日本では2024年4月よりライドシェアが部分的に解禁され、ニュースなどでサービス拡大の話題を目にする機会が増えています。
気軽に始められる副業としても注目されている日本版ライドシェアですが、実際にどれくらい稼げるのかは多くの方が気になるところでしょう。
この記事では、まず日本と海外のライドシェアの違いや日本でライドシェアが長く禁止されていた理由、そして部分的に解禁されるに至った経緯を解説します。
また、日本版ライドシェアドライバーになるための条件や収入、現状では日本版ライドシェアが海外ほど稼げない理由や今後の展望についても考察します。
ライドシェアサービスに興味がある方や現役タクシー運転手の方は、ぜひ参考にしてください。
ライドシェアとは
ライドシェアとは、一般のドライバーが自家用車で有償の送迎サービスを提供できる仕組みを指します。
この事業形態は、2009年にアメリカのウーバー・テクノロジーズ(Uber)がスタートさせてから急速に広まりました。
現在、海外のライドシェアサービスは通常、配車プラットフォーム事業者によって運営されています。
利用者は24時間いつでもスマートフォンのアプリから車を手配できる体制が整えられており、ドライバーとマッチングされる仕組みです。
また、料金は需給バランスに応じて変動するのが一般的で、混雑時やピークタイムには料金が高くなることもあります。
出典:市民権を得てきた米国ライドシェア・サービス|Nomura Research Institute(NRI)
日本でのライドシェアについて
日本でのライドシェアは、海外のものとは異なり、タクシー会社が主体となって運営されています。
ライドシェアの運行は、国土交通省が定める「タクシーが不足する時間帯」のみに限定されています。
タクシー配車アプリから車を呼び出せる点は海外と同じですが、料金は通常のタクシー料金と同水準で提供され、変動料金制は採用されていません。
そのため、ライドシェアといっても日本版のライドシェアは、一般的なタクシーサービスに近い性質をもっているといえます。
日本でのライドシェアが禁止されていたのはなぜ?
日本でライドシェアが広く普及しない理由には、まず道路運送法第78条の規制があります。
この法律では、一般の自家用車を有償で運送に使用することを原則として禁止しており、特例として以下のような場合のみ許可されています。
- 災害時の緊急対応
- 特定非営利活動法人(NPO)などが地域住民や観光客の移動手段として提供する場合
- 公共の福祉を確保するため、国土交通大臣の許可を受け、特定の地域や期間に限定する場合
つまり、国土交通大臣の許可がなければ、一般車による有償の運送は認められません。
また、ライドシェアには安全面への懸念もあります。
運転技術やドライバーの健康管理が徹底されないこと、アルコールチェックの不備、さらに乗客への暴行や誘拐などの犯罪リスクです。
さらに、万が一事故が発生した際の責任の所在が不明確であることも問題視されています。
加えて、日本のタクシー業界には長年にわたる利権が絡んでおり、新規参入が困難な状況も背景にあります。
こうした理由から、日本でのライドシェア本格導入には慎重な姿勢が続いているといえるでしょう。
出典:第七十八条|道路運送法
日本でもライドシェアが解禁されたのはなぜ?
