昨今、フードデリバリーサービスが普及し、多くの飲食店がさまざまな出前ツールやサービスを利用しています。
軽貨物ドライバーとしてフードデリバリーの仕事をこなしている人も多いでしょう。
代表的なフードデリバリーサービスの1つに「出前館」があります。条件をクリアすれば誰でも出前館の配達員になれますが、軽貨物車両を利用して出前館の配達をする際はいくつかの注意点があります。
この記事では、軽貨物ドライバーの方が出前館の配達をする際のメリットやデメリット、車配達に関する条件や注意点を踏まえて、出前館の配達の始め方について解説していきます。
出前館は車で配達してもOK?
フードデリバリーを利用したことがある方であれば、自転車やバイクで配達しているイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし、なかには自転車やバイクの本体、免許を持っておらず車のほうが都合がよいという方もいます。
出前館の配達は車を使用してもよいのでしょうか。ここでは出前館は車での配達が可能かどうかについて解説していきます。
出前館は登録すれば車両持ち込みOK!
結論からいうと、出前館の配達は登録していれば車での配達が可能です。
これはバイクや自転車を持っていない人からすれば嬉しいでしょう。しかし、車で配達をするにはいくつかの条件があり、それらを満たす必要があります。
車で配達する際の条件については、次の章で詳しく解説していきます。
出前館の車配達に関する条件
出前館の配達を車でおこなうには、「軽貨物車両であること」と「黒ナンバーを取得していること」の2つの条件を満たす必要があります。
それぞれ解説していきます。
まず、軽貨物車両についてですが、軽貨物車両の条件は国土交通省で下記のように定められています。
- 物品積載設備の床面積
- 自動車の物品積載設備を最大に利用した場合において物品積載設備の床面積が0.6㎡以上あること
- 自動車の物品積載設備を最大に利用した場合において物品積載設備の床面積が0.6㎡以上あること
- 物品積載設備の床面積と乗車設備の床面積
- 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備の床面積が、この場合の乗車設備の床面積より大きいこと
- 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備の床面積が、この場合の乗車設備の床面積より大きいこと
- 積載貨物の重量と乗車人員の重量
- 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備に積載し得る貨物の重量が、この場合の乗車設備に乗車し得る人員の重量より大きいこと
- 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備に積載し得る貨物の重量が、この場合の乗車設備に乗車し得る人員の重量より大きいこと
- 物品の積載口
- 物品積載設備が屋根及び側壁(簡易な幌によるものであって、その構造上屋根及び側壁と認められないものを除く。)によっておおわれている自動車にあってはその側面又は後面に開口部の縦及び横の有効長さがそれぞれ縦600mm横800mm以上で、かつ、鉛直面(後面の開口部にあっては車両中心線に直角なもの、側面の開口部にあっては車両中心線に平行なものをいう。)への投影面積が0.48㎡以上の大きさの物品積卸口を備えたものであること
(引用:国土交通省「自動車の用途等の区分について 貨物自動車等」)
このように、軽貨物車両は国によって基準が定められており「軽バン」や「軽トラ」がこれにあたります。
次に黒ナンバーです。黒ナンバーとは黒地に黄色い文字で書かれているナンバープレートのことであり、運輸支局や軽自動車検査協会にて手続きや書類提出をおこなうことで取得できます。
黒ナンバーを取得するには下記の条件を満たしている必要があります。
- 営業所もしくは休憩所や睡眠施設があり、2km以内に車庫がある
- 1台以上の車両を保有している
- 運送約款がある
- 損害賠償能力がある
また、黒ナンバー取得に関する主な流れや提出書類は、国土交通省が公開している「軽トラック、黒ナンバーの運送事業を始めるには」から確認できます。
主にこの2点が車を活用して出前館で配達する条件であり、軽貨物自動車以外の車両や黒ナンバーを取得していない場合は認められないので、事前に確認しておきましょう。
車両の変更やリースは可能?
出前館の配達で使用する車両の変更やリースは可能です。
また、車両の変更は公式フォームやアプリからできますが、出前館の場合は「変更」というよりも「複数車両登録」という形式をとっています。
そのため、出前館の配達は「車とバイク」「車と自転車」のように、複数車両の登録も可能なのです。
また、車を登録する際は保険証明書の提出が求められますが、リースで車両を用意する場合は、リース契約の契約書を提出すれば問題ありません。
ただし、車両追加を申請したらすぐに使えるというわけではないので、余裕をもって申請しましょう。
出前館にバレるとやばい。車で配達の違反行為とは
次は、出前館の車配達をおこなう上での違反行為についてです。
車で配達をおこなうには先述したような条件はもちろん、指定のルールを守る必要があり、それらに違反するとペナルティを受ける場合もあります。
白ナンバーでの配達はNG
出前館での主な違反行為は「白ナンバーでの配達」です。白ナンバーとは、私たちが私生活で使用する白地に緑色の文字で書かれているナンバープレートを指します。
白ナンバーは自家用車としての利用を目的として登録している車両を指すため、白ナンバーで配達業務をおこなうと犯罪行為に該当してしまうのです。
なかには「車で動き回ってるし監視がいるわけじゃないからバレないだろう」と思う方もいるかもしれませんが、白ナンバーで配達している現場を一般人に通報されてバレてしまう可能性もゼロではありません。
そのため、白ナンバーでの配達は出前館の仕事にかかわらず厳禁です。
その他の違反行為
出前館の車使用に関するそのほかの違反行為には以下のようなものがあります。
- 危険運転や私有地への駐車
- 運転免許証や運転に必要な書類等を常備せず運転
- マニュアルの文書やプログラムなど出前館に著作権があるものの盗作
- SNSで出前館に悪い影響を与える発信
出前館は車やバイク、自転車などの車両を利用して配達するサービスのため、道路交通法には厳しくなっています。
例えば届け先の顧客がマンションに住んでいる場合、「5分だけ路上に停めておこう」と軽い気持ちで駐車していると、部屋まで届ける間に違法駐車とみなされることもあるので注意しましょう。
無許可で車配達していることが出前館にバレたらどうなる?
