始めた人、会社員から転職した人なども多く、意外にもすぐに軽貨物ドライバーとして活躍することができます。
そんな軽貨物ドライバーの仕事を始める際に必要になるのが、軽貨物運送事業の開業届です。開業届を出すのはそれほど難しくはありません。方法さえ理解すれば、だれでも開業届を出すことは可能です。
しかし、準備するものが多いので、苦労することもあります。
そこで本記事では、
- 軽貨物運送で開業するメリット・デメリット
- 軽貨物運送事業を開業するにあたって必要なもの
- 軽貨物運送事業の開業届の書き方
- 軽貨物運送事業を開業する手続きの流れ
を解説していきます。
個人事業主として軽貨物運送事業の開業を考えている人はぜひ、参考にしてください。
軽貨物運送で開業するメリット・デメリット
軽貨物運送事業を開業するメリットとデメリットを紹介します。従業員として働くことと、経営者として働くことにはどのような違いがあるのでしょうか。
開業のメリット
- 報酬体系がかわる
- 労働時間がかわる
- 節税できる
従業員ではなくなるので、給与として会社から振り込まれる形ではなくなります。自身で業務量を調整し、コストを管理し、得られた利益が報酬となります。
また、働き方を自由に決められるため、どれだけ働いても問題ありません。やればやるほど売上につながるので、稼ぎたい人はほとんど休まずに案件対応をしています。
個人事業主になれば、経費をじょうずに使って節税できます。会社員のように給与から勝手に引かれる形ではなくなるので、経費使いのうまい方には大きなメリットでしょう。
開業のデメリット
- やることが多様になる
- 責任が増す
会社が代わりにやってくれていた諸手続きを自分でやるので、やることは多様になります。主に行政への手続きなどですが、書類仕事が苦手な方が各士業に委託することも検討しましょう。
また、会社員であれば会社が大抵の責任をもってくれます。しかし、個人事業主として動く場合には自分で責任をとるべきことが増えます。保険などを活用して、トラブルが起きないようにしておくことも大切です。
軽貨物事業を開業するにあたって必要なもの
個人事業主として軽貨物運送事業を開業するにあたって必要なものを5つにまとめました。
開業する際に必ず必要なものなので、準備するようにしましょう。
- 運転免許証
- 車両
- 車庫
- 営業所
- 保険
運転免許証
運転免許書は軽貨物車を運転するにあたって、必須な「証明書」なので絶対に取得しておきましょう。
ただ、軽貨物運送事業を開業するのであれば、「普通免許証」さえ所持していれば開業できます。
6t以上の車両を運転する可能性があれば、中型免許書が必要ですが、軽貨物車両だけであれば普通免許で可能です。
車両
車両がないと、仕事ができないので開業届を出す前には必ず準備しておきましょう。車両については、購入するケースが一般的ですが、他にも下記の方法があります。
- 新車or中古車を購入
- リース
- レンタル
軽貨物の仕事を、天職として生きていく。
という人は新車を買うのがよいでしょう。新車は初期コストとしては高いですが、維持費があまりかかりません。特に、故障が少ないので安心して使用することができます。
中古車は最初の初期費用を抑えたい人におすすめです。初期コストとしては、新車の半分で抑えることができる場合もあります。しかし、新車と比べると、ランニングコストがかかり故障も多いで注意が必要です。
運送会社から車両をレンタルするパターンは「軽貨物事業をやってみたい、でもリスクが怖い」という人におすすめです。
しかし、事故が起こった時などの費用は自己負担になる可能性があります。そこは運送会社と契約する際に、確認しましょう。
個人で軽貨物運送事業一本でやっていくのに不安を持っている方は少なくないはずです。
そんな人はまず、運送会社から車両をレンタルして始めるのが良いのではないでしょうか。
車庫
車両=車両を止める「車庫」が必要になります。車庫は必須で、運送業を始めるに当たって、陸運局に必ず「車庫証明書」を提出しなくていけません。
また普通車と違い、運送業を始めるに当たって、車両を止める車庫にはルールがあります。
・原則として営業所に併設されていること。併設できない場合は、営業所からの 距離が2キロメートルを超えないこと。