日本では長年にわたり、ライドシェアが道路運送法によって禁止されてきました。
しかし、2024年4月より限定的にライドシェアが解禁され、その背景にはいくつかの理由が挙げられます。
まず、タクシー業界の人手不足が深刻化しています。タクシードライバーの高齢化が進み、コロナ禍で多くの高齢ドライバーが離職したことで、業界内の人材はさらに不足しました。
一方で、国内には免許を返納した高齢者や公共交通機関が充実していない地域住民、外国人観光客など、タクシーの需要は根強く存在しています。
また、海外でライドシェアが大きな人気を博していることも影響しています。
特に観光客にとってはスマートフォンで簡単に利用できるライドシェアは利便性が高く、日本でもそのニーズに対応するため、解禁への動きが進みました。
こうした国内外の状況が重なり、日本でもライドシェアを限定的に解禁する必要性が高まったといえるでしょう。
日本版ライドシェアの仕組み
日本版ライドシェアには「自家用車活用事業」と「自家用有償旅客運送制度」の2つの形式があります。
自家用車活用事業の主な目的は、都市部でのタクシー不足を補うことです。
国土交通省の営業許可を受けたタクシー会社が運営主体となり、一般ドライバーが自家用車で有償送迎しています。
日本では、タクシー会社が運行管理を担い、その権利も保持している点が特徴です。
このため、日本版ライドシェアは、公共性や安全性を重視し、タクシー業界が主体となる独自の仕組みとして運用されています。
一方、自家用有償旅客運送制度は、自治体やNPOが運営主体となり、地方や過疎地での移動手段として活用されています。
特に公共交通機関が不足している地域で、地域住民の利便性を向上させるために運営されている点が特徴です。
出典:交通政策審議会陸上交通分科会 自動車部会(第7回)説明資料|国土交通省 物流・自動車局
日本版ライドシェアドライバーになるための条件
ここでは、日本独自の仕組みである「日本版ライドシェアドライバー」になるための3つの条件を紹介します。
普通自動車運転免許の取得から1年以上経過していること
ライドシェアドライバーになるには、普通自動車運転免許(第一種運転免許)を取得し、少なくとも1年以上経過していなければなりません。
通常、旅客を乗せる場合には二種免許が必要ですが、日本版ライドシェアのドライバーは二種免許の取得は不要です。
ただしタクシー会社によっては、「直近2年間無事故」や「直近2年間免停なし」などの条件が設定されている場合があります。
タクシー会社に雇用されていること
日本版ライドシェアはタクシー会社の管理下で運営されており、ドライバーはタクシー会社に雇用されて働く必要があります。
個人事業主や業務委託としての契約は認められておらず、雇用形態はタクシー会社との直接契約です。
ただし、雇用形態は正社員に限らず、パート勤務での参加も可能で、柔軟な働き方が選べます。
タクシー会社が実施する研修を受講すること
日本版ライドシェアドライバーとして働くには、タクシー会社が実施する指定の研修や講習の受講が求められます。
例えば、日本交通株式会社では、第一種免許を取得して3年以上経過している場合、オンライン6時間と対面4時間の合計10時間の研修が必要です。
また、日の丸交通株式会社では、最大10日間の初回研修に加え、定期的な研修も実施されています。
研修内容や時間は会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
参考:
ライドシェアドライバー募集|日本交通株式会社
ライドシェアドライバー募集|日の丸交通株式会社
ライドシェアではどれくらい稼げる?
「日本版ライドシェア」は、新たな収入源として多くの人々の注目を集めていますが、具体的にどれくらい稼げるのでしょうか。
副業として取り組む場合はどれほどのメリットがあるのか、本業としてやっていくことは可能なのか、それぞれの側面についてみていきましょう。
ライドシェアの料金設定について
ライドシェアの料金設定は、基本的にタクシーと同等です。
配車アプリを通じて、乗車場所と目的地を指定すると、事前に運賃が算出される仕組みになっています。
この運賃は、タクシーの初乗り運賃や走行距離、所要時間に基づいて計算されるため、地域によって異なることがあります。
海外では需要と供給に応じて料金が変動する「サージプライシング」が一般的ですが、日本ではタクシーと同額で固定されています。