出前館の配達をおこなう際は、配達用車両の登録が必要です。そのため、登録をしていない車両で配達をすることは違反行為にあたります。
もし出前館に無許可の車配達がバレた際は「契約解除」「アカウント停止」「アカウント削除」などのペナルティが課せられる可能性もあります。
出前館の「出前館配達ドライバー規約」に細かなルールが載っていますので、一度目を通しておきましょう。
出前館の配達を車でおこなうメリット・デメリット
ここでは、出前館の配達を車でおこなうこメリットとデメリットについて紹介していきます。
車で配達するメリット
出前館の配達を車でおこなう主なメリットは以下の通りです。
- 天候に関係なく配達できる
- バイクや自転車よりも疲れにくい
- 配達の単価が高い
- 多くの商品を配達できる
このように、車を活用することでバイクや自転車に比べて配達が楽になるというメリットがあります。
車で配達するデメリット
車で配達するデメリットは以下のような点です。
- ガソリンなどの維持費が高い
- 渋滞に引っかかりやすい
- 駐車に困るときがある
車を利用するとバイクに比べてガソリンの消費量が増えたり、駐車に関する問題が発生しやすくなります。
出前館は車で配達したほうが稼げる?
車のほうが自転車やバイクより稼ぎやすいとは一概にはいえません。
たしかに、スピード感や配達できる量に関しては車のほうが便利ですが、都心部などは道が細かったり、交通規制が厳しい場所に関しては、車よりもバイクや自転車のほうが動きやすくなります。
また、車での配達はガソリン代にくわえて駐車場代などがかかる場合もあるので、売上が高くても経費で手取り額が減ってしまいます。
車配達で稼ぐには、雨天時や大量注文など自転車やバイクでの配達が苦手とする注文を積極的にこなしていく必要があるでしょう。
【軽貨物ドライバー向け】出前館配達員の始め方・登録方法
ここからは、軽貨物ドライバーが実際に出前館の配達員を始める方法を解説していきます。
軽貨物車両登録の方法
まずはじめに、配達に使用する車両の登録をおこないます。先述したように車を利用する場合は、事前に軽貨物車両と黒ナンバーの準備が必要です。
また、出前館の配達で車を利用する際は「運転免許証の登録」「任意保険への加入」が義務付けられています。
車を登録する場合の必要書類・流れ
出前館の配達員を始めるにあたっての主な流れは以下の通りです。
- 応募
- 本登録
- 審査
- 研修
- アカウント発行・配達開始
それぞれ詳しく解説していきます。
応募
まずは出前館の公式フォームから応募します。
出前館では時期によってキャンペーンをおこなっており、キャンペーン期間内に応募すると通常の報酬に上乗せしてキャンペーン報酬が加算されることもあるので、キャンペーン期間の応募がおすすめです。
本登録
「名前」「住所」「電話番号」「メールアドレス」「配達車両」「報酬の振込先口座」「厳禁の取り扱い有無」などの必要項目を登録します。
車配達をする場合は以下4点の提出を求められます。
- 運転免許証
- 自動車損害賠償責任保険証(自賠責)
- 任意保険証書
- 黒ナンバープレートの写真
審査
出前館の登録申請をした後、1〜3日ほどの審査があります。この審査に通過しなければ出前館の配達員にはなれません。
以前、出前館で問題を起こしたなどのことがない限り、審査に落ちることはまずないでしょう。
研修
研修では、研修用の動画を視聴したのちに理解度テストが実施されます。テストは全20問であり、正解率が100%でなければ合格にはなりません。
アカウント発行/配達開始
テストの合格を出前館側で確認できたのちにアカウントが発行されます。テスト結果は土日祝を除いて平日の14時までの情報を確認しているため、テストの合格とアカウント発行は次のようなスケジュールになります。
- 木曜日の14時までにテストに合格した場合
その日(木曜日)の20時までにアカウントが発行される - 木曜の14時以降にテストに合格した場合
翌日(金曜日)の20時までにアカウント発行 - 金曜日の14時以降にテストに合格した場合
翌週月曜日の20時までにアカウント発行 - 土日でテストに合格した場合
翌週月曜日の20時までにアカウント発行
(出典:Demaekan「出前館配達員 応募~配達開始までの流れ」)
出前館で車配達をするには登録条件やルールの確認が必須
軽貨物ドライバーが出前館の配達を車でおこなうことは可能です。
ただし、軽貨物車両の登録はもちろん、出前館が定めるルールを守りながら仕事をするのが大前提です。一般的な交通ルールをはじめ、出前館独自のルールをしっかりと頭に入れて配達をおこなうようにしましょう。