・計画する事業用自動車すべてを収容できるものであること。
・使用権原を有すること。自らが使用権原を有する旨の宣誓書が添付されていること。
・都市計画法等関係法令(農地法 4 、建築基準法等)に抵触しない旨の宣誓書の添付をすること。
関東運輸局:貨物軽自動運送事業の経営届出等の取扱いについて
ルール自体は難しく書いてあるように見えますが、実際は必要な書類があり、車庫が営業所より2km離れておらず車両を収容できれば大丈夫ということです。
営業所
軽貨物事業や運輸業を開業するに当たって「営業所」を設置することは必須です。
「営業所といっても、従業員は自分だけだから、どんな営業所でもいいのでは?」という人もいると思いますが、きちんとしたルールがあります。
・休憩・睡眠する場所があること
・乗務員が安全に運転できるように、利用できる施設であること
関東運輸局:貨物軽自動運送事業の経営届出等の取扱いについて
こちらもルールはありますが、個人で軽貨物事業を開業する場合、一般的に「ドライバーの自宅」が営業所になります。
保険
軽貨物運送事業を開業するために、車両は必要ですが、車両に付随する車両保険も必要です。
軽貨物事業を開業するために、以下の3つの保険が必要になります。
- 自賠責保険
- 任意保険
- 貨物保険
それぞれの保険について詳しく解説していきます。
自賠責保険
自賠責保険は国が指定する「絶対に加入しなくてはならない保険」です。この保険に加入せずして、運送業はできません(普通車も運転できません)。
自賠責保険は簡単にいうと、事故が起こった際、相手に怪我をさせてしまった時の補償を保証してくれる保険です。
しかし、一般的に自賠責保険だけでは全ての事故を補償することはできません。
任意保険
自賠責保険で足りない部分を補うために、入るべき保険を「任意保険」と言います。
任意保険は任意なので、「入らなくてもいい保険」です。しかし、一般的に全ての運送業の営む人は任意保険に加入しています。
- 自分が保有している車両が補償される(車両保険をつける必要あり)
- 事故で相手を死傷させてしまった場合に補償される
- 相手の車両を破損させてしまった場合に補償される
自賠責費保険は相手に怪我をさせてしまった場合の補償なので、死傷は含まれません。つまり、事故によって相手を死傷させてしまった場合、莫大な損害賠償を支払う可能性があります。
また、自賠責保険では自分の車両の補償、相手の車両の補償は一切ありません。任意保険は自賠責保険で補償されない部分を補うことが可能なので、加入すべき保険と言えるでしょう。
貨物保険(運送保険)
貨物保険(運送保険)については、これから軽貨物事業を開業する人、運送業を営む人は入るべき保険ではないでしょうか。
貨物保険は簡単に言うと「お客様からお預かりしている荷物や貨物を守る保険」です。
例えば、運送中の貨物を不慮な事故で破損してしまったとします。
その場合は荷物の賠償金は全て自己負担となります。荷物によっては高価な品物もあるので、個人事業主としてはかなりの金額を負担しなくてはいけなくなります。
そのような事故を守ってくれるのが貨物保険です。必須というわけではありませんが、運送業をするのであれば貨物保険に入ることをおすすめします。
軽貨物運送事業の開業届の書き方
軽貨物運送事業で使用する開業届は以下の4種類です。どれも堅苦しい名称で難しく感じるかもしれませんが、画像付きで一つずつ詳しく解説していきます。
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 事業用自動車等連絡書
- 運賃料金設定届出書
- 運賃料金表
「貨物軽自動車運送事業経営届出書」の記入方法
貨物軽自動車運送事業経営届出書は赤枠の部分を記載しましょう。
「事業用自動車等連絡書」の記入方法
事業用自動車等連絡書は赤枠、赤丸の部分を記載しましょう。
「運賃料金設定届出書」の記入方法
運賃料金設定届出書の書き方については埼玉運輸支局のホームページに載っている記載例を紹介します。
上記を参考に各項目を記載してください。
「運賃料金表」の記入方法
運賃料金表の書き方については千葉運輸支局のホームページに載っている記載例を紹介します。
上記を参考に各運賃を記載してください。