なお、2024年12月には「新たなダイナミックプライシング」などの運賃料金の多様化について検討予定のため、料金が変更される可能性もあります。
出典:タクシー及び日本版ライドシェアにおける運賃・料金の多様化検討会|国土交通省 物流・自動車局
ライドシェアドライバーの報酬体系
2024年11月現在、日本のライドシェアドライバーの報酬体系は、主に固定給と歩合制の組み合わせで構成されています。
基本給は、一般的に時給1,200円〜1,400円程度です。
地域によって異なっており、特に東京での相場は時給1,400円となっています。
さらに、ドライバーは運行した時間や距離、乗客数に応じて歩合が支払われ、ガソリン代やアプリ使用料などの手当も支給されることがあります。
このように、ライドシェアドライバーの収入は基本給と各種手当で構成され、働く地域や業務内容によって変動します。
月収平均は5万円程度
日本のライドシェアドライバーの月収は、基本的に5万円前後が目安とされています。
1日の稼ぎは8,000円〜1万円程度で、平均的な乗車件数は4〜5件ほどです。
例えば、土日に1日8時間ほど副業として働いた場合、月収は約44,800円に加えて歩合給が見込まれるなどです。
このような働き方は、副業としてスキマ時間を活用できる利点があり、特に副収入を希望する方に注目されています。
ただし、2024年11月現在はライドシェアドライバーには週20時間未満の勤務が求められています。一部報道によると、タクシー事業者が社会保険の適用を避けるための制限という意見もあります。
多くのドライバーがこの時間制限に縛られているため、十分な収入を得るのが難しい状況です。
また、アメリカのUberドライバーと比較すると、日本のドライバーの収入は相対的に低い傾向にあります。
ライドシェアドライバーの「稼ぎ」に関する実際の声
ここでは、ライドシェアドライバーの「収入」について、実際の声を紹介します。
ライドシェアで日給4万円はあり得ないって言われたので証拠出します💪
とある金曜日の売上67335円です。
ここから消費税を抜いて、残りの70%がドライバーの報酬(給料)になります。
なんで計算式は
67335÷1.1×0.7=42849円
なんで日給4万円超えますね✌️#ライドシェア#事実 pic.twitter.com/uNAOcdPt5u— デリヘルドライバー (@driver_deri) October 31, 2024
タクシー会社に自分の車を献上して、タクシー会社に所属して、週に20時間限定で、人を運んで稼げると記載したほうがわかり易い。
マイカーで人を運んで稼げる「日本型ライドシェア」ドライバー先行募集–副業可のパートタイム雇用https://t.co/63O2xdxYQi
— ボビー@オーストラリアのウーバードライバー (@uberseikatu) January 31, 2024
日本でも「ライドシェア」は始まっている…でも「見たことない」し「稼げない」らしい 何が起きている?
「日本版ライドシェア」が東京都内で始まって4カ月。首都圏でも神奈川や埼玉、千葉の都市部へと運行地域が広がっているが、なぜか存在感は薄い。https://t.co/zOmgA8946E
— タクシーニュース (@Taxi_News_) August 8, 2024
ライドシェア思ったより稼げなくて草ww
タクシー会社が売り上げ半分持っていかれる
実際に稼げる収入は
フーデリーバイクとほぼ同じ金額だってさーやっぱウーバーイーツみたいにならんと
稼げないかー— Power@東京🐸メイン配達員🚴♀️ (@powertokyo11) September 21, 2024
あるドライバーの声では、8時間40分の稼働で売り上げが67,335円となり、手取りで日給4万円を超えた例もあります。
しかし、週20時間以上の稼働はできないため、思ったほど稼げないとの声も少なくありません。
また、売り上げの半分をタクシー会社に引かれる場合もあることから、フードデリバリーと比べて必ずしもライドシェアのほうが稼げるとはいえないようです。
日本版ライドシェアでは海外ほど稼げない理由
日本版ライドシェアでは、海外ほど稼ぎにくいと言われています。
ここでは、その3つの理由について解説します。
解禁地域が限られているから
2024年4月1日から、ライドシェアは一部の地域で解禁されましたが、2024年11月時点では全国展開には至っていません。
まず解禁されたのは、以下の4区域です。
- 東京都(23区・武蔵野市・三鷹市)
- 神奈川(横浜市・川崎市・横須賀市など)
- 愛知県(名古屋市・瀬戸市・日進市など)
- 京都(京都市・宇治市・長岡京市など)
その後、5月には札幌市・仙台市・さいたま市・千葉市・大阪市・神戸市・広島市・福岡市の8区域が追加されました。
しかし、依然として運行区域は限定的です。
このため、日本版ライドシェアは全国的なサービスとして広がっておらず、地域によっては稼げる機会が限られる状況が続いています。
出典:4月解禁ライドシェア、料金はタクシーと同じ 地域や時間帯も制限…浸透には時間|産経新聞
運行時間が制限されているから
日本のライドシェアは、特定の曜日や時間帯に運行が制限されており、自由に稼働できるわけではありません。
国土交通省は日本版ライドシェアを「タクシー運行の補完」と位置付けているため、都内では以下のように運行時間が限定されています。
曜日 | 運行時間 |
---|---|
月曜日~木曜日 | 7時~10時台まで |
金曜日 | 7時~10時台まで |
16時~19時台まで | |
土曜日 | 0時~4時台まで |
16時~19時台まで | |
日曜日 | 10時~13時台まで |
このように、特定の時間帯でしか稼働できないため、通常のタクシーのように長時間をかけて稼ぐのが難しい状況です。
また、先述のように運行地域が限られていることもあり、安定した収入を得るためには、ほかの仕事と組み合わせるなどの工夫が必要です。
出典:「ライドシェア」都内で始まる 料金は?他の地域ではいつから?|NHK
稼働台数が制限されているから
日本のライドシェアには、稼働する台数にも制限があります。
例えば、大阪エリアでは午前0時〜4時の稼働台数は最大420台、東京都内でも時間帯ごとに細かく上限が設定されています。
また、運転時や酷暑時(気温35℃以上)、イベント開催時には供給車両数・時間帯拡充などの緩和条件もありますが、このような例外措置はあくまで一時的です。
こうした制約の多さから、需要に応じて柔軟に稼働するのが難しく、収入機会が限られているのが現状です。
出典:
日本版ライドシェアのバージョンアップとりまとめ(第1弾)|国土交通省 物流・自動車局
ライドシェア、大阪は金曜・土曜限定で運行 国交省方針|日本経済新聞
今後、日本でも海外のライドシェアのように稼げるようになるのか
日本のライドシェアは、現在多くの制約が設けられており、現時点では海外のように自由な形で稼ぐことは難しい状況です。
しかし、全面解禁を支持する声は徐々に高まっており、ライドシェアの規制緩和を求める政治家も少なくありません。
もし全面解禁が実現すれば、アプリ事業者や海外の大手ライドシェア企業(アメリカのUber・中国のDiDiなど)が日本市場に本格参入し、より高収入を目指せる環境が整う可能性もあります。
ただし、全面解禁にはタクシー業界からの反発が予想されており、参入を可能にするための法改正や新しい法律の制定も必要です。
自民党の一部や公明党は慎重な立場を取っているため、すぐの実現は難しいかもしれません。
2024年11月時点では政権が不安定な状況にあるうえ、新たな経済政策を推進するためには強いリーダーシップが問われます。
自由度が高まり、海外のライドシェアに近い環境が整えば、より収入を得られる可能性は広がるでしょう。
とはいえ、現段階では課題が多く、実現には時間がかかると予想されます。
参考:
規制改革と自民党総裁選:ライドシェア全面解禁が試金石に:小泉政権以来の規制改革の大きな流れを作れるか|NRI
小泉進次郎氏、公約に「ライドシェア全面解禁」日本でもウーバー利用可能に|自動運転LAB
全面解禁の可否、来年以降 ライドシェアで河野担当相|高知新聞社
自由にガッツリ稼ぎたい方には軽貨物ドライバーもおすすめ
手の空いた時間で月5万円程度の収入があればよいと考える方には、ライドシェアも適した選択肢です。
しかし、2024年11月時点では、日本のライドシェアで大きく稼ぐのは難しく、本業にするのは現実的ではありません。
フードデリバリーなどと掛け持ちして収入を補う方法もありますが、注文がなければ報酬も発生しないため、不安定な収入に悩む方も多いでしょう。
一方、規制に縛られず、自由にしっかり稼ぎたい方には「軽貨物ドライバー」がおすすめです。
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