ここで設定した運賃に基づいて今後配送を行わなければいけないというわけではないので、上記で紹介した千葉運輸支局の数字と同じものを作っても問題はありません。
軽貨物運送事業を開業する方法
個人事業主として軽貨物運送事業を開業する方法は以下の通りです。
- 車両を購入・レンタル
- 運輸支局に指定された書類を提出
- 軽自動車検査協会に黄色のナンバープレートと書類を提出
- 黒ナンバーを取得
- 個人事業主としての開業
軽貨物運送事業を開業する手続き
それでは実際に軽貨物運送事業を開業する際の具体的な手続きの流れについて解説していきます。
まずは軽貨物車両と駐車場を確保するところからです。
個人で軽貨物事業を行う場合、軽バンが良いでしょう。軽バンは普通免許でも運転が可能であり、荷物も入り、小回りが良い車両です。
軽貨物事業を初めてする人でも簡単に運転できるので、おすすめの車両です。
自動車税も安く、4,000円/年ほどです。
車両と駐車場を確保したら、次はいよいよ軽貨物運送事業の開業です。
個人事業主として軽貨物運送事業を開業するためには、指定された運輸支局に行き、上記で解説した4種の書類を提出する必要があります。
これらを指定された運輸支局の貨物担当窓口へ提出してください。
手続きが終わると受理印が押された事業用自動車等連絡所がもらえますので、後ほどこの控えを軽自動車検査協会に提出します。
また、印鑑も必要になるので忘れずに持っていくようにしましょう。
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書(提出用・控え用の計2部)
- 事業用自動車等連絡書(提出用・控え用の計2部)
- 運賃料金設定届出書及び運賃料金表
- 車検証のコピー
- 印鑑
最後に運輸支局にて受け取った書類を持って軽自動車検査協会に行きましょう。
- 運輸支局で受け取った事業用自動車等連絡書の控え(受理印が押されたもの)
- 住民票
- 用意した軽貨物車両に元々ついている黄色のナンバープレート
上記の書類と黄色のナンバープレートを持って軽自動車検査協会で「黒ナンバープレートの取得手続き」をしましょう。
この手続きが終了すれば黒のナンバープレートが交付され、自身の車両に取り付けることで晴れて軽貨物運送事業を始めることができます。
ここまでで軽貨物運送事業の開業手続きは完了しましたが、個人事業主としての開業届も忘れずに届け出るようにしましょう。
個人事業主として開業するためには、税務署に「開業届」を提出しましょう。こちらは軽貨物運送事業を始めて、1ヶ月以内がルールと言われています。
個人事業主としての開業届を出していないと青色申告ができず、最大で65万円の控除が受けられなくなります。
上の図を参考に、記載すれば問題ないでしょう。なお、このフォーマットは国税庁の公式ホームページからダウンロードできるので、記載してから最寄りの税務署に提出するのが楽です。
軽貨物運送事業の開業までにかかる費用と時間
コストがそこまで大きくないのが軽貨物運送事業の魅力のひとつ。
とはいえ開業までには、金銭的にも時間的にもさまざまなコストがかかります。
開業にかかる費用
開業においてかかる費用の大半は、車両代です。中古車で50万円、新車で250万円が目安でしょう。
そのほかにも黒ナンバーの取得費用や保険料なども発生します。詳しくは以下の記事を参考にしてくださいね。
開業にかかる時間
ここまで紹介した書類の手配や各種手続きにかかる時間が、開業までの時間です。
取得した黒ナンバーの取り付けまでを時間にいれたとしても、早い人なら1日で終わることもあります。
軽貨物運送事業の開業は意外と簡単!
個人事業主として軽貨物運送事業を開業する方法は理解していただけたでしょうか?
そんなにハードルは高くなく、会社員からすぐに転職することも可能です。
軽貨物ドライバーの仕事は頑張ったらしっかりと収入を得ることができ、なおかつ自分のペースで仕事ができる点は大きな魅力でもあります。
これから開業を考えている方は、この記事を参考に事前準備をしっかりと行い、開業準備をスムーズに進められるといいですね。
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